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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

速報:国公法堀越事件高裁逆転無罪判決

2010年03月29日 | 平和憲法
 公務員にも明白な制約基準を超えなければ基本的人権が保障されるとしたこと、国際社会の人権水準に照らした判断がなされたことなどは、今後の裁判にも生かされることになるだろう。
 ■ 政党機関紙配布、元社保庁職員に逆転無罪 東京高裁

 休日に政党の機関紙を配布したとして、国家公務員法違反(政治的行為の制限)の罪に問われた旧社会保険庁(現日本年金機構)職員・堀越明男被告(56)の控訴審で、東京高裁は29日、罰金10万円、執行猶予2年とした一審・東京地裁判決を破棄し、無罪とする判決を言い渡した。中山隆夫裁判長は「このような配布に同法の罰則規定を適用するのは国家公務員の政治活動に限度を超えた制約を加えることになり、表現の自由を保障した憲法に反する」との判断を示した。
 堀越被告は2003年の衆院選前に共産党の機関紙「しんぶん赤旗」の号外などを自宅近くのマンションで配ったとして起訴された。国家公務員が同法違反の罪で起訴されたのは、社会党(当時)のポスターを掲示・配布した郵便局職員が1974年の最高裁大法廷判決で有罪(一、二審は無罪)となった「猿払(さるふつ)事件」以来だった。
 この日の判決は「国家公務員の政治的行為を制限した国家公務員法の規定は合憲」と述べ、猿払事件判決の司法判断の大枠は維持した。その一方で「国民の法意識は時代の進展や政治的、社会的状況の変動によって変容する」と指摘。猿払事件当時と比べて「民主主義は成熟し、表現の自由が重要な権利であるという認識が一層深まっている」との状況認識を示し、「公務員の政治活動を全面的に禁止することは、不必要に広すぎる面がある」とした。
 そのうえで、起訴された被告の行為を検討。被告は社会保険事務所に勤務する事務官で、職務に裁量の余地がなく管理職でもない▽勤務先から離れた自宅周辺で、公務員であることを明らかにせずに配布しており、目撃した一般国民がいたとしても、公務員の政治的行為と認識する可能性はなかった――と言及した。
 さらに、機関紙の発行、編集をするのに比べると政治的な偏向が認められないことや、集団的な政治行為ではなかった点も考慮。「行政の中立的運営や国民の信頼という保護法益が損なわれる抽象的危険性があるとするのは、常識的に見て困難だ」と結論づけた。
 中山裁判長は判決理由の最後に「付言」として国家公務員の政治的行為の禁止について言及。諸外国と比べても厳しく、制定当時と比べても大きな社会意識の変化が起きていることや、地方公務員に対する制限とも異なることを踏まえ、「組織的に行われたものや、ほかの違反行為を伴うものを除けば、表現の自由の発現として、相当程度許容的になってきている」と指摘。「刑事罰の対象とすることの当否、その範囲などを含め、再検討され、整理されるべき時代が到来しているように思われる」と述べた。
 (略)

『アサヒ・コム』(2010年3月29日10時17分)
http://www.asahi.com/national/update/0329/TKY201003290075.html
 ■ 政党機関紙配布、元社保庁職員に逆転無罪 東京高裁判決
 (略)
 中山裁判長は判決理由で、国家公務員の政治活動を禁じる同法そのものは合憲としつつも、一律に適用すれば、表現の自由と抵触する可能性があると指摘。同法の適用の判断基準として(1)職種や職務権限(2)勤務時間中か否か(3)個人的か集団的か――などを提示した。
 そのうえで堀越被告が行った機関紙の配布行為について検討。被告が管理職ではなく、配布が休日で配布場所も職場から離れていることや、単独行為だったことを指摘し「行政の中立的運営に対する国民の信頼を損なう危険性があったということは、常識的にはいえない」として、処罰は違憲と結論づけた。
 弁護側は控訴審で、政治的行為を制限する国家公務員法の規定が、表現の自由を保障する憲法に違反すると主張。検察側は「罰金刑を猶予するのは量刑が軽すぎる」と主張していた。
 一審・東京地裁判決は「公務員の政治的中立性を損なう恐れの高い行為」として同罪の成立を認定。ただ、休日に職場から離れた場所での行為であることを考慮し、罰金刑としては異例の執行猶予を付けた。
 堀越被告は衆院選を控えた2003年10~11月、東京都中央区のマンションなど計126世帯に「しんぶん赤旗」を配布する政治的行為をしたとして、起訴された。
『日経新聞』(2010/3/29 13:09)
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819695E0EBE2E3838DE0EBE2E1E0E2E3E29191E2E2E2E2;at=ALL
 ■ 赤旗配布で逆転無罪判決 公務員の政治活動「全面禁止は違憲」
 2003年の衆院選前に共産党の機関紙を配ったとして、国家公務員法(政治的行為の制限)違反の罪に問われた元社会保険庁職員、堀越明男被告(56)の控訴審判決が29日、東京高裁であった。中山隆夫裁判長は「配布行為で国民が行政の中立性に疑問を抱くとは考えがたく、罰則規定の適用は(表現の自由を定めた)憲法21条に違反する」として、罰金10万円、執行猶予2年の有罪とした1審判決を破棄し、堀越被告に逆転無罪を言い渡した。
 中山裁判長は判決で、公務員の政治的行為を禁じた国家公務員法自体は合憲としたが、「公務員の職種や勤務時間内か時間外かなどを問わず、全面的に政治活動を禁止するのは範囲が広すぎる」と指摘した。
 同法の罰則規定の適用基準については「行政の中立的運営や国民の信頼という保護法益が損なわれる程度の危険が想定されることが必要」と判断。堀越被告については、休日に自宅周辺で、公務員の身分を明かさずに配布していた点などから「危険性を肯定するのは困難」とした。
 1審東京地裁判決は「行政の中立的運営と国民の信頼の確保には、公務員の政治的中立性が必要」とした1974年の最高裁判決を踏襲し、堀越被告の行為は「公務員の政治的中立性を著しく損なった」と指摘した。
 (略)

 【公務員の政治的行為の制限】 国家公務員法102条1項は、投票を除き、国家公務員が政党や政治的目的のために政治的行為をすることを禁じている。具体的な禁止行為は人事院規則で定められ、政党・政治団体の機関紙発行や配布、署名運動などを挙げている。違反した場合は懲役3年以下または罰金100万円以下。北海道猿払村で郵政事務官が旧社会党の選挙ポスターを配るなどした「猿払事件」で最高裁は1974年11月、「公務員の政治的行為の禁止は、合理的で、必要やむを得ない場合に限り憲法上許される」との判断を示した。
『中日新聞』(2010年3月29日 12時10分)
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2010032990120608.html

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