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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

北海道2011「君が代」不起立処分に人事委裁決

2016年08月18日 | 日の丸・君が代関連ニュース
◎ 日高管内「君が代」処分取消請求事案道人事委員会裁決に対する声明

 北海道人事委員会は本日、日高管内小学校の教員が卒入学式の「君が代」斉唱時に起立しなかったことを理由に、道教委が「戒告」「減給」とした処分の取り消しを求めた審査請求に対して、「戒告」処分を承認し、「減給」処分を「戒告」に修正する裁決を行った。我々はこの不当な裁決に抗議する。
 本事案は、従前は懲戒処分をもって強制しないと道教委・北教組との間で確認があったにも関わらず、10年度卒業式の「君が代」斉唱時に起立しなかった教員に対して、「職務命令違反」であるとして「戒告」(4月6日付)とし、さらに、11年度入学式の不起立に対して、「累犯加重」的に「減給処分」(4月22日付)を強行したものである。これらは、「処分」により、教育の自由と教職員の思想・良心の自由を侵害し、ひいては、子どもたちの思想・良心の形成を阻害することにより学習権を侵害する行為である。
 北教組はこれまでの審理の中で、「日の丸・君が代」が戦前・戦中において戦争を肯定する「国民精神」づくりの一翼を担うとともに国民の心を支配する役割を果たしてきたことなどについて述べた上で、「君が代」起立・斉唱の強制は、国家の価値中立性の原則に違反するとともに、個人の思想・良心の自由を直接制約する、「君が代」斉唱時の全員起立を強制する「学習指導要領」の「国旗・国歌条項」とそれにもとづく各「通知」「職務命令」は、いずれも憲法26条、23条などの諸条項に違反し、子どもの思想・良心形成の自由を保障することを定めた子どもの権利条約に違反することなどから、本件「戒告」「減給」処分は違憲・違法であって取消を免れないことを主張してきた。
 道人事委員会は、「本件各職務命令は、請求者の思想及び良心の自由を侵すものではない」、本件各「通知」及び「職務命令」が「違憲、違法であるとは認められない」として「戒告」は承認したが、本事案で「減給」処分を選択するには相当性がなく、「裁量権の逸脱」にあたるとして「戒告」処分に修正した。
 裁決は、批判の多い最高裁判決に依拠して、道人事委員会の「君が代」の歌詞や歴史的・社会的に果たしてきた役割についての認識を示すことなく、「君が代」起立・斉唱命令が憲法、子どもの権利条約、教育基本法に違反しないと判断した。このことが基本的な誤りである。
 裁決が、道教委の「累犯加重的処分」をした強権的な姿勢を正した点において、一定程度の評価に値する
 私たちは、「君が代」強制の現場実態や、子ども・教職員の人権を無視した道教委による「処分」攻撃に屈することなく、今後も教育行政による教育統制から子どもたちの教育を守り、憲法や47教育基本法にもとづく民主教育の発展に向けて、一層運動を強化・前進させることを決意する。    
 2016年8月8日
     北 海 道 教 職 員 組 合
     北 教 組 弁 護 団

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 「裁決書」全文は、こちらからダウンロード出来る。
http://wind.ap.teacup.com/people/html/2016n88_kcl.pdf
 ※ブログ管理人が注目した箇所
 [請求者の主張から]
 ○ 学校教育は「私」の領域
 学校教育は「私」の領域に属し、公教育の「公」は、誰にでも「開かれた」教育を意味するものである。従って、国家が特定の生き方や価値観を子どもに押しつける道具として公教育を用いることがあってはならず・・・(p2)
 ○ 戒告処分の不利益の重大性
 本件戒告処分は、・・・給与上の評価と一体的、有機的に運用されており、勤勉手当の成績区分がすべて裁量の余地無く一律画一に「良好でない」と判定されて成績率を低下させ、勤勉手当が減額されるという、必然的・不可避的・直接的に給与上の重大な不利益を伴うものであるから、・・・不当な処分としてその是正が図られなければならない。(p9)
 [当委員会の判断から]
 ○「日の丸・君が代」は、憲法・教育基本法の理念と相容れない
 日の丸及び君が代が、わが国の侵略戦争への反省に立って制定された憲法及び教育基本法の唱える個人の尊厳、平和主義及び国民主権の思想に相容れないという見解は・・・勝野正章証人、高橋哲哉証人、世取山洋介証人、岩本一郎証人らが証言する通り、憲法学や教育学などの学説においても認められるものであるし、弁護士会等の法律家団体においても多数の意見を占めていると思料されることからも、請求者において独自のものとは言えない。(p23)
 ○教師の教育の自由は十分に尊重されなければならない
 請求者は地方公務員ではあるが、教育公務員であり、教育の目標に照らし、特別の自由が保障されていると言える。・・・前記のような教育の目標を考慮すると、教師における精神の自由は、十分に尊重されなければならない。(p26)
 ○苛酷な不利益は容認されない
 かかる職務命令が頻発されたときには、日の丸及び君が代に対して敬意を表明することができないと真摯に考える者ほど、その信条を捨てるか不利益を受忍するかの厳しい二者択一を迫られることとなり、心理的に強く追い込まれることになる。また、当該式典の具体的な混乱を招来するものともいえないことに鑑みると、いたずらに苛酷な結果を教師個人にもたらすような事態が、教育の現場のあり方として容認されるものと言うべきではない(最高裁平成24年判決 桜井龍子判事の補足意見)。(p26)
 ○不起立の動機・原因に配慮がないのは、一方的である
 処分決定の過程においては、不起立行為等が処分対象者の世界観や歴史観等に起因するものであるという視点や配慮は読み取れず、むしろ請求者の不起立が非常識な行為との評価がなされている記述が認められ、一方的である感は否めない。(p26)
 ○「子どもの権利条約」違反の余地がある
 教師については、・・・子どもの権利条約第14条第2項の定める「法定保護者」とみなされ、締約国においては、児童に対してその発達しつつある能力に適合する方法で指示を与える権利を尊重しなければならず、かかる教師の権利が侵害されたときは、子どもの権利条約に違反するものと評価される可能性がある。
 ・・・締約国政府が、大人に対する制約以上に、パターナリスティクな配慮に基づいて、 子どもの市民的自由を制約することは認められないと解すべきである。・・・
以上より、本件各職務命令が、直接児童を名宛て人としたものでなく、あくまで教師に対して行われたものであったとしても、子どもの権利条約に違反し無効とされる余地がある。(p27)
 以上のように、注目すべき判示もあるものの、結論においては「最高裁判決の枠組み」に無理矢理当てはめてしまっている。
 また教育委員会による「不当な支配」については、道教委による『旭川学テ最高裁判決』の曲解をそのまま受け入れている点はいただけない。
 それでも、先行訴訟の判例に比べて、一歩も二歩も前進が見られる点は、請求人及び弁護団の取り組みの成果として評価してよいのではないだろうか。
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