パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

☆ 窮地に追い込まれた学術会議の独立性

2025年01月14日 | 平和憲法

 ☆ 大学・学術会議は、軍事研究との訣別を貫け (『百万人署名運動全国通信』から)

野田隆三郎(岡山大学名誉教授)

 2015年、安保法制が成立した翌10月、民間の優れた技術の軍事転用を目的とする防衛省の安全保障技術研究推進制度(以下安保技研制度)が創設され、大学の軍事研究解禁への道が公然と開かれた
 その年、最も衝撃だったことは、当時の大西隆学術会議会長学長を務める豊橋技術科学大学が同制度に応募し採択されたことであった。
 彼は「(軍事研究との訣別を誓った)学術会議の1950年及び67年声明は自衛のための研究まで禁止しているとは思わない」と語った。
 さらに彼は学術会議内に「安全保障と学術に関する検討委員会」を立ち上げた。

 ☆ 軍事研究に道残す新声明

 一年の検討の結果、2017年に学術会議の新声明が発表された。
 それは、一方で「50年・67年声明を継承する」としつつも安保技研制度についてはこの制度は問題が多い、応募すべきでないとまでは言わず、「軍事的安全保障研究と見なされる可能性のある研究について、その適切性を…審査する制度を設けるべきである」として応募への道を残したのである。
 現在、安保技研制度に応募する大学のすべてが、この一文に基づいて学内に審査制度を設置し、そのことをもって応募を正当化している。同制度への応募・採択の状況については「軍学共同反対連絡会」で検索されたい。

 国立大学協会永田恭介会長が学長を務める筑波大学が2回も応募・採択されていることには驚くほかない。
 彼は「軍事研究とは攻撃のための武器の研究であって、防御のための研究は許される」と述べている。

 ☆ 学術会議会員の任命拒否

 2020年、学術会議が推薦した会員候補105名のうち6人の任命を、当時の菅首相が拒否するという前代未聞の事件が起きた。
 これは学術会議が軍事研究に非協力的あることに業を煮やした政府が仕掛けたものであった。さらに政府は任命拒否をうやむやに葬り去るために学術会議法の「改正」を強行しようとしたが、さすがに、これは学術会議の強い抵抗にあって断念せざるを得なかった。2023年4月のことである。
 代わりに政府が持ち出してきたのが学術会議の法人化であった。それは、政府からの独立とは正反対に政府への従属を強いるものであった。
 そして有識者懇談会なるものを設置し、学術会議を話し合いの場に引きずりこんだ。そもそも、任命拒否は「話し合い」で解決できる問題ではなかったのだ。
 学術会議は、当初から任命拒否は先決事項で、その解決まで話し合いには応じられないという毅然たる姿勢を示すべきであった。それを怠り安易に「話し合い」という政府の土俵に乗ってしまった結果、いま窮地に追い込まれている。

 ☆ 学問の命運かかる学術会議総会

 光石衛学術会議会長は7月29日の有識者懇談会において、学術会議の独立性を保つために、

1.大臣任命の監事の設置の法定化
2.大臣任命の評価委員会の設置の法定化等を含む5項目に対する反対は譲れない

 と表明した。しかし、政府の走狗である「有識者」懇談会がこのような要求を受け入れる筈はなく、12月18日に上記2項目を含む法人化案の最終報告をまとめたのだ。
 かねて光石会長は上記5項目が受け入れられない場合は重大な決意をせざるを得ないと言っていて、この最終報告を受けて、12月22日に学術会議臨時総会を開催し、「重大決意」について討議するとした。まさに日本の学問の命運を決する総会と言わなければならない。私たちは当日学術会館前で総力でアピール行動に取り組む予定である。

(12/19記)

『とめよう戦争への道!百万人署名運動全国通信 第326号』(2025年1月1日)


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