
開始日 2023年12月11日
署名の発信者 東電の刑事責任を追及する会
最高裁判所第2小法廷
裁判長 戸倉三郎 様
☆ 東電刑事裁判
~最高裁での口頭弁論を開き、原判決を破棄してください
2015年東京第5検察審査会での「起訴相当」議決により始まった東電刑事裁判は、福島原発事故の反省に立ち、2度と事故を繰り返さない手立てとなるかが問われています。
しかし、一審、二審判決は現行法規の枠内での現実的可能性にもとづく判断に終始し、想定外の理由には「責任なし」とする事態の解決に至らないものでした。
このような判決が確定するならば、原発事故も「許された危険」として誰も責任を取ることなく、被害者が泣き寝入りすることがまかり通ってしまい、「万が一にも事故を起こさないため」とした責任のあり方が伊方最高裁判決から大きく後退してしまうことになります。
福島原発事故から12年が経過し、原発事故による様々な被害が拡大し、また新たな地震予測が発表される中、同じ過ちを繰り返してはなりません。これまで、立法、行政においては原発事故の反省の要請に対応してきました。今や司法にその責任が求められています。「福島原発事故の真摯な反省」という要請に応える審判をされるよう要請します。
(要請項目)
1 人間の生命、健康、コミュニティを奪う原発事故に対し、国土の喪失、国家の滅亡を防止するために人類的価値を優先することを基準にした判断を求めます
2 原発事故の責任のあり方について、「万が一にも事故を起こさないため」とした伊方最高裁判決が示した「高度の注意義務」に基づく判断を求めます
3 原判決のままでは著しく正義に反することになるので、口頭弁論を開いて原判決を破棄してください
(呼びかけ)東電の刑事責任を追及する会
(署名期限)2024年1月10日
(署名の説明)
1.最高裁への上告にあたって
今日、老朽原発再稼働、原発GX法案、「原発容量3倍」方針等、福島原発事故の反省を忘れたかのように「原発回帰」の方針が進められています。故郷に帰れない避難者、避難先での住宅追い出し、子ども甲状腺がんの多発、原発汚染水の海洋投棄、使用済み燃料保管問題等々、原発事故による被害・課題が拡大しています。これらに横たわっている問題は、福島原発事故の責任がいまだに果たされていないという点にあるのではないでしょうか。
2.最高裁で訴えたいこと~福島原発事故は無罪で終わっていいのか
東電刑事裁判は、1審(2019年9月)、2審(2023年1月)において東電元役員に対して「全員無罪」の判決を下しました。原判決(2審―東京高裁判決)は、「電力事業者は電力供給義務を負っている」ので、「対策を義務付けられるような具体的根拠」でなければ、「運転を停止することができない」として津波対策を取らなかったことを容認しています。しかし、これは「万が一にも事故を起こしてはならないようにするため」とした伊方最高裁判決(1992年)の基準をないがしろにするもので許されません。原判決がいう「現実的な可能性」とは、具体的、確実な予測ができたときだけ責任を負うというものです。これでは、「未知の危険」であっても起きる可能性が合理的に予測される危険についても責任を問えなくなってしまいます。
原発事業者が「万が一にも事故を起こさない」ために必要なことは、原発事業者には「高度の注意義務」が課せられていることを明らかにする必要があります。この「高度の注意義務」の考え方では、
①予見義務については、「不確実な危険」についても、「万が一に備えて、安全側に立って」という観点から、これを予見すべきであるという高度の予見義務が課されること、具体的には、「その疑いが科学的根拠をもって否定されない」程度で足りること
②結果回避義務については、通常の回避義務と対比して「万全の措置を講じる」という観点から、事案に応じた多様かつ高度の回避義務が課される、ということです。
福島原発事故訴訟において重要な争点となっている「長期評価」について、最高裁三浦守裁判官は、避難者訴訟最高裁判決(2022年6月)において、「本件事故から8年以上前に、本件長期評価の公表により、その当時の法令上、本件各 原子炉施設が本件技術基準に適合していないと認識することができ、東京電力としては、極めてまれな災害も未然に防止するために適切な措置を講ずる法的義務を負っていた。」(判決書P48)と指摘し、「本件長期評価を前提とする事態に即応し、保安院及び東京電力が法令に従って真摯な検討を行っていれば、適切な対応をとることができ、それによって本件事故を回避できた可能性が高い。」(同上P51)と、東電の責任について意見を述べておられます。この三浦裁判官の意見を大いに参考にすべきです。
3.二度と福島原発事故を繰り返さないために
最高裁が原判決を維持するということは、原発事故による基本的人権の侵害が許容されるような判決を是認するということであり、「万が一にも事故を起こさない」とした伊方最高裁判決に悖(もと)ることになります。最高裁は原発事業者の(過失)責任のあり方について日本国憲法の理念に沿うよう、大法廷での弁論を開くなどしっかり審理することが求められていると考えます。
『Change.org』
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます