《尾形修一の紫陽花(あじさい)通信から》
◆ 日本の低賃金、「連合」の重大な責任
(日本の賃金の国際比較)
政党や選挙の問題は終わってないのだが、その前に日本最大のナショナルセンター(労働組合の中央組織)である「連合」(日本労働組合総連合会)について考えておきたい。と言うのも、日本の賃金水準が国際的に比較してあまりにも低いことを知って愕然としたのである。OECD(経済協力開発機構)調査を見れば、その低さは一目瞭然。アメリカの半分程度で、韓国よりも低くなっている。これはドル換算なので、円安だから低くなるとも言える。
しかし、実質賃金でもビッグマック指数で比べても同じような状態だという。ビッグマック指数というのは、マクドナルドのビッグマックの値段を国際比較したもので、日本の390円は先進国最安だという。
一体この違いはどこから来たのだろうか。
2012年以後の安倍政権下の円安誘導政策(「大胆な金融緩和」)が背景にあるのだろうが、それにしても他の先進国は上昇している。
小泉政権以後、規制緩和の名のもとに派遣労働の大幅な緩和が進んできた。また大企業も賃金を抑えて内部留保を積み上げるところが多かった。
そういう政府や企業の問題が大きいとは思うが、一方で労働者を守るために存在するはずの労働組合はこの間何をしていたのだろうか。本来、民間企業の賃金は労使の協議で決まるべきはずのものだ。近年では政府が賃上げの旗を振っているが、何だかおかしな感じがする。
その労働組合の最大組織である「連合」は加盟組合員総数700万ほどにもなる、恐らく日本最大の組織である。宗教団体などでもっと多い信者数を公表しているところはある。「幸福の科学」や「創価学会」などがそうだが、宗教団体の性格上、家族をまとめて集計するなど、ある程度大まかな数だろう。一方、労働組合はその性格上一人一人の会費がきちんと払われているはずで、組合員の帰属意識には濃淡があるとしても、会員名を特定できる組織としては最大じゃないか。
その連合で、第7代の神津里季生(こうづ・りきお)会長の任期が2021年9月で終わるにも関わらず、後任会長がなかなか決まらなかった。誰も立候補の意向を見せず、会長候補の届け出期間を延長して内部調整を行った結果、初の女性会長として芳野友子が就任した。
所属はJAMで、「ものづくり産業労働組合」と称している。機械・金属関係の大手・中小の労働組合が結集した組織である。芳野はミシンで知られるJUKIに高卒で入社した。
前任の神津は東大を出て新日鉄に入社、その前の古賀伸明は宮崎大学を出て松下電器に入社である。労働運動なんだから学歴は要らないはずだが、やはり大卒、基幹産業出身者が多い。いかに今回の芳野会長が異例の人事だったかが判る。
コロナ禍で活動が厳しい中、21年衆院選、22年参院選を控え、立憲民主党と国民民主党の「分裂」という政治状況の中、大組合には率先して会長を引き受ける覚悟が持てなかったのではないか。そこに「女性会長」が現れて、注目を集めることになった。
芳野は岸田内閣の進める「新しい資本主義実現会議」の有識者委員にも選ばれた。労働団体枠と女性枠を一人で兼摂できるから、政権にとっても「使い勝手が良い」人事ではなかったか。
ところが芳野は就任以来、立憲民主党と共産党の「共闘」を批判し続けている。選挙後には「連合の組合員の票の行き先がなくなった」などとも非難した。これは言い過ぎである。
連合所属組合の出身議員は、数で言えば立憲民主党の方が多い。比例区はもちろん、ほとんどの選挙区には立憲民主党か国民民主党の候補がいたんだから、どちらかに入れれば良いはずだ。
立憲民主党の選挙協力の対応を批判するとしても、多くの組織内議員が立憲民主党にいる現状を考えれば配慮が必要なはずだ。
例えば事務局長は日教組の清水秀行だが、日教組出身の参院議員は二人とも立憲民主党である。
ここではこれ以上触れないが、前任の神津会長は国民民主党と立憲民主党の合同を求めてきて、最後に国民民主党側が「分党」という措置を取ったことを批判していた。組合員が戸惑わないようにということなら、両党の合同を求めるべきである。
しかし、何が合同をジャマしているかと言えば、最大の要因は電力労連が原発ゼロの立憲民主党に反発していることだろう。その問題をどう考えるか、それは両党がそれぞれに考えるべきことで、労働組合が政党に介入するようなおかしなことは止めなければいけない。
組合活動家としては政治路線に関心があるだろうが、一般組合員はどこまで関心があるのだろうか。僕は共産党との関係を気にするよりも、職場を守るためにもっと力を発揮して欲しいという組合員の方が多いと思う。(それは共産党系組合にも言えることだが。)
賃金を上げることは労働組合の一番大事な仕事だ。この間の日本の賃金低下に、連合幹部も自責の念を持って欲しいと思う。
何党支持なんていう問題よりも、現実に大きな実績を上げた労働組合に支持が集まるはずだ。
この間、連合でもパート従業員の組合加盟を進めるなどの取り組みを行ってきた。正規・非正規の区別を越えて、労働者の連帯を作ることが連合の最大の使命だ。
『尾形修一の紫陽花(あじさい)通信』(2021年12月01日)
https://blog.goo.ne.jp/kurukuru2180/e/1d455355e5a673335d90ab423938201d
◆ 日本の低賃金、「連合」の重大な責任
(日本の賃金の国際比較)
政党や選挙の問題は終わってないのだが、その前に日本最大のナショナルセンター(労働組合の中央組織)である「連合」(日本労働組合総連合会)について考えておきたい。と言うのも、日本の賃金水準が国際的に比較してあまりにも低いことを知って愕然としたのである。OECD(経済協力開発機構)調査を見れば、その低さは一目瞭然。アメリカの半分程度で、韓国よりも低くなっている。これはドル換算なので、円安だから低くなるとも言える。
しかし、実質賃金でもビッグマック指数で比べても同じような状態だという。ビッグマック指数というのは、マクドナルドのビッグマックの値段を国際比較したもので、日本の390円は先進国最安だという。
一体この違いはどこから来たのだろうか。
2012年以後の安倍政権下の円安誘導政策(「大胆な金融緩和」)が背景にあるのだろうが、それにしても他の先進国は上昇している。
小泉政権以後、規制緩和の名のもとに派遣労働の大幅な緩和が進んできた。また大企業も賃金を抑えて内部留保を積み上げるところが多かった。
そういう政府や企業の問題が大きいとは思うが、一方で労働者を守るために存在するはずの労働組合はこの間何をしていたのだろうか。本来、民間企業の賃金は労使の協議で決まるべきはずのものだ。近年では政府が賃上げの旗を振っているが、何だかおかしな感じがする。
その労働組合の最大組織である「連合」は加盟組合員総数700万ほどにもなる、恐らく日本最大の組織である。宗教団体などでもっと多い信者数を公表しているところはある。「幸福の科学」や「創価学会」などがそうだが、宗教団体の性格上、家族をまとめて集計するなど、ある程度大まかな数だろう。一方、労働組合はその性格上一人一人の会費がきちんと払われているはずで、組合員の帰属意識には濃淡があるとしても、会員名を特定できる組織としては最大じゃないか。
その連合で、第7代の神津里季生(こうづ・りきお)会長の任期が2021年9月で終わるにも関わらず、後任会長がなかなか決まらなかった。誰も立候補の意向を見せず、会長候補の届け出期間を延長して内部調整を行った結果、初の女性会長として芳野友子が就任した。
所属はJAMで、「ものづくり産業労働組合」と称している。機械・金属関係の大手・中小の労働組合が結集した組織である。芳野はミシンで知られるJUKIに高卒で入社した。
前任の神津は東大を出て新日鉄に入社、その前の古賀伸明は宮崎大学を出て松下電器に入社である。労働運動なんだから学歴は要らないはずだが、やはり大卒、基幹産業出身者が多い。いかに今回の芳野会長が異例の人事だったかが判る。
コロナ禍で活動が厳しい中、21年衆院選、22年参院選を控え、立憲民主党と国民民主党の「分裂」という政治状況の中、大組合には率先して会長を引き受ける覚悟が持てなかったのではないか。そこに「女性会長」が現れて、注目を集めることになった。
芳野は岸田内閣の進める「新しい資本主義実現会議」の有識者委員にも選ばれた。労働団体枠と女性枠を一人で兼摂できるから、政権にとっても「使い勝手が良い」人事ではなかったか。
ところが芳野は就任以来、立憲民主党と共産党の「共闘」を批判し続けている。選挙後には「連合の組合員の票の行き先がなくなった」などとも非難した。これは言い過ぎである。
連合所属組合の出身議員は、数で言えば立憲民主党の方が多い。比例区はもちろん、ほとんどの選挙区には立憲民主党か国民民主党の候補がいたんだから、どちらかに入れれば良いはずだ。
立憲民主党の選挙協力の対応を批判するとしても、多くの組織内議員が立憲民主党にいる現状を考えれば配慮が必要なはずだ。
例えば事務局長は日教組の清水秀行だが、日教組出身の参院議員は二人とも立憲民主党である。
ここではこれ以上触れないが、前任の神津会長は国民民主党と立憲民主党の合同を求めてきて、最後に国民民主党側が「分党」という措置を取ったことを批判していた。組合員が戸惑わないようにということなら、両党の合同を求めるべきである。
しかし、何が合同をジャマしているかと言えば、最大の要因は電力労連が原発ゼロの立憲民主党に反発していることだろう。その問題をどう考えるか、それは両党がそれぞれに考えるべきことで、労働組合が政党に介入するようなおかしなことは止めなければいけない。
組合活動家としては政治路線に関心があるだろうが、一般組合員はどこまで関心があるのだろうか。僕は共産党との関係を気にするよりも、職場を守るためにもっと力を発揮して欲しいという組合員の方が多いと思う。(それは共産党系組合にも言えることだが。)
賃金を上げることは労働組合の一番大事な仕事だ。この間の日本の賃金低下に、連合幹部も自責の念を持って欲しいと思う。
何党支持なんていう問題よりも、現実に大きな実績を上げた労働組合に支持が集まるはずだ。
この間、連合でもパート従業員の組合加盟を進めるなどの取り組みを行ってきた。正規・非正規の区別を越えて、労働者の連帯を作ることが連合の最大の使命だ。
『尾形修一の紫陽花(あじさい)通信』(2021年12月01日)
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