=高校学習指導要領改訂と教科書(出版労連 教科書レポート)=
◆ 1 改訂の特徴
2017年の義務教育の学習指導要領改訂に続き、2018年には高等学校の学習指導要領が改訂された。その特徴を見てみよう。
(1)全体的な特徴
1.分量の増大
学習指導要領全体の分量が、大幅に増加している。
現行学習指導要領はA4判296ページであるが、改訂された学習指導要領は同じA4判で651ページに増加している。いずれの教科・科目でも分量が大幅に増加し、詳細化している。その結果、教育内容はもちろん、教科書の内容も詳細なところまで拘束されることになる。
一方、今回の改訂で新設された前文では、「学習指導要領とは……教育課程の基準を大綱的に定めるもの」としている。前文の趣旨と本編の内容量に整合性がとれていない。
2.第7款「道徳教育に関する配慮事項」を新設
第1章総則に、新たに第7款「道徳教育に関する配慮事項」を設け、「校長の方針の下に、道徳教育の推進を主に担当する教師(「道徳教育推進教師」という。)を中心に、全教師が協力して道徳教育を展開すること。なお、道徳教育の全体計画の作成に当たっては、……各教科・科目等との関係を明らかにすること。その際、公民科の『公共』及び『倫理』並びに特別活動が……中核的な指導の場面であることに配慮すること」とある。
全教科にわたって「道徳」に配慮すること、とりわけ「公共」や「倫理」での取り扱いを要請している。
3.○○についての見方・考え方
各教科・科目の冒頭に、「○○についての見方・考え方を働かせ……資質・能力を育成する」とする趣旨の文言が置かれたが、「○○についての見方・考え方」の内容は述べられていない。
例えば、新たな科目「現代の国語」では「言葉による見方・考え方を働かせ」とあるが、「言葉による見方・考え方」がどのようなものかの説明はない。
義務教育の学習指導要領では「見方・考え方」の具体的な内容は、その後発行された「学習指導要領解説」で述べている。高等学校の場合も同様に学習指導要領解説で説明している。
法的拘束力を有すると文科省が主張する「学習指導要領」の内容と解釈を、法的拘束力がない「解説」で述べることになり、脱法的といわざるをえない。
4.前文の新設
義務教育の学習指導要領と同様に前文を新設し、2006年に「改正」された教育基本法の第2条(公共の精神、伝統と文化の尊重、国と郷土を愛するなど)が記載されている。
「改正」法案の国会審議では「愛国心」をめぐり大きく議論が分かれた。このように議論の分かれる特定の価値観が、子どもに押しつけられることになりはしないだろうか。
5.「アクディブ・ラーニング」から「主体的・対話的で深い学び」へ
中教審答申の段階では、生徒の能動的な学習をアクティブ・ラーニングという用語で取り上げていた。しかし、改訂された学習指導要領ではその用語は姿を消し、「主体的・対話的で深い学び」となり、その実現をめざすこととなった。
名称は異なるものの、従来の学習を受動的な学習ととらえ、そうではない能動的な学習をめざすとした。
また、各教科・科目共通に、
(1) 知識・技能の習得、
(2) 思考力・判断力・表現力等の育成、
(3) 学びに向かう力、人間性等の酒養の実現
をめざしている。
6.情報手段の積極的活用
第1章総則第3款に、「各学校において、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図ること」とある。
しかし、そのための十分な財政措置がとられるかどうかはいまだ確定していない。
(2)大きく変わる科目
専門学科を除く各学科に共通する各教科では、55科目のうち22科目で新設、または内容の見直しが行われた。
なかでも、国語科、地歴・公民科、外国語科、情報科などでは科目が大きく変更された。
例えば国語科では、これまで必履修科目であった『国語総合(4単位)』にかわり『現代の国語』『言語文化』(各2単位)が必修科目となり、選択科目の『国語表現』『現代文A』『現代文B』『古典A』『古典B』が『論理国語』『文学国語』『国語表現』『古典研究』にかわった。
また、理数という教科および『理数探究基礎』『理数探究』という科目が新たに設置された。詳しくは、p.34の一覧表をご参照いただきたい。
※文科省「高等学校学習指導要領の改定のポイント」
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/02/19/1384661_002.pdf
『出版労連 教科書レポート No.61』(2018)
◆ 1 改訂の特徴
2017年の義務教育の学習指導要領改訂に続き、2018年には高等学校の学習指導要領が改訂された。その特徴を見てみよう。
(1)全体的な特徴
1.分量の増大
学習指導要領全体の分量が、大幅に増加している。
現行学習指導要領はA4判296ページであるが、改訂された学習指導要領は同じA4判で651ページに増加している。いずれの教科・科目でも分量が大幅に増加し、詳細化している。その結果、教育内容はもちろん、教科書の内容も詳細なところまで拘束されることになる。
一方、今回の改訂で新設された前文では、「学習指導要領とは……教育課程の基準を大綱的に定めるもの」としている。前文の趣旨と本編の内容量に整合性がとれていない。
2.第7款「道徳教育に関する配慮事項」を新設
第1章総則に、新たに第7款「道徳教育に関する配慮事項」を設け、「校長の方針の下に、道徳教育の推進を主に担当する教師(「道徳教育推進教師」という。)を中心に、全教師が協力して道徳教育を展開すること。なお、道徳教育の全体計画の作成に当たっては、……各教科・科目等との関係を明らかにすること。その際、公民科の『公共』及び『倫理』並びに特別活動が……中核的な指導の場面であることに配慮すること」とある。
全教科にわたって「道徳」に配慮すること、とりわけ「公共」や「倫理」での取り扱いを要請している。
3.○○についての見方・考え方
各教科・科目の冒頭に、「○○についての見方・考え方を働かせ……資質・能力を育成する」とする趣旨の文言が置かれたが、「○○についての見方・考え方」の内容は述べられていない。
例えば、新たな科目「現代の国語」では「言葉による見方・考え方を働かせ」とあるが、「言葉による見方・考え方」がどのようなものかの説明はない。
義務教育の学習指導要領では「見方・考え方」の具体的な内容は、その後発行された「学習指導要領解説」で述べている。高等学校の場合も同様に学習指導要領解説で説明している。
法的拘束力を有すると文科省が主張する「学習指導要領」の内容と解釈を、法的拘束力がない「解説」で述べることになり、脱法的といわざるをえない。
4.前文の新設
義務教育の学習指導要領と同様に前文を新設し、2006年に「改正」された教育基本法の第2条(公共の精神、伝統と文化の尊重、国と郷土を愛するなど)が記載されている。
「改正」法案の国会審議では「愛国心」をめぐり大きく議論が分かれた。このように議論の分かれる特定の価値観が、子どもに押しつけられることになりはしないだろうか。
5.「アクディブ・ラーニング」から「主体的・対話的で深い学び」へ
中教審答申の段階では、生徒の能動的な学習をアクティブ・ラーニングという用語で取り上げていた。しかし、改訂された学習指導要領ではその用語は姿を消し、「主体的・対話的で深い学び」となり、その実現をめざすこととなった。
名称は異なるものの、従来の学習を受動的な学習ととらえ、そうではない能動的な学習をめざすとした。
また、各教科・科目共通に、
(1) 知識・技能の習得、
(2) 思考力・判断力・表現力等の育成、
(3) 学びに向かう力、人間性等の酒養の実現
をめざしている。
6.情報手段の積極的活用
第1章総則第3款に、「各学校において、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図ること」とある。
しかし、そのための十分な財政措置がとられるかどうかはいまだ確定していない。
(2)大きく変わる科目
専門学科を除く各学科に共通する各教科では、55科目のうち22科目で新設、または内容の見直しが行われた。
なかでも、国語科、地歴・公民科、外国語科、情報科などでは科目が大きく変更された。
例えば国語科では、これまで必履修科目であった『国語総合(4単位)』にかわり『現代の国語』『言語文化』(各2単位)が必修科目となり、選択科目の『国語表現』『現代文A』『現代文B』『古典A』『古典B』が『論理国語』『文学国語』『国語表現』『古典研究』にかわった。
また、理数という教科および『理数探究基礎』『理数探究』という科目が新たに設置された。詳しくは、p.34の一覧表をご参照いただきたい。
※文科省「高等学校学習指導要領の改定のポイント」
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/02/19/1384661_002.pdf
『出版労連 教科書レポート No.61』(2018)
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