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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

子どもと教科書全国ネット・都教委抗議文

2013年06月30日 | 暴走する都教委
2013年6月28日
 東京都教育委員会
 委員長 木村 孟 殿
子どもと教科書全国ネット21
代表委員:石川康宏・尾山宏・小森陽一・高嶋伸欣・田代美江子・
田港朝昭・鶴田敦子・西野瑠美子・山田朗・渡辺和恵
〒102-0072 東京都千代田区飯田橋2-6-1 小宮山ビル201
℡:03-3265-7606 Fax:03-3239-8590

★ 東京都教育委員会の特定の教科書排除の見解の議決に抗議し、撤回を求める

 東京都教育委員会は、2013年6月27日の教育委員会会議において「平成26年度使用都立高等学校(都立中等教育学校の後期課程及び都立特別支援学校の高等部を含む。)用教科書についての見解」(以下、「見解」)を、何らの議論もなく「委員総意の下」で議決した。
 「見解」は、実教出版の教科書『高校日本史A』『高校日本史B』について、「日の丸・君が代」(国旗・国歌)に関して「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」という記述が「都教育委員会の考え方と異なるものである」とし、この2つの教科書は「都立高等学校等において使用することは適切ではない」と決めつけ、「この見解を都立高等学校等に十分周知していく」としている。
 この決議後、直ちに比留間英人教育長名でこの見解の議決を都立学校長宛に通知した。さらに都教委は、「指摘した教科書を選定した場合は、最終的に都教委が不採択とすることもありうる」(「毎日新聞」2013年6月27日夕刊)といって、この教科書を選定しないよう強制している
 実教出版の教科書の「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」というのは事実を指摘したものであり、文部科学省の検定でも認められた記述である。
 それを都教委の「考え方と異なる」として排除することは、文科省の見解さえ否定する「二重検定」であり、到底容認できない。
 この記述は「強制の動き」のある自治体を特定していないのに、これを理由に実教出版の日本史教科書を排除する「見解」は、都教委が「日の丸・君が代」の強制を行っていることを認めたことになる。
 都教委は、昨年の教科書採択では「情報提供」と称して学校長に電話するなど証拠が残らないように実教出版『高校日本史A』を採択しないよう圧力をかけた。
 今年の「見解」では、教科書発行者と教科書名を特定し、その排除を公然と要求している。これは明らかに教育委員会の権限を越えた不法・不当な行為である。
 この議決は、都教委による学校現場への不法・不当な支配介入であり、絶対に許されるものではない。
 教科書の選定は、学校の教育課程編成権に属するものであり、「見解」はこれに乱暴に介入するものである。
 旭川学力テスト事件最高裁大法廷判決(1976年5月21日)は、「教育行政機関が法令に基づいてする行為が『不当な支配』にあたる場合がありうる」とし、教育行政機関(教育委員会など)が教育基本法(1947年)第10条の「不当な支配」とならないように配慮しなければならない拘束を受けている」としている。
 この「不当な支配」の規定は、2006年教育基本法第16条でも規定されている。都教委の「見解」及び議決はこの教育基本法第16条および最高裁判決に違反する不法・不当なものである。
 都教委は、学習指導要領に基づいて「国旗・国歌」の指導を行っていることを根拠に、実教出版の教科書を都立高校等で「使用することは適切ではない」としている。
 前述の最高裁判決は、学習指導要領は「(大綱的な)基準の設定として是認することができる」としながら、「法的拘束力をもって……教師を強制するのは適切ではない」とし、学習指導要領には、法的拘束力が予定されていない部分があること、地域および各教師の自主的教育の余地を十分残していること、教師に一方的教育内容を強制してはいけないことを判示している。
 特定の教科書を選定から排除することを強制することは、この最高裁判決にも違反するものである。
 都教委の「見解」及び議決は、学校教育法にも違反する行為である。学校教育法第51条(高等学校の教育目標)3号は、「広く深い理解と健全な批判力を養い」としている。
 この目標を達成するためには、多様な教科書や記述、内容を提示して生徒に議論させ、考えさせることが必要であるが、都教委の行為はそうした機会を奪うものである。
 都教委の教育行政について批判的な内容を生徒の目にふれさせないようにするというのは、生徒の学ぶ権利を奪うものであるが、同時に、都教委は自分がやっていることの正当性に自信がないことを世間に公開していることでもある。
 都教委の今回の行為は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律にも違反するものである。
 同法23条は、「教科書その他の教材の取扱いに関する」「事務」を「管理し、及び執行する」としているが、教育委員会が議決によって、教科書の採択に介入し、特定の教科書を排除する権限までは与えていない。
 都教委の今回の行為は、教科書採択の妨害、実教出版の営業活動への妨害ということを越えて、さらに重大な出版活動に対する妨害であり、憲法が保障している、言論・出版の自由(第21条)、学問の自由(第23条)に違反する重大な憲法違反の行為である。
 都教委の今回の行為を許せば、「日の丸・君が代」問題だけに限らず、他の様々な記述や内容について、都教委の考えと「異なる」「相容れない」と議決すれば、都教委が気に入らない記述・内容の教科書をいくらでも排除できることになる。
 例えば、都教委は準教科書『江戸から東京へ』を発行して全都立高校生・都立学校教員に配布しているが、その内容と異なる記述・内容の教科書は、都教委の議決によって排除できることになる。
 これは、歴史教科書だけではなく、他の全ての教科書にも波及する危険性がある問題である。特定の教科書の排除が許されれば、次には特定の教科書の使用を強制することも可能になる。そのようなことは絶対に許してはならない。
 都教委の今回の行為は、安倍政権がすすめる「教育再生」政策の教科書制度改悪や教育委員会制度改悪を先取りしたものである。
 以上のように、東京都教育委員会の「見解」および教育委員会による議決は、どの面から見ても不法・不当なものであり、そもそも教育委員会がこのような「見解」を議決することはやってはならないことであり、許すことのできないものである。
 この「見解」の議決に一言も意見を述べないで賛成した全教育委員の責任も重大である。私たちは、これに怒りをもって抗議するとともに、この「見解」および議決をただちに撤回するよう強く要求する。
 私たちは、東京都教育委員会による昨年の実教出版『日本史A』教科書の採択への介入・妨害について、「都教委の高校教科書採択妨害を許さない実行委員会」を結成して、広く世論に訴えて都教委の不当性を追及してきた。
 私たちの追及によって、採択への介入・妨害についての不当・不法性について追い詰められた都教委は、教育委員会の議決によって、その行為の正当性を示そうとしたものと思われる。
 しかし、これによって、都教委の不法・不当性はますます明らかになったといえる。私たちは、広く世論に訴え、都教委の不当な教科書採択への介入・妨害をはじめ、教育行政全体を追及する取り組みをすすめていくことを表明する。
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