《河原井さん根津さんらの「君が代」解雇をさせない会 都庁前通信》
● 足立区中学校の性教育
教育委員は授業の背景を理解する努力を!
足立区中学校が3月に3年生を対象に行なった性教育について、都教委は4月26日に行われた都教育委員会定例会で「見解」を述べた上で、「今後の都教委方針」を示した。それに対し、教育委員からは都教委の対応の問題を指摘し、都教委に修正を求めるような発言はなかった。
「『性交』『避妊』『人工中絶』といった中学校学習指導要領保健体育にないことばを使った授業は不適切。保護者の理解を必ずしも十分得ないまま授業が実施されていた。」というのが、授業に対する都教委の「見解」だった。
そして今後は、「学習指導要領を基本とする。すべてを集団指導で教えるのではなく、集団指導で教えるべき内容と個別指導で教えるべき内容を明確にする。学習指導要領を超える内容を指導する場合には、事前に学習指導案を保護者に説明し、保護者の理解・了解を得た生徒を対象に個別指導を実施するなど」とすると述べた。
教育委員たちの発言(要旨 傍聴して筆者が聞き取った限り)を紹介する。
北村委員:「今回、議論が起こったことが良かった。議論が大切。現場では萎縮せず、取り組んでほしい。性情報がいろいろある中、子どもには知る権利、自己決定する権利がある。専門家を講師にした教員研修をしたらどうか。授業について気になったのは、保護者への周知が十分だったかどうか。保護者には様々な考えがあり、イスラム教、カトリックの家庭もあるから、理解を得ることが大事。一斉指導と個別指導をし、子どもや保護者が選択できるようにするといい。授業で避妊の方法を生徒に述べさせる場面があったが、嫌な気持ちになった子どももいたかもしれない。都教委の役割として指導・助言があるが、上からではなく、対等なパートナーとして行なってほしい。現場が萎縮しないで子どもに寄り添うよう、性教育にあたってほしい。」
遠藤委員:「性教育は、普遍性と家庭教育が大事。普遍性を担保するのは学習指導要領。生徒参加型の授業で、個別に答えを求める場面があったが、性教育は家庭教育の範ちゅう。保護者の了解が必要だ。ことの経緯についてだが、文教委員会で質問がなければ、都教委はこの授業に関して知らないままだったのか。」
指導部長:「授業に問題があると提供があった上で、文教委員会で(自民党 古賀都議から)質問があった。」
宮崎委員:「議論になったのはとてもいい。デリケートな問題だから、一斉授業と個別授業を。家庭の考えがあるから、家庭との連携が必要。正確な情報を子どもに与えるのが、子どもを守ること。家庭との連携はできていたのか。」
指導部長:「保護者には学校だよりで知らせていたが、内容についてはよく伝わっていなかった。」
秋山委員:「医療現場から見ると、個人差が大きい。集団授業ではなく、また、家庭の理解が大事。都教委作成の『性教育の手引き』(平成16年)は古いので、改定する予定はあるか。」
指導部長:「今年度中に改定する。」
山口委員:「時代の変化が早く、教育が追いついていけてない。個人差があること、センシティブな問題だから、時代に先駆けるのがベストとは言えない。慎重に。足立区教委と都教委が連携し共有できるか(語尾聞こえず)」
北村委員:「一斉授業、個別授業が難しい。一斉授業で傷つけられる場合もある。」
中井教育長:「今後も丁寧に取り組みを進める。」
北村委員は「子どもの知る権利・自己決定権、子どもに寄り添う性教育」が大切と発言していた。それならば、『性交』『避妊』『人工中絶』のことばを使った性の授業が、「子どもの知る権利・自己決定権、子どもに寄り添う性教育」であったのか、なかったのか、意見表明してほしかった。
また、「現場では萎縮しないで」と言うが、都教委が「見解」を示し校長を「指導」すれば、現場は十分萎縮する。
この発言には、現場を萎縮させる教育行政を都教委が長年してきたことへの認識が見られない。
遠藤委員の「性教育は家庭教育の範ちゅう」発言には、氾濫する性情報の社会に子どもたちが置かれているといった危機意識が感じられなかった。
◇「個人差があり、デリケートな問題だから一斉指導と個別指導を」は時代錯誤では?
北欧では小学校入学段階から自分のからだを知る授業が行われている。その授業は当然、一斉授業。隠さず教えることが当たり前となったこれらの国の人々の意識は、女性が性被害を告発したら二次被害が起きる日本の意識とは違う。
「個人差、デリケート」を理由に個別指導をいう都教委及び教育委員の性意識には、「性の問題はなるべく隠しておいた方がいい」といった偏見があるのではないかと思う。
◇「保護者の理解・了解」、なぜ性教育についてだけ言うの?!
性教育に限らず、「日の丸・君が代」、オリンピック・パラリンピック教育についても都教委は、「事前に学習指導案を保護者全員に説明し、保護者の理解・了解を得た生徒を対象に個別指導を実施する」を言ってみてはどうだろう。
これらの問題についても、北村・宮崎両委員が言うように、「保護者には様々な考え」があり、北村委員が言うように、「保護者の理解を必ずしも十分得ないまま実施されていた」し、「子どもには知る権利、自己決定する権利がある」のだから。
◇足立区中学校の性教育
都教委と委員の議論で一番の問題は、子どもたちの実態を知る教員たちが熱心に授業作りに取り組んできた背景にある中学生の現実をどれほど理解したうえで発言しているのかということだ。
中学生に避妊や中絶を教える授業は各地に広がっている。子どもたちは、大人たちがカネもうけのためにまき散らす興味本位の性情報の洪水の中に置かれ、10代の妊娠・中絶・性感染症などは深刻な問題になっている。もはや、一部の生徒に個別授業をという段階ではない。
また、この中学校での性教育は、1年生から丁寧に段階を追って行われていて、「自分と相手を尊重した交際の在り方も含め『人権教育』の一環として行っている」と校長は説明している。
都教委が問題とした授業は、子どもたちが中学を卒業する直前の3月、義務教育が終わる段階で、子どもたちが人生の次のステップに移る時期を選んでおこなわれていて、そこにも子どもたちの発達段階に対する慎重な配慮がうかがえる。
足立区教委もこの取り組みを意義あるもので、不適切な授業だとは考えていないと言っている。
この性教育を現場の教員と連携して作ってきた、宇都宮大学の艮香織(うしとらかおり)准教授(保健学)の話を以下に紹介する(4月16日朝日デジタル版)。
都教委は、当該の学校の校長や区教委からこの内容も聴取していたはずなのに、これについては見解で触れていない。反論できずに、無視したのか。
6年前から足立区立中の教員と授業作りに取り組んできました。
総合的な学習の時間を使い、1年生では「生命誕生」や「女・男らしさを考える」、2年生では同性愛などの「多様な性」をテーマにしています。今回問題とされたのは3年生の「自分の性行動を考える」という授業で、その次は対等な関係を考える「恋愛とデートDV」となります。
授業の目標は、正確な情報や科学的知識に基づき、リスクの少ない性行動を選択する力を養うことです。
今回の授業では、最初に生徒同士で「高校生の性交は許されるか」を討論。
そのあと、10代の人工妊娠中絶数や産んだ子どもを遺棄した事件の新聞記事などを紹介します。
その上で、中絶可能期間や避妊方法について説明。
性交をしないことが確実な避妊方法であること、困ったときには相談機関があることも伝えます。
生徒にアンケートをすると、授業前は半数近くが「2人が合意すれば、高校生になればセックスをしてもよい」と回答しますが、授業後はその割合が10ポイント以上減少します。正しい知識を伝えることで、性行動に慎重になることがわかります。
性教育をすることで「子どもが興味を持ってしまったら危険だ」と考える人もいますが、子どもたちをもっと信頼していいと思います。
性はいやらしいものではなく、人権を基軸とした学びととらえるべきです。子どもたちの現実に向き合って、よりよい教育を模索していくことがなにより大切だと感じています。
『根津さん河原井さんらの「君が代」解雇をさせない会』(2018/5/24)
http://kaikosasenaikai.cocolog-nifty.com/blog/2018/05/index.html#entry-89380271
● 足立区中学校の性教育
教育委員は授業の背景を理解する努力を!
足立区中学校が3月に3年生を対象に行なった性教育について、都教委は4月26日に行われた都教育委員会定例会で「見解」を述べた上で、「今後の都教委方針」を示した。それに対し、教育委員からは都教委の対応の問題を指摘し、都教委に修正を求めるような発言はなかった。
「『性交』『避妊』『人工中絶』といった中学校学習指導要領保健体育にないことばを使った授業は不適切。保護者の理解を必ずしも十分得ないまま授業が実施されていた。」というのが、授業に対する都教委の「見解」だった。
そして今後は、「学習指導要領を基本とする。すべてを集団指導で教えるのではなく、集団指導で教えるべき内容と個別指導で教えるべき内容を明確にする。学習指導要領を超える内容を指導する場合には、事前に学習指導案を保護者に説明し、保護者の理解・了解を得た生徒を対象に個別指導を実施するなど」とすると述べた。
教育委員たちの発言(要旨 傍聴して筆者が聞き取った限り)を紹介する。
北村委員:「今回、議論が起こったことが良かった。議論が大切。現場では萎縮せず、取り組んでほしい。性情報がいろいろある中、子どもには知る権利、自己決定する権利がある。専門家を講師にした教員研修をしたらどうか。授業について気になったのは、保護者への周知が十分だったかどうか。保護者には様々な考えがあり、イスラム教、カトリックの家庭もあるから、理解を得ることが大事。一斉指導と個別指導をし、子どもや保護者が選択できるようにするといい。授業で避妊の方法を生徒に述べさせる場面があったが、嫌な気持ちになった子どももいたかもしれない。都教委の役割として指導・助言があるが、上からではなく、対等なパートナーとして行なってほしい。現場が萎縮しないで子どもに寄り添うよう、性教育にあたってほしい。」
遠藤委員:「性教育は、普遍性と家庭教育が大事。普遍性を担保するのは学習指導要領。生徒参加型の授業で、個別に答えを求める場面があったが、性教育は家庭教育の範ちゅう。保護者の了解が必要だ。ことの経緯についてだが、文教委員会で質問がなければ、都教委はこの授業に関して知らないままだったのか。」
指導部長:「授業に問題があると提供があった上で、文教委員会で(自民党 古賀都議から)質問があった。」
宮崎委員:「議論になったのはとてもいい。デリケートな問題だから、一斉授業と個別授業を。家庭の考えがあるから、家庭との連携が必要。正確な情報を子どもに与えるのが、子どもを守ること。家庭との連携はできていたのか。」
指導部長:「保護者には学校だよりで知らせていたが、内容についてはよく伝わっていなかった。」
秋山委員:「医療現場から見ると、個人差が大きい。集団授業ではなく、また、家庭の理解が大事。都教委作成の『性教育の手引き』(平成16年)は古いので、改定する予定はあるか。」
指導部長:「今年度中に改定する。」
山口委員:「時代の変化が早く、教育が追いついていけてない。個人差があること、センシティブな問題だから、時代に先駆けるのがベストとは言えない。慎重に。足立区教委と都教委が連携し共有できるか(語尾聞こえず)」
北村委員:「一斉授業、個別授業が難しい。一斉授業で傷つけられる場合もある。」
中井教育長:「今後も丁寧に取り組みを進める。」
北村委員は「子どもの知る権利・自己決定権、子どもに寄り添う性教育」が大切と発言していた。それならば、『性交』『避妊』『人工中絶』のことばを使った性の授業が、「子どもの知る権利・自己決定権、子どもに寄り添う性教育」であったのか、なかったのか、意見表明してほしかった。
また、「現場では萎縮しないで」と言うが、都教委が「見解」を示し校長を「指導」すれば、現場は十分萎縮する。
この発言には、現場を萎縮させる教育行政を都教委が長年してきたことへの認識が見られない。
遠藤委員の「性教育は家庭教育の範ちゅう」発言には、氾濫する性情報の社会に子どもたちが置かれているといった危機意識が感じられなかった。
◇「個人差があり、デリケートな問題だから一斉指導と個別指導を」は時代錯誤では?
北欧では小学校入学段階から自分のからだを知る授業が行われている。その授業は当然、一斉授業。隠さず教えることが当たり前となったこれらの国の人々の意識は、女性が性被害を告発したら二次被害が起きる日本の意識とは違う。
「個人差、デリケート」を理由に個別指導をいう都教委及び教育委員の性意識には、「性の問題はなるべく隠しておいた方がいい」といった偏見があるのではないかと思う。
◇「保護者の理解・了解」、なぜ性教育についてだけ言うの?!
性教育に限らず、「日の丸・君が代」、オリンピック・パラリンピック教育についても都教委は、「事前に学習指導案を保護者全員に説明し、保護者の理解・了解を得た生徒を対象に個別指導を実施する」を言ってみてはどうだろう。
これらの問題についても、北村・宮崎両委員が言うように、「保護者には様々な考え」があり、北村委員が言うように、「保護者の理解を必ずしも十分得ないまま実施されていた」し、「子どもには知る権利、自己決定する権利がある」のだから。
◇足立区中学校の性教育
都教委と委員の議論で一番の問題は、子どもたちの実態を知る教員たちが熱心に授業作りに取り組んできた背景にある中学生の現実をどれほど理解したうえで発言しているのかということだ。
中学生に避妊や中絶を教える授業は各地に広がっている。子どもたちは、大人たちがカネもうけのためにまき散らす興味本位の性情報の洪水の中に置かれ、10代の妊娠・中絶・性感染症などは深刻な問題になっている。もはや、一部の生徒に個別授業をという段階ではない。
また、この中学校での性教育は、1年生から丁寧に段階を追って行われていて、「自分と相手を尊重した交際の在り方も含め『人権教育』の一環として行っている」と校長は説明している。
都教委が問題とした授業は、子どもたちが中学を卒業する直前の3月、義務教育が終わる段階で、子どもたちが人生の次のステップに移る時期を選んでおこなわれていて、そこにも子どもたちの発達段階に対する慎重な配慮がうかがえる。
足立区教委もこの取り組みを意義あるもので、不適切な授業だとは考えていないと言っている。
この性教育を現場の教員と連携して作ってきた、宇都宮大学の艮香織(うしとらかおり)准教授(保健学)の話を以下に紹介する(4月16日朝日デジタル版)。
都教委は、当該の学校の校長や区教委からこの内容も聴取していたはずなのに、これについては見解で触れていない。反論できずに、無視したのか。
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6年前から足立区立中の教員と授業作りに取り組んできました。
総合的な学習の時間を使い、1年生では「生命誕生」や「女・男らしさを考える」、2年生では同性愛などの「多様な性」をテーマにしています。今回問題とされたのは3年生の「自分の性行動を考える」という授業で、その次は対等な関係を考える「恋愛とデートDV」となります。
授業の目標は、正確な情報や科学的知識に基づき、リスクの少ない性行動を選択する力を養うことです。
今回の授業では、最初に生徒同士で「高校生の性交は許されるか」を討論。
そのあと、10代の人工妊娠中絶数や産んだ子どもを遺棄した事件の新聞記事などを紹介します。
その上で、中絶可能期間や避妊方法について説明。
性交をしないことが確実な避妊方法であること、困ったときには相談機関があることも伝えます。
生徒にアンケートをすると、授業前は半数近くが「2人が合意すれば、高校生になればセックスをしてもよい」と回答しますが、授業後はその割合が10ポイント以上減少します。正しい知識を伝えることで、性行動に慎重になることがわかります。
性教育をすることで「子どもが興味を持ってしまったら危険だ」と考える人もいますが、子どもたちをもっと信頼していいと思います。
性はいやらしいものではなく、人権を基軸とした学びととらえるべきです。子どもたちの現実に向き合って、よりよい教育を模索していくことがなにより大切だと感じています。
『根津さん河原井さんらの「君が代」解雇をさせない会』(2018/5/24)
http://kaikosasenaikai.cocolog-nifty.com/blog/2018/05/index.html#entry-89380271
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