都立高 都教委「独断」で
■ 理科器材 望まぬ整備
~科目ないのに「地学」実験装置、購入予定と別仕様の顕微鏡
麻生内閣当時の緊急経済対策に盛り込まれた理科の実験器材購入で、東京都教育委員会が現場の意向を十分に反映せずに器材を選定。
地学の選択科目がない学校に地学の実験装置が配られたり、仕様の異なる顕微鏡が二重に導入されたりするケースがあった。都立高の現場からは「無駄遣いだ」と批判する声も出ている。(原昌志)
■ 前政権の経済対策 例年の100倍 8億円活用
この予算は「理科教育設備整備費」で、国と自治体が半額ずっ負担して小学校から高校までの実験や観察用器材を購入する。
例年、この関連の国の予算は十数億~二十億円だが、二〇〇九年度は新学習指導要領の実施(12年度)に備える目的に緊急経済対策が加わり、五月の補正予算で二百億円が計上された。自治体負担を合わせると、四百億円の規模になった。
鳩山内閣の補正予算見直しで、うち六十億円が執行停止となったものの、既に手続きが進んでいた器材購入は認められた。都立高は187校で国と都の合わせて八億~九億円分になる。理科の教員からは「冷遇されてきた分野の教材が一挙に認められる」と期待された。
しかし、具体的な器材の品目は十一月上旬に都教委が主導して決定。各校からの個別要望をおおむね百万~二百万円認めた上で、学校の規模や科目に応じてPH計や電子てんびんなどの六種類、一校あたり三百万~四百万円の個別要望を加えて計五百万円前後を割り当てた。
ところが、地学の専門的な選択科目がない学校にも、専門的な授業で使う堆積実験装置や天体投影機を、学校側に打診することなく配分。顕微鏡を数十台購入する予定の学校にも、別の仕様の高倍率顕微鏡を配ることなどが判明した。
物理・化学教員でつくる都理化教育研究会には「なぜ要望していない器材が配られるのか」「配備されても利用できない」などの意見が二十件ほど寄せられている。生物分野の教員からも異論が出た。
都教育庁都立学校教育部は「実験や観察が重視される新指導要領で必要な器材を選んだ。選定にあたり理科出身の校長か意見を聴いた。不満はごく一部で、活用マニュアルを作成し、無駄にならないよう使ってもらう」と話す。12月中旬に入札を実施するとしている。
■ 「予算消化第一」
「ばらまき」と批判された緊急経済対策のゆがみは、教育現場にも及んでいた。ある教員は「予算消化を第一に考えたとしか思えない」と話している。
「国が半額負担するこの機会を逃す手はない」。都教育庁の担当者はそう説明した。実験器材購入で都の例年予算規模は八百万円程度。学校の要望をすべて満たすことはできない金額だ。八億円以上が認められた今回は、百倍以上の枠。都教委は「新指導要領実施後のことを考えて選んだ」と話すが、今回限りの予算のため、年度内に納入できることが優先され、現場の不満につながった。
「全校への一律配備も一つの考え方」と理解を示す校長もいる。だが、「進学校や指導困難校など学校はさまざま。一律に使えと言われても」との声は少なくない。
神奈川、埼玉、千葉県は今回、学校が要望した品目だけを購入。事業規模は一億三千万~一億五千万円にとどまった。ある県教委担当者は「教育委員会が画一的には決めることはできない」と話した。
※現場ニーズと一致が大前提
左巻健男法政大教授(理科教育)の話
教育委員会が、物品を各学校共通で割り当てるやり方は、異例ではないか。実験をやらせたいとの気持ちは分かるが、現場の要求と一致することが大前提だ。二ーズがないのにお仕着せで配ることは疑問。倉庫に眠らせることになりかねない。予算消化ありきと言われても仕方がない。
『東京新聞』(2009/12/6朝刊)
■ 理科器材 望まぬ整備
~科目ないのに「地学」実験装置、購入予定と別仕様の顕微鏡
麻生内閣当時の緊急経済対策に盛り込まれた理科の実験器材購入で、東京都教育委員会が現場の意向を十分に反映せずに器材を選定。
地学の選択科目がない学校に地学の実験装置が配られたり、仕様の異なる顕微鏡が二重に導入されたりするケースがあった。都立高の現場からは「無駄遣いだ」と批判する声も出ている。(原昌志)
■ 前政権の経済対策 例年の100倍 8億円活用
この予算は「理科教育設備整備費」で、国と自治体が半額ずっ負担して小学校から高校までの実験や観察用器材を購入する。
例年、この関連の国の予算は十数億~二十億円だが、二〇〇九年度は新学習指導要領の実施(12年度)に備える目的に緊急経済対策が加わり、五月の補正予算で二百億円が計上された。自治体負担を合わせると、四百億円の規模になった。
鳩山内閣の補正予算見直しで、うち六十億円が執行停止となったものの、既に手続きが進んでいた器材購入は認められた。都立高は187校で国と都の合わせて八億~九億円分になる。理科の教員からは「冷遇されてきた分野の教材が一挙に認められる」と期待された。
しかし、具体的な器材の品目は十一月上旬に都教委が主導して決定。各校からの個別要望をおおむね百万~二百万円認めた上で、学校の規模や科目に応じてPH計や電子てんびんなどの六種類、一校あたり三百万~四百万円の個別要望を加えて計五百万円前後を割り当てた。
ところが、地学の専門的な選択科目がない学校にも、専門的な授業で使う堆積実験装置や天体投影機を、学校側に打診することなく配分。顕微鏡を数十台購入する予定の学校にも、別の仕様の高倍率顕微鏡を配ることなどが判明した。
物理・化学教員でつくる都理化教育研究会には「なぜ要望していない器材が配られるのか」「配備されても利用できない」などの意見が二十件ほど寄せられている。生物分野の教員からも異論が出た。
都教育庁都立学校教育部は「実験や観察が重視される新指導要領で必要な器材を選んだ。選定にあたり理科出身の校長か意見を聴いた。不満はごく一部で、活用マニュアルを作成し、無駄にならないよう使ってもらう」と話す。12月中旬に入札を実施するとしている。
■ 「予算消化第一」
「ばらまき」と批判された緊急経済対策のゆがみは、教育現場にも及んでいた。ある教員は「予算消化を第一に考えたとしか思えない」と話している。
「国が半額負担するこの機会を逃す手はない」。都教育庁の担当者はそう説明した。実験器材購入で都の例年予算規模は八百万円程度。学校の要望をすべて満たすことはできない金額だ。八億円以上が認められた今回は、百倍以上の枠。都教委は「新指導要領実施後のことを考えて選んだ」と話すが、今回限りの予算のため、年度内に納入できることが優先され、現場の不満につながった。
「全校への一律配備も一つの考え方」と理解を示す校長もいる。だが、「進学校や指導困難校など学校はさまざま。一律に使えと言われても」との声は少なくない。
神奈川、埼玉、千葉県は今回、学校が要望した品目だけを購入。事業規模は一億三千万~一億五千万円にとどまった。ある県教委担当者は「教育委員会が画一的には決めることはできない」と話した。
※現場ニーズと一致が大前提
左巻健男法政大教授(理科教育)の話
教育委員会が、物品を各学校共通で割り当てるやり方は、異例ではないか。実験をやらせたいとの気持ちは分かるが、現場の要求と一致することが大前提だ。二ーズがないのにお仕着せで配ることは疑問。倉庫に眠らせることになりかねない。予算消化ありきと言われても仕方がない。
『東京新聞』(2009/12/6朝刊)
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