パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

☆ 明けない夜はない(195)

2023年04月27日 | 暴走する都教委と闘う仲間たち

 ☆ <『地域主権という希望』>

<転送歓迎>(重複ご容赦)・「新芽ML」・「ひのきみ全国ネット」・「戦争をさせない杉並1000人委員会」・「杉並コモンズ」の渡部です。

 昨年(2023年)6月、東京・杉並区の区長選で勝利した岸本聡子区長は、今年1月、『地域主権という希望~欧州から杉並へ、恐れぬ自治体の挑戦』(大月書店)という本を出版した。

 この本は、<はじめに>と<おわりに>に挟まれて、以下のような「章」からなっている。

・序 章 杉並区は「恐れぬ自治体」をめざす
・第1章 ミュニシパリズムとは何か
・第2章 新型コロナパンデミックと「公共」の役割
・第3章 気候危機に自治体として立ち向かう
・第4章 「もう一つの世界」はもう始まっている

 これらの章の構成からも、極めて興味深いことがわかるだろう。
 社会主義崩壊の後、全世界的に新自由主義が蔓延し、それと共に貧富の差の拡大、気候変動などが表面化した世界で、私たちはどのような展望をもって生きて行くか?
 それに対する答えを多くの人々が抱き始めた。

 そうした中で、新自由主義と気候変動に対する抗議の声が、ヨーロッパやラテンアメリカで起きてきた。
 その時期、岸本聡子さんは、ヨーロッパのNGO(トランスナショナル研究所:TNI)で、15年以上、水道などの公共インフラの再公営化に関する事例を調査し報告書にまとめ、各地で生まれたミュニシパリズムの運動を、国を越えて結びつける活動をしてきた。

 この本には、

その彼女がどのようにして杉並区長になったのか、
また自分が15年以上の調査したこと、
またミュニシパリズムの運動がどういうものであったか

 が、実に具体的、かつ豊富に、また生き生きと述べられている。
 そして、私たちは今後どう進むべきかの一つの展望のようなものを提供してくれている。
 ここではそれらを総て紹介することはできないので、とくに印象に残ったところをいくつか紹介したいと思います。

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 (「序章」から)

 たとえば児童館や集会場といった公共施設の管理ひとつとっても、かつては区の直営で利用者とともに運営されていましたが、
 近年の行政改革と新自由主義の流れのもとで、受益者負担原則や指定管理者制度など、効率や市場の論理で行われるようになりました。
 過去数十年かけて、住民による自治的な関与の回路はどんどん壊されてしまったのです。

 同時に、行政職員もどんどん非正規化されてきました。
 いまや、会計年度任用職員という名の非正規職員が全体の4割をも占めるようになっています。
 杉並区も例外ではありません。
 その仕事は必ずしも補助業務ではなく、むしろ彼ら彼女らがいなければ仕事が回らないという状態が、どこの自治体でも常態化しています。
 このような状態で、住民の声に丁寧に耳を傾けるのは困難ですし、業務の専門性も継承されず、住民サービスの質は低下していきます。

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 (「第1章」から)

 ピッサレロ(バルセロナ・コモンズの理論的支柱)は、経済の民主化、連帯、ミュニシパリストのビジョンとその国際連帯によって極右の台頭に対抗することを提案する。この国際主義こそ、ミュニシパリストが地域的な保護主義と一線を画する最大の特徴である。

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 公共サービスの(再)公営化をヒントに「経済の民主化」を構想する議論は、気候危機やデータ管理の民主化など、新しい挑戦も取り組みながら進化している。
 そして民主的な社会や経済への道は、植民地主義、排他、家父長制、人種差別といったものと、地域レベルから闘うことにほかならないのだという、根源的な気づきも与えてくれた。

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 (「第2章」から)
 ・・・左派シンクタンクやNGOでの活発な議論が始まっている。

公共医療をとことん疲弊させてきた新自由主義・民営化政策と緊縮財政をやめさせること
すべての人が無料で必須の公共サービスを享受する権利(略)、
研究開発に多額の税金を使いながら特許で薬品価格を吊り上げる製薬会社を全面的に規制するか国有化すること、
航空会社を税金で救済するなら恒常的に公営化し気候危機に対峙すること、
新自由主義下でもっとも圧縮され尊重されてこなかった介護分野のケースワーカーや産業を再評価し、社会はその対価を払うこと、
そしてケアや介護を脱炭素化社会の中心に据えること

 ――などだ。

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 (「第3章」から)
 ・・・先進的な自治体は積極的で具体的な温暖化対策を進めてきた。

たとえば、ディーゼル車の都市中心地への乗り入れ規制を強化しながら、都市公共交通や自転車道路を拡充する。
公共施設や住宅の熱効率を改善するためのリノベーションを行う。
再生産可能エネルギーの生産や利用を広げる。
近郊の持続可能な農業を支援し、給食や公的施設のカフェテリアに調達する。
すべて地味ながらも、温室効果ガスの排出を削減し、化石燃料への依存を減らす実質的な政策だ。

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 (「第4章」から)

 縦横の繊維がつながって織物となるような社会的なインフラを全国津々浦々に作り、議会制民主主義を底上げする大衆のカウンターパワーをつくりだす、というミネルバ(ベルギーで注目される革新系シンクタンク:渡部注)のビジョンに私は興奮した。
 これはベルギーだけではなく国境を越えた戦略になる。地域のポリティカルな拠点は、政党、人種、国籍、教育レベルで私たちを分断するのではなう「99%の普通の労働者」をつなぐ。
 そして、議会制民主主義を包囲する大衆のカウンターパワーが政治をアップデートしていくビジョンを、日本でも考えられないだろうか。

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 そして<おわりに>では次のように述べている。

 本書は、私がベルギーに暮らし仕事をするなかで、世界の自治体の果敢な挑戦について、日本語で発信してきたコラムをまとめたものです。
 序章を除いてはいずれも区長選挙の前に書いたものですが、就任後にあらためて読み返し、私が区長として今後チャレンジしていきたい政策、政治のあり方、そして住民自治という方向性は間違っていないことを確信しています。

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 多くの皆さん是非お読みください。

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