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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

北東アジア情勢に逆行する7年連続で「過去最大級」の異常な軍拡予算

2018年10月17日 | 平和憲法
 ◆ 求められる「軍縮計画の大綱」
   防衛省-軍拡ありきの異常な概算要求
(週刊新社会)
武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)代表 杉原浩司


 ◆ 小さく見せる詐欺的手法
 究極の「KY予算」とでも呼ぷべきか。8月31日に公表された防衛省の2019年度概算要求は、情勢を読むことを放棄したとしか言いようのないものだ。
 金額は5兆2986億円と、7年連続で「過去最大級」を更新した。しかも、例年なら計上(2018年度2212億円)していた米軍再編関係経費、政府専用機購入費を「事項要求」にして、金額を小さく見せかける詐欺的手法まで使っている。
 さらに、防衛省の概算要求の前口上には驚くべき言葉が並んでいる。「巌しい安全保障環境の中、将来に向けて我が国防衛に万全を期すため、現実に真正面から向き合った防衛体制を構築することとし、防衛力を大幅に強化する」と。
 ◆ 安全保障戦略の先取り

 米朝首脳会談が実現し、北東アジアは歴史的な転換期に入っている。予断はできないが、核・ミサイル実験と軍事演習の応酬が続いた緊張局面から大きく転換していることは明らかだ。
 安倍政権は「現実に真正面から向き合う」どころか、現実から逃避し、軍拡を自己目的化しているとしか思えない。
 主権者として、納税者として、「防衛力を大幅に強化する」というトンデモ宣言を見過ごすわけにはいかない。
 重大なのは、今回の異常な軍拡予算が、年末までに策定される新たな「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」、ひいては「国家安全保障戦略」を先取りするものでもあることだ。
 その問題点を3つあげておこう。
 第一に、「専守防衛」の放棄が一層明確になっていることだ。
 2018年度予算に、新たな対地・対艦ミサイルの研究費のみならず、長距離巡航ミサイルの購入費を盛り込んだのに続いて、今回の概算要求には、マッハ5以上の速度で飛行し、相手のレーダー網などをくぐり抜ける「極超音速巡航ミサイル」開発に向けた特殊エンジン技術の研究費64億円を計上した。「敵基地攻撃能力」の保有へさらに踏み込もうとするものだ。
 第二に、「クロス・ドメイン(領域横断)防衛」の名のもとに、宇宙やサイバー空間といった新たな領域の軍事化を目論んでいる。
 宇宙防衛については、すでに日米の宇宙における軍事協力は進展しているが、トランプ政権が6月18日にぶち上げた「宇宙軍」創設の大統領令という動きに追随していくことも危惧される。
 ◆ 米国製高額兵器の爆買いも加速
 第三に、米国製の高額兵器の爆買いがさらに加速している。
 言い値をふっかけ、見積もりよりもさらに価格が上昇する「ぼったくり武器ビジネス」として悪名高い「FMS」(有償軍事援助)による武器購入が、2018年度の4102億円から、6917億円へと跳ね上がった。
 とりわけ多くを占めるのは、「イージス・アショア」の導入経費2352億円である。当初、「1基800億円で2基」だとして、費用対効果が高いと喧伝されたが、ふたを開けてみると、本体経費だけで1基1340億円に膨脹し、維持費や防護対策費、関連施設費などを合わせると、2基で6000億円を超えるとさえ報じられている。
 9月19日の南北首脳会談で、「一切の敵対行為の中止」などを含む実質的な終戦宣言が合意されるという情勢の中で、こうした米国「軍産複合体」への利益供与が正当化される余地は限りなく小さくなっている。
 ◆ 配備反対の地元の声固まる

 9月20日、山口県阿武町の花田憲彦町長は、「配備は町民の安全。安心や平穏を著しく損なうことにつながる。進めてきたまちづくりに逆行する」として、イージス・アショアの配備反対を表明した。
 秋田も含めて、地元の反対の意思はさらに強固なものになってきている。
 問題は、こうした常軌を逸した大軍拡計画が、このままでは易々と通ってしまいかねないことだろう。
 さらに、武器輸出入問題について付言すれば、2019年には千葉県の幕張メッセで「MASTAsia」(6月)と「DSEI JAPAN」(11月)という大規模国際見本市の開催が予定されている。
 先日、川崎市がイスラエル軍事見本市に市営施設を提供したように、千葉県が「死の商人」の売り込みに公然と加担しようとしている。
 本来の意味で、北東アジアの「現実に真正面から向き合った」骨太の軍縮計画を対置できるかどうか。それは立憲野党のみならず、市民の課題としてもあるだろう。
 「武器でなく災害対策に予算を回せ」という要求が、今ほどリアリティを持つ時代もない。
 説得力のある「軍縮計画の大綱」を示せるかどうか一が切実に問われている。

『週刊新社会』(2018年10月2日)

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