《連載 沖縄》
▲ 米兵の性犯罪は絶えない
抑止力強化の副産物だ
「オスプレイの配備が強行されて、県民がこぞって反対の声をあげているこの時に、このような犯罪を起こすことが可能なのでしょうか」。基地軍隊を許さない行動する女たちの会の高里鈴代共同代表らは、激しい口調ですべての基地撤去を訴える記者会見をした。
まさに「いまこの時」10月16日未明、米海軍兵士2人による女性レイプ事件が起こった。
オスプレイ12機が訓練飛行をしている中、毎日のように市町村単位の撤回要求の大会が開かれ、普天間飛行場の大山ゲート前、野嵩ゲート前では土日を除く毎日、早朝、午後、金曜日夕方の抗議行動が続いているそのさなかだ。
容疑者はともに23歳の米テキサス州フォートワース海軍航空基地所属の上等水兵と2等水兵。14日に神奈川厚木基地から嘉手納基地に補給業務支援のために来県、16日午前中にグアムへ移動することになっていた。
近くのコンビニで、勤務から帰宅する20代の女性に片言の日本語で声をかけ、無視されたのを店員に目撃されている。店を出た女性を追っかけて行って襲ったあと、宿泊先のホテルに帰ったが、集団強姦致傷容疑で逮捕された。
▲ 「今この時」だから
事件発生後3時間、女性の知人の通報を受けた沖縄署、県警の初動が早かった。また、容疑者らは嘉手納基地の宿泊所が一杯なので、7人だけ基地外のホテルに泊まっていた。通報が遅れたり、基地内に宿泊したりしていれば、取り逃がすところで、捜査は困難になったろうと警察の幹部は語っている。
地元紙は絶妙のタイミングで緊急逮捕に至った経過を報じている。事件はいち早く全国のニュースになった。
オスプレイ強行配備の抗議と見直し要請のため上京していた仲井眞弘多知事は、「正気の沙汰ではない」と憤激し、同じくオスプレイ配備撤回要請の佐喜眞淳宜野湾市長、東門美津子沖縄市長ら軍転協(27市町村からなる軍用地転用促進・基地問題協議会)の首長も一斉に抗議に向かった。
政府も駐日米大使も、てんやわんや。在日米海軍は、日米地位協定の規定に従い、「沖縄県警が第1次裁判権を有する」と沖縄タイムスに答えた。
何もかもスピーディーに運んだのも、まさに「今この時」だったからある。ただすべての発端が、被害女性が勇気をもって訴え出たことにあり、沖縄署員や県警自動車警ら隊の周辺聞き込み、徹底捜査につながったことを思うと暗然とする。
この種の犯罪は、周辺を含め告発を躊躇した結果、発覚するのが遅れがちだ。何の落ち度もない女性が、「許しません」と警察に話したという記事に、誰しも胸を締めつけられる思いだ。
あの全県民を憤激させた1995年の「少女暴行事件」以後17年の間に、表ざたになった米軍人・軍属による性犯罪だけでも12件。
今年8月には那覇市の路上で40代の女性に海兵隊員が強制わいせつ・致傷事件を起こしている。
そのたび、議会の抗議決議、抗議集会、米軍や日本政府への申し入れ。そのたびに「綱紀粛正」「再発防止」の誓い。
▲ 変わらぬ傲慢さ
嘉手納基地には、F22ステルス戦闘機が時期を決めて米本国の基地から飛来して地元の抗議を受けてきたが、新たに高度なステルス機能を持つ最新型F35の常駐配備が予定されている。
米軍人は常時、パスポートも持たず、自由に国境を超え、市街地にある沖縄基地を出入りし、街なかで女性に襲い掛かる。日米地位協定で守られた彼らの自由な出入りが続く限り、事態は今後も続く。
「綱紀粛正」「再発防止」策など、オスプレイの安全運用ルールが守られていないのと同様、絵に描いた餅だ。
軍転協の首長たちが15日、在沖米4軍調整官事務所にオスプレイ配備の中止を要請した時、要請団一行は事務所所長のデビット・デタタ大佐から風船揚げ、たこ揚げは危険だからやめさせるよう、「逆要請」を受けた。
大佐は「皆さんは沖縄の指導者だからリーダーシップを発揮して、危険性があることをやらせないでほしい」と述べたと、団長格の儀武(ぎぶ)剛金武町長が記者団に明かした。
デタタ大佐は、オスプレイの危険性については、「日米政府の合意は遵守されている」と、説明をした。
佐喜眞淳宜野湾市長は、9月26日~10月3日に行われた首長らのオスプレイ反対早朝座り込みのさなか、基地への直接行動は慎むよう、市民や労組などの団体に呼びかけることもあった。
ふだんは市民広場としてフェンス内の空き地を少年野球の会場に使っている、宜野湾市役所前の第4ゲートが海兵隊によって閉じられた。基地前行動への報復であることは明らかだが、佐喜眞市長は交渉して開けさせた。
28日、29日に大山ゲート、佐真下ゲート、野嵩ゲートを市民の手で封鎖した際、このゲートも市民の手で一時封鎖された。
風船揚げ、たこ揚げには関しては、市有地を使わせない、私有地にもそうするよう圧力をかけるという程度で、警察権が及ぶ状況にない。市民、県民が支持しているからだ。
▲ 対立あおる扇動
ニューヨークタイムズが9・9大会を受けて、「この島へのオスプレイ配備は古傷に塩をすり込むようなもの」と社説で書き、別の場所に持っていくことを勧めた。
一方、読売新聞はオスプレイの強行配備を受けて、次のように書く。「米軍が飛行モードで合意違反をしているという指摘はおかしい。米軍がわざわざ危険な飛行を選ぶはずはない。重要なのはオスプレイ配備は日米同盟を強化し、アジアの安定に寄与することだ。野田首相は仲井眞知事や地元自治体を説得すべきである。…沖縄だけでなく日本全土でも自衛隊基地を使用したオスプレイ訓練を実施すべきだ」(10月10日社説「より強固な日米同盟の象徴に」)。
あきれたものだ。こんな論説が、尖閣問題がらみで国民をあおり、沖縄に抑止力を押しつけるのを、はね返さなくてはならない。米兵の性犯罪も、オスプレイの事故の可能性も抑止力強化の副産物なのだから。
『労働情報』(850号 2012/11/1)
▲ 米兵の性犯罪は絶えない
抑止力強化の副産物だ
由井晶子●ジャーナリスト
「オスプレイの配備が強行されて、県民がこぞって反対の声をあげているこの時に、このような犯罪を起こすことが可能なのでしょうか」。基地軍隊を許さない行動する女たちの会の高里鈴代共同代表らは、激しい口調ですべての基地撤去を訴える記者会見をした。
まさに「いまこの時」10月16日未明、米海軍兵士2人による女性レイプ事件が起こった。
オスプレイ12機が訓練飛行をしている中、毎日のように市町村単位の撤回要求の大会が開かれ、普天間飛行場の大山ゲート前、野嵩ゲート前では土日を除く毎日、早朝、午後、金曜日夕方の抗議行動が続いているそのさなかだ。
容疑者はともに23歳の米テキサス州フォートワース海軍航空基地所属の上等水兵と2等水兵。14日に神奈川厚木基地から嘉手納基地に補給業務支援のために来県、16日午前中にグアムへ移動することになっていた。
近くのコンビニで、勤務から帰宅する20代の女性に片言の日本語で声をかけ、無視されたのを店員に目撃されている。店を出た女性を追っかけて行って襲ったあと、宿泊先のホテルに帰ったが、集団強姦致傷容疑で逮捕された。
▲ 「今この時」だから
事件発生後3時間、女性の知人の通報を受けた沖縄署、県警の初動が早かった。また、容疑者らは嘉手納基地の宿泊所が一杯なので、7人だけ基地外のホテルに泊まっていた。通報が遅れたり、基地内に宿泊したりしていれば、取り逃がすところで、捜査は困難になったろうと警察の幹部は語っている。
地元紙は絶妙のタイミングで緊急逮捕に至った経過を報じている。事件はいち早く全国のニュースになった。
オスプレイ強行配備の抗議と見直し要請のため上京していた仲井眞弘多知事は、「正気の沙汰ではない」と憤激し、同じくオスプレイ配備撤回要請の佐喜眞淳宜野湾市長、東門美津子沖縄市長ら軍転協(27市町村からなる軍用地転用促進・基地問題協議会)の首長も一斉に抗議に向かった。
政府も駐日米大使も、てんやわんや。在日米海軍は、日米地位協定の規定に従い、「沖縄県警が第1次裁判権を有する」と沖縄タイムスに答えた。
何もかもスピーディーに運んだのも、まさに「今この時」だったからある。ただすべての発端が、被害女性が勇気をもって訴え出たことにあり、沖縄署員や県警自動車警ら隊の周辺聞き込み、徹底捜査につながったことを思うと暗然とする。
この種の犯罪は、周辺を含め告発を躊躇した結果、発覚するのが遅れがちだ。何の落ち度もない女性が、「許しません」と警察に話したという記事に、誰しも胸を締めつけられる思いだ。
あの全県民を憤激させた1995年の「少女暴行事件」以後17年の間に、表ざたになった米軍人・軍属による性犯罪だけでも12件。
今年8月には那覇市の路上で40代の女性に海兵隊員が強制わいせつ・致傷事件を起こしている。
そのたび、議会の抗議決議、抗議集会、米軍や日本政府への申し入れ。そのたびに「綱紀粛正」「再発防止」の誓い。
▲ 変わらぬ傲慢さ
嘉手納基地には、F22ステルス戦闘機が時期を決めて米本国の基地から飛来して地元の抗議を受けてきたが、新たに高度なステルス機能を持つ最新型F35の常駐配備が予定されている。
米軍人は常時、パスポートも持たず、自由に国境を超え、市街地にある沖縄基地を出入りし、街なかで女性に襲い掛かる。日米地位協定で守られた彼らの自由な出入りが続く限り、事態は今後も続く。
「綱紀粛正」「再発防止」策など、オスプレイの安全運用ルールが守られていないのと同様、絵に描いた餅だ。
軍転協の首長たちが15日、在沖米4軍調整官事務所にオスプレイ配備の中止を要請した時、要請団一行は事務所所長のデビット・デタタ大佐から風船揚げ、たこ揚げは危険だからやめさせるよう、「逆要請」を受けた。
大佐は「皆さんは沖縄の指導者だからリーダーシップを発揮して、危険性があることをやらせないでほしい」と述べたと、団長格の儀武(ぎぶ)剛金武町長が記者団に明かした。
デタタ大佐は、オスプレイの危険性については、「日米政府の合意は遵守されている」と、説明をした。
佐喜眞淳宜野湾市長は、9月26日~10月3日に行われた首長らのオスプレイ反対早朝座り込みのさなか、基地への直接行動は慎むよう、市民や労組などの団体に呼びかけることもあった。
ふだんは市民広場としてフェンス内の空き地を少年野球の会場に使っている、宜野湾市役所前の第4ゲートが海兵隊によって閉じられた。基地前行動への報復であることは明らかだが、佐喜眞市長は交渉して開けさせた。
28日、29日に大山ゲート、佐真下ゲート、野嵩ゲートを市民の手で封鎖した際、このゲートも市民の手で一時封鎖された。
風船揚げ、たこ揚げには関しては、市有地を使わせない、私有地にもそうするよう圧力をかけるという程度で、警察権が及ぶ状況にない。市民、県民が支持しているからだ。
▲ 対立あおる扇動
ニューヨークタイムズが9・9大会を受けて、「この島へのオスプレイ配備は古傷に塩をすり込むようなもの」と社説で書き、別の場所に持っていくことを勧めた。
一方、読売新聞はオスプレイの強行配備を受けて、次のように書く。「米軍が飛行モードで合意違反をしているという指摘はおかしい。米軍がわざわざ危険な飛行を選ぶはずはない。重要なのはオスプレイ配備は日米同盟を強化し、アジアの安定に寄与することだ。野田首相は仲井眞知事や地元自治体を説得すべきである。…沖縄だけでなく日本全土でも自衛隊基地を使用したオスプレイ訓練を実施すべきだ」(10月10日社説「より強固な日米同盟の象徴に」)。
あきれたものだ。こんな論説が、尖閣問題がらみで国民をあおり、沖縄に抑止力を押しつけるのを、はね返さなくてはならない。米兵の性犯罪も、オスプレイの事故の可能性も抑止力強化の副産物なのだから。
『労働情報』(850号 2012/11/1)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます