【わだつみのこえ NO.160 2024.8.9発行号掲載】
◆ 「君が代」強制は子どもの権利条約違反!
~ 学校に民主主義を! D-TaCが新たな出発
大阪市立中学校元教員 「君が代」不起立被処分者 松田幹雄(会員)
◆「君が代」調教や・め・て D-TaC結成9周年集会(総会)
D-TaCは今年(2024年)6月13日、『「君が代」調教や・め・て 声をあげる子どもたち』のタイトルで、結成9周年集会(総会)を開きました。
D-TaCは、『Democracy for Teachers and Children~「君が代」処分撤回!松田さんとともに~』の略称で、2015年7月、私が「君が代」不起立戒告処分取消を大阪市人事員会に申し立てると同時に結成されました。
会の趣旨は『(私の)「君が代」不起立処分を撤回させ、学校に民主主義を実現する』ことで、活動目標は以下の4点でした。
(1)松田さんの人事委員会申し立て(裁判提訴)を支援し、勝利をかちとる。
(2)「君が代」強制による「調教教育」の実態を明らかにし、子ども達自身が自分の考えを深めていくための「君が代」学習へと変革する。
(3)違憲の大阪市パワハラ2条例(教職員に「君が代」起立・斉唱を義務づけた国旗・国歌条例と3回の同一職務命令違反で免職を規定した職員基本条例)を撤廃する。
(4)以上を通じて、戦争法に呼応した戦争国家づくりのための教育支配と闘い、学校に民主主義を実現する。
私の「君が代」不起立戒告処分取消の大阪市人事委員会への申立ては、2020年6月に却下裁決。
2020年12月に大阪地裁に提訴した処分取消裁判は、今年1月、最高裁の上告棄却で終結しました。
その間、D-TaCは、
年1回の総会、
人事委員会・裁判闘争支援、
学習集会、
大阪市教委交渉、
「知っていますか「君が代」の意味」ビラの中学校門前配布、
大阪市立小・中学校への「君が代」指導についてのお願いメール送信、
最高裁に対する署名運動
等を取り組んできました。
◆ 声をあげる子どもたち 運動がその条件をつくり出してきた
私の処分取消の課題はなくなったものの、『Democracy for Teachers and Children~「君が代」調教やめて~』に一部名称を変更して運動を継続・発展させることを表明した6.13D-TaC結成9周年集会(総会)は、このような運動の前進を実感できる場となりました。
集会では、2023年3月、4月の小学校卒業式・中学校入学式で、娘さんの田花結希子アイリーンさんが「君が代」を起立・斉唱しなかった水谷麻里子キャロラインさんからその経過の報告を受けました。
「君が代」強制について文科省の担当者と直接話したことについての記事がyahooニュースに載り8600ものコメント(多くが麻里子さんたちの行動に批判的コメント)がついたことにもふれて、
「同調圧力は依然として存在するが、周りの人たちを見ていて、『いろんな人がいるのだし、その人の選択についてとやかく言うべきでない』という意識が広がってきていると感じている」
「日本のこの卒業式・入学式の『君が代』強制が世界の状況からすれば特異、異常だと知ってもらいたい。話を聞いてもらえる状況ができれば、『君が代』を起立・斉唱したくない思いは理解してもらえると思っている。」
との確信が語られました。
今年3月の卒業式で息子さんが不起立・不斉唱だった大阪市立中学校の卒業生保護者の方からは、その経過について、子どものことについてこれまでもいろいろ話してきた先生に報告・相談して、子どもの気持ちを尊重する環境をつくってきた報告がありました。
自民党議員の圧力による「君が代」暗記調査問題などに取り組んできた吹田からは、水谷麻里子キャロラインさん親子を招いて開いた3月の集会での交流がきっかけとなって、卒業式で「君が代」を起立・斉唱しなかった子がいたことやPTA会長として出席した中学校の入学式での経験についての報告がありました。
式の中で、「君が代」を起立・斉唱をしないことや「日の丸」に礼をしないことを周りの参加者がどう感じるだろうかと気になったけれど、吹田のなかまが「入学おめでとう」ビラをまいてくれたことも力になったこと等の報告でした。
これまでの「日の丸・君が代」強制反対の運動の中心・主体は、子どもたちに「君が代」を強制する立場に立たされる教職員でした。処分取消裁判を中心に「思想・良心の自由」を掲げて闘ってきました。
このD-TaC集会は、「日の丸」に向かって「君が代」を斉唱することを強制されている子ども・保護者が、自らの人権を主張し、要求の主体として運動の中心となりつつあることを示しました。
◆ 1999年8月国旗国歌法が通って考えたこと
1999年8月国旗国歌法制定後、9月17日付で文部省初等中等教育局長名の「学校における国旗及び国歌に関する指導について(通知)」が出されました。その中には
「教員は、関係の法令や上司の職務上の命令に従いまして教育指導を行わなければならないものでございまして、各学校においては、法規としての性質を有する学習指導要領を基準といたしまして、校長が教育課程を編成し、これに基づいて教員は国旗・国歌に関する指導を含め教育指導を実施するという職務上の責務を負うものでございます。」
とありました。
1999年当時、私が勤務していた中学校の卒業式では、厳しい攻防はありましたが、式場に「日の丸」はなく、式次第に「君が代」はありませんでした。しかし、この通知に沿った学校運営がなされるとどんなことになるか考えざるを得ませんでした。
歴史経過からして、「日の丸」や「君が代」が嫌だと感じる人がいなくなることはあり得ない。そんな人たちに納得できる説明もできないまま「君が代」斉唱を強制する立場に立たされる我々教職員はどうなるのか、どうするのか。この指示通りに生徒を「指導」しようと思えば、従わない生徒には、いじめて影響力をそぐ対応しかできないのではないか、それは絶対にできない、拒否したいと考えて、それを表現した寸劇「『指導』っていじめ?」をつくりました。
また、自分に突きつけられる理不尽を生徒に転嫁するような理不尽・過ちを自分が犯さないためにはどうしなければならないか、それは、「日の丸」「君が代」についてどう考え、どんな態度をとるかは生徒自身が決めること、教員の役割は、考える基礎になる事実をきちんと伝えることだと整理し、その立場を譲らないことだと考えました。
その後、2002年3月卒業式では、校門と体育館入口に「日の丸」が掲げられ、卒業式に先立つ形ではあれ、在校生がいる場で「君が代」が流れる状況になりました。
「日の丸」「君が代」にかかわる歴史の事実を生徒たちに伝える学習実施はこれ以上先送りできない状況になりました。
2003年3月卒業式に向けて、校内人権教育委員会で、国旗国歌法制定時の中央公聴会で証言された上杉總さんを招いた研修会を開くなどして学習資料づくりを行い、完成させて、2月に各学年・クラスで実践しました。
その後、転勤した学校では、その学習資料の内容をB4表裏2枚にまとめて誰にでも見てもらえるようにしました。
◆ 裁判とD-TaCをはじめ「日の丸・君が代」強制反対運動がつくり出してきた成果
私は、裁判とD-TaCの活動を通して、「日の丸・君が代」を使った調教教育の構造を明らかにすることができたと思っています。
…学習指導要領に国旗・国歌の大切さ、尊重の必要性を記載する一方、「日の丸」「君が代」の歴史、「君が代」の歌詞の意味の変遷等は一切記載していない。記載のないことを理由に、文科省・地教委は「君が代」指導資料を一切つくらず、職員研修もやらない、事実に基づく情報を子どもたちに伝えようとすると指導要領の趣旨(国旗・国歌尊重の態度育成)に反すると押さえつける。
それらを通じて、大日本帝国憲法下の教育の実態を隠し、卒業式を、天皇のため、国のために尽くす皇国臣民育成を目的とした戦前の学校儀式と同様の調教の場に変えてきのです。同時に、また、それと闘う方針もはっきりしてきました。
…「君が代」強制は子どもの権利条約違反!国際人権自由権規約違反!を対置して闘うことです。
◆ 人権侵害を少しでも排除できる「君が代」指導のあり方
(①「日の丸」「君が代」の歴史、「君が代」の歌詞の意味の変遷等について隠すことなく伝えること
②「日の丸」に向かって「君が代」を歌う行為をどう考え、どんな態度をとるかは児童・生徒自身が決める問題だと伝えること)
を、具体的な指導内容も示して闘うことです。
私は人事委員会・裁判闘争について、「君が代」処分と闘う大阪の当事者団体「グループZAZA」や「日の丸・君が代」強制反対大阪ネットの全面的な支援を受けてきました。また、裁判書面作成等で、先行して闘ってこられた東京の闘いに学ばせてもらいました。
今、「君が代」斉唱強制を拒否して声をあげる子どもたちの姿が見えるようになってきたのは、連綿と闘われてきた「日の丸・君が代」強制反対運動がその条件をつくり出してきたのだと思っています。
【「君が代指導 子どもの権利条約」、「君が代 寸劇」、「卒業式 国旗 国歌」、「君が代 意味 変化」】等で検索すれば、私たちD-TaC発信の情報がヒットするようになってきています。闘ってきたことの成果に確信を持ち、「君が代」強制は子どもの権利条約違反!学校を戦争動員の場にさせない!運動を頑張っていきたいと思います。
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