● 東京地裁、根津さんのロゴ入りトレーナー着用を「学校の規律と秩序を害する」とし、
河原井さんとは分断判決 (週刊新社会)
会見する和久田修弁護士・根津さん・河原井さん(左から。5月22日司法記者クラブ。撮影は筆者)
2008年3月の卒業式での"君が代"不起立を理由に、東京都教育委員会から懲戒処分のうち、最も重い停職6か月(【注】参照)にされた根津公子・河原井純子両元都立特別支援学校教諭の処分取消し訴訟で、東京地裁・清水響裁判長は5月22日、根津さんの訴えを全て退けた。
一方、河原井さんについては「形式的に懲戒処分を加重したものと推認される」と、累積加重処分だという認識を示した上、「都教委の判断は、処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き、懲戒権者としての裁量権の範囲を逸脱し・・・違法と評価されるべきである」と断じ、都教委に対し取消しを命じたものの、損害賠償は認めない判決を出した。
判決は根津さんについては、都教委の主張通り、過去の処分対象となった行為まで持ち出した上、卒業式でない普段の勤務日に、作業着として「強制反対 日の丸・君が代」「OBJECTION HINOMARU KIMIGAYO」のロゴ入りトレーナーを着ていたのを、「学校の規律と秩序を害する具体的事情」だとし、停職6か月処分を"適法"とし判じた。
だが今後、控訴審で逆転勝訴できる可能性はある。その理由は以下の通り。
今回の処分事件の1年前、07年3月の卒業式の不起立処分については、東京高裁判決(15年5月28日、須藤典明裁判長)が、「都の条例が停職処分の上限は6か月としている」という事実を踏まえ、「次は免職のおそれがあると、極めて大きな心理的圧力を加えるから、慎重に行われなければならない。自らの思想・信条を捨てるか、教員の身分を捨てるかの二者択一を迫られ、憲法が保障する思想・良心の自由の侵害につながる」と判示。
須藤裁判長は、河原井さんの停職3か月はもとより、根津さんの6か月処分も取消した上、「処分は国賠法上も違法性が認められる」とし、都教委に対し2人への慰謝料10万円ずつの支払いも命じた。そして最高裁は、16年5月31日付で都の上告を棄却し、この判決が確定している、からだ。
閉廷後、司法記者クラブの会見で、根津さんは「文科省や都教委の言うままにしていないと処分するという、自由がなくなる学校にさせてはいけない」と、清水判決を批判した。
また河原井さんは、「須藤判決は都教委に慰謝料支払いを命じた際、『教員の場合、停職期間中は児童生徒との継続的な人格的触れ合いである授業ができず、信頼関係の維持にも悪影響を及ぼすおそれがあり、精神的な苦痛も受けている。処分取消しによる財産的な損害回復だけで慰謝されない』と判じた。だが清水判決は、こういう教育論に一言も触れていない」と語った。
【注】 都立学校の"君が代"不起立やピアノ不伴奏の教職員らの処分取消し訴訟で、最高裁は12年1月16日、減給以上の処分を「重きに失し社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え違法」と判じ、取消しを命じる判決を出した。この最高裁判決が出るまで都教委は、(体罰等の教職員は2回目以降も戒告に留めることが少なくなかったのと対照的に、)不起立等教職員だけを「1回目は戒告、2回目は減給10分の1を1か月、3回目は減給10分の1を6か月、4回目は停職1か月、5回目は同3か月、6回目は同6か月」と、機械的一律に累積加重処分してきていた。
『週刊新社会』(2017年6月20日号)執筆記事に加筆
河原井さんとは分断判決 (週刊新社会)
永野厚男・教育ジャーナリスト
会見する和久田修弁護士・根津さん・河原井さん(左から。5月22日司法記者クラブ。撮影は筆者)
2008年3月の卒業式での"君が代"不起立を理由に、東京都教育委員会から懲戒処分のうち、最も重い停職6か月(【注】参照)にされた根津公子・河原井純子両元都立特別支援学校教諭の処分取消し訴訟で、東京地裁・清水響裁判長は5月22日、根津さんの訴えを全て退けた。
一方、河原井さんについては「形式的に懲戒処分を加重したものと推認される」と、累積加重処分だという認識を示した上、「都教委の判断は、処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き、懲戒権者としての裁量権の範囲を逸脱し・・・違法と評価されるべきである」と断じ、都教委に対し取消しを命じたものの、損害賠償は認めない判決を出した。
判決は根津さんについては、都教委の主張通り、過去の処分対象となった行為まで持ち出した上、卒業式でない普段の勤務日に、作業着として「強制反対 日の丸・君が代」「OBJECTION HINOMARU KIMIGAYO」のロゴ入りトレーナーを着ていたのを、「学校の規律と秩序を害する具体的事情」だとし、停職6か月処分を"適法"とし判じた。
だが今後、控訴審で逆転勝訴できる可能性はある。その理由は以下の通り。
今回の処分事件の1年前、07年3月の卒業式の不起立処分については、東京高裁判決(15年5月28日、須藤典明裁判長)が、「都の条例が停職処分の上限は6か月としている」という事実を踏まえ、「次は免職のおそれがあると、極めて大きな心理的圧力を加えるから、慎重に行われなければならない。自らの思想・信条を捨てるか、教員の身分を捨てるかの二者択一を迫られ、憲法が保障する思想・良心の自由の侵害につながる」と判示。
須藤裁判長は、河原井さんの停職3か月はもとより、根津さんの6か月処分も取消した上、「処分は国賠法上も違法性が認められる」とし、都教委に対し2人への慰謝料10万円ずつの支払いも命じた。そして最高裁は、16年5月31日付で都の上告を棄却し、この判決が確定している、からだ。
閉廷後、司法記者クラブの会見で、根津さんは「文科省や都教委の言うままにしていないと処分するという、自由がなくなる学校にさせてはいけない」と、清水判決を批判した。
また河原井さんは、「須藤判決は都教委に慰謝料支払いを命じた際、『教員の場合、停職期間中は児童生徒との継続的な人格的触れ合いである授業ができず、信頼関係の維持にも悪影響を及ぼすおそれがあり、精神的な苦痛も受けている。処分取消しによる財産的な損害回復だけで慰謝されない』と判じた。だが清水判決は、こういう教育論に一言も触れていない」と語った。
【注】 都立学校の"君が代"不起立やピアノ不伴奏の教職員らの処分取消し訴訟で、最高裁は12年1月16日、減給以上の処分を「重きに失し社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え違法」と判じ、取消しを命じる判決を出した。この最高裁判決が出るまで都教委は、(体罰等の教職員は2回目以降も戒告に留めることが少なくなかったのと対照的に、)不起立等教職員だけを「1回目は戒告、2回目は減給10分の1を1か月、3回目は減給10分の1を6か月、4回目は停職1か月、5回目は同3か月、6回目は同6か月」と、機械的一律に累積加重処分してきていた。
『週刊新社会』(2017年6月20日号)執筆記事に加筆
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます