◆ 70年前の共謀罪 (東京新聞【本音のコラム】)
三十一日、東京高裁は重大事件の決定を出す。
「三鷹事件」の確定死刑囚。竹内景助さん遺族の死後再審請求を認めるかどうか。事件発生から七十年もたっている。
一九四九年七月、国鉄(現JR)三鷹駅で無人電車が暴走、民家に激突して六名が死亡。九日前には国鉄総裁・下山定則が線路上の礫断(れきだん)死体で発見され、一カ月後に東北線・松川駅近くで列車脱線転覆事件が発生。
国鉄だけで十万人の解雇が強行された。米軍占領下で怪事件が発生していた。
「五人も子どもがいて、それに子煩悩でしたからあんな犯罪、起こすわけないですよ」。
六歳のとき突然、父親が逮捕され、それ以来生き別れとなった長男の健一郎さん(76)がつぶやいた。
肺がんの手術を受けたせいか、声はかすれて聞き取りにくい。
八歳の姉、四歳の妹、二歳の妹、生まれたばかりの弟。五人の子どもを抱えて母親の政(まさ)さんは袋張りなどの内職で餬口(ここう)を凌(しの)いだ。
同僚など十人が逮捕されたが、共同謀議、共同犯行は「空中楼閣」と判定。景助さん一人が有罪とされ、最高裁で死刑が確定した。無実を訴えながらも、十二年後、四十五歳で獄中死。妻に残した最後の言葉は、「くやしいよ」だった。
再審請求審では目撃証言はデッチ上げ、列車の暴走は単独犯では無理と証明された。裁判官を信じられる決定を期待している。
『東京新聞』(2019年7月30日【本音のコラム】)
鎌田 慧(かまたさとし・ルポライター)
三十一日、東京高裁は重大事件の決定を出す。
「三鷹事件」の確定死刑囚。竹内景助さん遺族の死後再審請求を認めるかどうか。事件発生から七十年もたっている。
一九四九年七月、国鉄(現JR)三鷹駅で無人電車が暴走、民家に激突して六名が死亡。九日前には国鉄総裁・下山定則が線路上の礫断(れきだん)死体で発見され、一カ月後に東北線・松川駅近くで列車脱線転覆事件が発生。
国鉄だけで十万人の解雇が強行された。米軍占領下で怪事件が発生していた。
「五人も子どもがいて、それに子煩悩でしたからあんな犯罪、起こすわけないですよ」。
六歳のとき突然、父親が逮捕され、それ以来生き別れとなった長男の健一郎さん(76)がつぶやいた。
肺がんの手術を受けたせいか、声はかすれて聞き取りにくい。
八歳の姉、四歳の妹、二歳の妹、生まれたばかりの弟。五人の子どもを抱えて母親の政(まさ)さんは袋張りなどの内職で餬口(ここう)を凌(しの)いだ。
同僚など十人が逮捕されたが、共同謀議、共同犯行は「空中楼閣」と判定。景助さん一人が有罪とされ、最高裁で死刑が確定した。無実を訴えながらも、十二年後、四十五歳で獄中死。妻に残した最後の言葉は、「くやしいよ」だった。
再審請求審では目撃証言はデッチ上げ、列車の暴走は単独犯では無理と証明された。裁判官を信じられる決定を期待している。
『東京新聞』(2019年7月30日【本音のコラム】)
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