◆ 「君が代」不服従の教師奥野泰孝さんに聞く (週刊金曜日)
---今年の卒業式はどうでしたか。
卒業式当日(3月9日)は、校内の駐車場係を務めました。職務命令は2月25日の職員会議で出ました。「君が代」に起立斉唱を指示する大阪府教育委員会教育長通達と役割分担表が配られ、校長が口頭で発令しました。実はその前日に、准校長が「今年の卒業式はどうするのか」と意思確認をしてきました。わたしは「そういう質問をするのはおかしい。パワーハラスメントではないか」と抗議すると、「今年は駐車場係を命じます」と言われました。
---大阪府職員基本条例(2012年4月施行)は同じ職務命令違反が3回で免職と規定しています。あと1回で免職と警告されていますね。
3回で免職という条例を成立させた議会は間違っている。昨年の卒業式での免職警告つき戒告処分では、人事委員会に不服申し立てをしました。不服従を続けることが勝利につながると信じています。これは民主主義と基本的人権を勝ち取る闘いです。
---奥野さんが減給処分の取り消しと慰謝料を求めた裁判では、大阪地裁(15年12月)が請求を棄却する判決を出しています。
減給処分(13年)取り消しの控訴審では、この2月に控訴理由書を提出しました。地裁判決は誤字もあり、論理がいい加減と思われるところも多くて納得できません。減給処分が重すぎるのは当然ですが、職務命令自体が人権侵害であり、信教の自由、思想・良心の自由の侵害だと訴えていきます。新しい証拠もあり、新たな証人を申請するつもりです。第一回弁論は4月22日15時、大阪高裁82号法廷で行なわれます。
---大阪府では「君が代」斉唱を義務づけた国旗・国歌条例の施行(11年6月)以降、戒告や減給になった教職員がのべ60人に達しています。
憲法違反の条例と闘えないなら、教育公務員としての憲法尊重擁護義務(憲法99条)を果たせない。学校は教育や学問から遠ざかり、工場のようになる。「兵役拒否」と違って「君が代」斉唱時の「起立拒否」は小さなことかもしれませんが、間違ったことに対して「間違っている」と声を出せないなら、この先戦争に向かっていくときも声が出せなくなる。今こそ不服従から運動をはじめ、本当の生きがいを見つける教育や社会をつくるときだと思います。
◆ 生徒に寄り添いたい
奥野泰孝さん(58歳)は大阪府の特別支援学校の教師だ(本誌13年12月6日号参照)。
「君が代」は戦前、国家神道と結びつき、反対する人々は迫害された。とくに弾圧されたキリスト教の洗礼を受けた奥野さんにとって「君が代」の強制は、「信教の自由」を侵されること。戒告処分を受けた昨年の卒業式では、「君が代」強制の非教育的な本質が如実に現われた。
奥野さんは卒業生の担任として式に出席。特別支援学校では障がいによって起立できない生徒が多くいる。卒業式などの緊張した場面では、精神的安定をはかるために介助が必要な生徒に寄り添うこともある。
奥野さんは「(『君が代』斉唱時に)車椅子の生徒の横で座って見守りたい」と管理職に申し出た。その生徒は昨年、在校生として式に臨んだ際、体調を崩した経緯があったからだ。
だが、「(生徒の)体調が悪くなる証拠を出せ」と認められなかった。卒業式の主人公として活躍の場を与えてあげたい。生徒のそばで座って介助指導した奥野さんに対し、府教委は警告書つきの処分辞令を発令した。
奥野さんは「特別支援学校での『君が代』強制は、児童生徒の障がいの状況を無視している。府教委の横暴さは明確だ」と批判する。
生徒の尊厳よりも、「君が代」斉唱を優先することが「教育的」とはいえまい。
聞き手/平舘英明
『週刊金曜日 1080号』(2016・3・18)
---今年の卒業式はどうでしたか。
卒業式当日(3月9日)は、校内の駐車場係を務めました。職務命令は2月25日の職員会議で出ました。「君が代」に起立斉唱を指示する大阪府教育委員会教育長通達と役割分担表が配られ、校長が口頭で発令しました。実はその前日に、准校長が「今年の卒業式はどうするのか」と意思確認をしてきました。わたしは「そういう質問をするのはおかしい。パワーハラスメントではないか」と抗議すると、「今年は駐車場係を命じます」と言われました。
---大阪府職員基本条例(2012年4月施行)は同じ職務命令違反が3回で免職と規定しています。あと1回で免職と警告されていますね。
3回で免職という条例を成立させた議会は間違っている。昨年の卒業式での免職警告つき戒告処分では、人事委員会に不服申し立てをしました。不服従を続けることが勝利につながると信じています。これは民主主義と基本的人権を勝ち取る闘いです。
---奥野さんが減給処分の取り消しと慰謝料を求めた裁判では、大阪地裁(15年12月)が請求を棄却する判決を出しています。
減給処分(13年)取り消しの控訴審では、この2月に控訴理由書を提出しました。地裁判決は誤字もあり、論理がいい加減と思われるところも多くて納得できません。減給処分が重すぎるのは当然ですが、職務命令自体が人権侵害であり、信教の自由、思想・良心の自由の侵害だと訴えていきます。新しい証拠もあり、新たな証人を申請するつもりです。第一回弁論は4月22日15時、大阪高裁82号法廷で行なわれます。
---大阪府では「君が代」斉唱を義務づけた国旗・国歌条例の施行(11年6月)以降、戒告や減給になった教職員がのべ60人に達しています。
憲法違反の条例と闘えないなら、教育公務員としての憲法尊重擁護義務(憲法99条)を果たせない。学校は教育や学問から遠ざかり、工場のようになる。「兵役拒否」と違って「君が代」斉唱時の「起立拒否」は小さなことかもしれませんが、間違ったことに対して「間違っている」と声を出せないなら、この先戦争に向かっていくときも声が出せなくなる。今こそ不服従から運動をはじめ、本当の生きがいを見つける教育や社会をつくるときだと思います。
◆ 生徒に寄り添いたい
奥野泰孝さん(58歳)は大阪府の特別支援学校の教師だ(本誌13年12月6日号参照)。
「君が代」は戦前、国家神道と結びつき、反対する人々は迫害された。とくに弾圧されたキリスト教の洗礼を受けた奥野さんにとって「君が代」の強制は、「信教の自由」を侵されること。戒告処分を受けた昨年の卒業式では、「君が代」強制の非教育的な本質が如実に現われた。
奥野さんは卒業生の担任として式に出席。特別支援学校では障がいによって起立できない生徒が多くいる。卒業式などの緊張した場面では、精神的安定をはかるために介助が必要な生徒に寄り添うこともある。
奥野さんは「(『君が代』斉唱時に)車椅子の生徒の横で座って見守りたい」と管理職に申し出た。その生徒は昨年、在校生として式に臨んだ際、体調を崩した経緯があったからだ。
だが、「(生徒の)体調が悪くなる証拠を出せ」と認められなかった。卒業式の主人公として活躍の場を与えてあげたい。生徒のそばで座って介助指導した奥野さんに対し、府教委は警告書つきの処分辞令を発令した。
奥野さんは「特別支援学校での『君が代』強制は、児童生徒の障がいの状況を無視している。府教委の横暴さは明確だ」と批判する。
生徒の尊厳よりも、「君が代」斉唱を優先することが「教育的」とはいえまい。
聞き手/平舘英明
『週刊金曜日 1080号』(2016・3・18)
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