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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

職務の「特殊性」により一般労働法が剥奪されている状態の教員

2018年06月11日 | 日の丸・君が代関連ニュース
  =予防訴訟をひきつぐ会第6回定例総会第1部記念講演=
 ◆ 学校の「働き方改革」
   ~教員給与怯制からみた"給特法"の問題を考える

講師 高橋 哲 氏(埼玉大学教育学部准教授)

 はじめに
 生命の危機に陥るような制度が作られてきた中、教師も勤労者でありその業務を見直すことは喫緊の問題である。一般労働法にもとづきながら特殊な公務員給与法制、さらに公務員の中でも特殊な教員給与法制、職務の「特殊性」により一般労働法が剥奪されている状態。教師は授業だけでなく教育の他の部分を担ってきた。それを充実させるためにも労働条件が十分に保障されるべきである。
 Ⅰ,文科省「学校における働き方改革」の動向

 1.2017.12.22中教審「中間まとめ」の特徴

 ①「学校および教師が担う業務の明確化・適正化」とし、学校および教師の業務の範囲を明確にする。
 その中で「教師が日々の生活の質や教職人生を豊かにすることで、人間性を高め、児童生徒に真に必要な総合的な指導を持続的に行うことのできる状況を作り出すこと」を目指すとする。
 教師の勤務条件保障が良い教育につながり子どもの学習権のためにも必要であることを明記した。(参考;兼子仁氏)
 ②「教師自身においても自らの働き方を見直していくことも必要である。」とし、法制全体の見直しでなく長時間労働の「自己責任」化、さらに家庭、地域等の取組(自助、共助)と述べて責任を転嫁しているか。
 ③生活指導領域の外部化、「ゼロトレ」化、「地域・保護者、福祉部局・警察等との連携を図ること」警察、スクールロイヤーなどリスクの側面もはらむ
 ④問題の根本である給特法の改革については継続審議としたのみ。

 2.「学校における働き方改革」についての関係団体の動向
 ①全教の提言
 原則時間外勤務は命じられないとする基本原則は堅持し、長時間労働の歯止めになっていない給特法を改正する。給特法の廃止は長時間過密労働を合法化することにつながる。
 ②日教組委託研究
 時間外勤務時間分を長期休業中などに割り振る「調整休暇制度」、一年間を通じた総労働時間を(参考;樋口修資氏)。手当を出さずに休暇に振り替えること
 ③中教審「特別部会」長小川正人氏「一年単位の「変形労働時間制」」案。
 案の理由として、残業代の支給の場合、国と地方合わせて1兆円の追加財源が必要であることを挙げ現実的でないとする。大幅増に関しての文科省・財務省の力関係。給特法は維持されるべきか。「変形労働時間制」に問題はないか。財源の理由で超勤手当方式の不採用はどうか。
 Ⅱ、教員給与法制の基本原則

 1.労働法上の基本ルール

 ①労働条件の「労使対等原則」(労基法第2条)があるが、公務員の場合、給与決定は「法定(条例)主義」による。
 ②労働時間の上限1週間あたり40時間、1日あたり8時間(労基法32条)。例外として労使協定にもとつく1ヶ月間単位の変形労働時間制(労基法33条)。地公法では、1年単位の変形労働時間制は適用除外しているので前出「一年単位」は例外中の例外となる。
 ③休憩・休日の付与(労基法34条)最低毎週1回の休日

 ④時間外・休日労働の例外規定「三六協定」締結により労働者の承認と意見反映の機会をもって、労働時間の延長と休日労働をさせることができる。例外の例外として災害などの臨時の必要のある場合の時間外労働がある(労基法33条)が、これを給特法の根拠としており、異質と言われる点である。
 ⑤労基法36,33条にもとづき時間外休日労働があったときは、2割5分から5割の割増賃金を支払う。(労基法37条)
 ⑥労基法違反の場合地方公務員に関しては、人事委員会が労働基準監督機関である。(地公法58条)
 2.公務員給与の基本原則[共通原則]
 (1)公務員給与・勤務条件の「法定(条例)主義」 教育職員の給与は条例により給与表が作成される
 (2)労働基本権[労働三権]の代償として、人事院(国家公務員を対象)と人事委員会(地方公務員を対象)の勧告をもとに法で定められる。これまで地方公務員の給与についての勧告は人事院勧告とほぼ同一となってきた。
 3.教育公務員に特殊な給与原則
 (1)公立学校教員給与の国立学校準拠主義 事実上、国の作った給与表が公立学校教員の給与を決定してきた。
 (2)市町村立学校教職員給与の都道府県または市の教職員給与の1/2負担。2/3負担へ改正
 (3)教員給与の国庫負担率1/2から2006年より1/3に改正

 Ⅲ、給特法*をめぐる問題
   (*「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」)

 1.給特法制定の背景
 ①公務員労働運動の一環として日教組「人事院体制打破」「団体交渉権獲得」闘争。給特法のねらいとして超勤手当の不支給、日教組を脱労働運動化。獲得物を差別。
 ②超過時間勤務手当獲得時間外勤務に対し割増賃金支払を命ずる判決多数。

 ③1964年人事院による教員給与法制見直し勧告

 ④「教員勤務実態調査」結果 例)公立中学校超勤時間数は年間平均週3時間56分 ひと月あたり超過勤務手当額の俸給に対する比率6.2%…4%ではまかないきれない数字。
 2.給特法の法的特徴
 (1)教員調整額の支給
 「国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与に関する特別措置法」「俸給月額の百分の四に相当する額の教職調整額を支給する。」(第3条)
 (2)「臨時の必要」にもとづき時間外勤務を命ずる場合の限定4項目
  ①生徒の実習に関する業務
  ②学校行事に関する業務
  ③教職員会議に関する業務
  ④非常災害等やむを得ない場合に必要な業務(公立学校の場合)
 ①から③は「臨時」でなく恒常的な業務であるにもかかわらず。

 (3)4項目以外の時間外勤務の「割振り」
 上記限定4項目以外の時間外勤務は発生しないことが前提とされており、正規の勤務時間の「割振り」を行うことが命じられている。
 3.給特法の問題点(法的欠陥)
 (1)超勤命令の根拠法としての労基法33条3項を給特法5条による読み替えが唯一の根拠となっている。
 すなわち法規法上の法定労働時間・法定休日の例外規定としての労基法36条(36条にもとつく三六協定において恒常的な時間外労働に適用)、33条(36条の例外としての「臨時的」時間外労働の根拠)。
 さらに給特法5条による33条3項の読み替えと37条(割増賃金)の適用除外。
 読み替え後は、「労働時間を延長し、休日に労働をさせることができる。この場合において公務員の健康及び福祉を害しないように考慮しなければならない」と。
 「教育・研究又は調査の事業」の33条2項の適用、「臨時の必要がある場合」のみの時間外勤務命令。時間外勤務対象となっている「限定4項目」(Ⅱ2,(2))のうち生徒の実習・学校行事・職員会議は労基法33条3項の「臨時の場合」は該当しないはず。
 (2)特殊業務手当支給の問題
 部活動対外試合・指導が含まれ、前出の限定4項目以外の超勤は存在しない前提である一方、特殊業務手当として日常の業務に支給することの矛盾がある。
 無理やり33条の対象に当てはめたもの。部活動や修学旅行が国家公務員における「著しく危険、不快く不健康又は困難な勤務その他の著しく特殊な勤務」の条件とは非常に異質である。
 (3)教員調整額(4%)の不支給の問題
 ①国立学校準拠性の廃止
  2009国立学校の民営化に伴う、自治体裁量の拡大。
 ②給特法の改正「月額の百分の四に相当する額を基準として」と基準を緩和する一方、依然として労基法に拠る超勤・時間外手当は不支給。
 ③東京都:研修教員は2%、指導力不足教員1%など

 Ⅳ、今後の教員給与改革のあるべき方向性

 教員の超過勤務の問題を「給特法の見直し」にとどまらず、教員給与関連法制全体の見直す必要性
 1.教員の時間外・休日勤務の問題の解決
 ①まずは一般労働法にならい、時間外・休日勤務手当を支給する。そもそも時間外勤務の常態化自体の問題性
 ②教員の場合は総労働時間管理から授業時間数管理べ一スにする
 ③授業時数にもとつく教員定数の改善
 ④現行法における三六協定締結をさぐる。

 2.給与・勤務条件決定方式としての団体交渉

 ①労働三権の代償としての人事委員会の形骸化に伴い、教員団体に給与・勤務条件等の基準立法に関する団地交渉権を認めさせる。
 ②調査交渉能力をもつ独自機関を中央・地方政府に設置する。
 ③時間外勤務に関する合意を基準立法の「上乗せ」を前提とする団体交渉を認めさせる
 3.教職員給与基準立法の必要性
 ①教員に固有な給与基準立法の制定
 ②全国的な最低基準の確立、国による財政負担を1/2に戻す。(対財務省の問題)

 ※講演レジメ、別表等資料も併せてご参照ください。(記録:友光)

 質疑
 1.ILO勧告の「専門職」が、賃金闘争のときなども教職の特殊性が論拠になっている状況があるが、米国ではどうか?
 ⇒①補助として助教、カウンセラー、アシスタントティーチャーがおり、生徒の出迎え、ランチ指導などを行う。部活は別の職員か外部委託。6時間15分勤務を超えると組合から猛反発がある。
 ⇒②労働者として労基法をとり入れ、さらに、週40時間でなく研修あってのという専門職と考え一般労働法より上のものに考えるべきと思う。
 2.教員の多級化、成績率については?
 ⇒①2003年位から多層化が導入され、実質教員の給与は下がっている。35年働く場合1300万の差になる。特別手当、制裁を加味すると実際はもっとになる。
 ⇒②多忙化については、オリパラなどの~計画、研修、報告書、調査などが一因。学力調査は早急にやめるべき。
 3.基本的なことを系統的に知ることができた。‘財務省の壁’を打ち破るような取組が必要か。
 ⇒文科省ルートだけでなく、司法をもっと駆動させる訴訟などが有効ではないか。

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