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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

首里城再建と辺野古基地建設をリンクさせてはいけない

2020年03月21日 | 平和憲法
  《教科書ネット21ニュースから》
 ◆ 首里城再建と辺野古新基地問題
   ~リンクする振興策と米軍基地建設の危険性

前泊博盛(まえどまりひろもり・沖縄国際大学教授)

 ◆ 首里城正殿焼失の衝撃
 沖縄観光のシンボルともいわれる首里城正殿が2019年10月31日未明、焼失した。
 首里城正殿が真っ赤な炎に包まれ、南殿や北殿などに延焼している様子は全国ネットで放送され、衝撃は全国に伝えられた。
 毎週木曜日早朝6時48分から東北放送ラジオで「沖縄はいま」をレギュラー解説しているが、その日は、まさに朝6時に地元二紙と現地印刷で配達される日本経済新聞に目を通し、テレビをつけると、真っ赤に燃える首里城正殿・北殿・南殿の様子が中継されていた。
 まさかの事態に首里城の世界遺産登録にかかわった考古学の専門家に電話をかけ、問題のポイントを整理した。
 専門家は、すぐに首里城内に保管されている収蔵品の被害の様子を確認してきた。
 「首里城そのものはレプリカだから燃えても後で再現できるが、収蔵品は本物だから取り返せなくなる。琉球の歴史の貴重な証拠がなくなってしまう」というのが、懸念の理由である。
 なるほど、と頷けるものがあり、ラジオでは正殿、北殿、南殿など建造物に加えて「収蔵品」の重要性を強調した。
 火事を受け、その日の朝、沖縄県の首脳にもメールを送り、収蔵品の火災被害状況の確認を急がせると同時に、火災原因の徹底究明、再建にあたっての「自主再建」の可能性を探るよう求めた。
 ところが沖縄県の玉城デニー知事は、こともあろうか火災直後に上京し、官邸で菅義偉官房長官と面談。首里城正殿などの再建支援を政府に要請した。
 首里城は、2019年2月に国から沖縄県に管理が移管されたばかり。沖縄県管理下での火災焼失である。
 国に再建支援を求める前に、火災原因の徹底究明による「責任の所在」の明確化は必須である。
 原因究明もないままに、国に再建を求める玉城知事の対応に、沖縄県民からも不安と不信、批判の声が上がった。
 火災翌日に再建を求める玉城知事に、応対した菅官房長官は即座に「再建支援」を二つ返事で応じている。
 一方で、「米軍辺野古新基地建設」問題では、沖縄県が再三要請し、県民投票、沖縄県議選、国政選挙、そして沖縄県知事選挙とあらゆる選挙などで「建設反対」の圧倒的民意の意思表示がなされてきた。
 しかし、安倍晋三政権は名護市辺野古沿岸海域の埋め立てを強行し「米海兵隊辺野古新基地建設」を強権的に進めている
 沖縄県は、行政の不条理と無法ぶりを裁判に訴えているが、政府の意向を忖度する裁判所は、沖縄県の訴えには耳を貸すことなく、門前払いや国勝訴の判決を繰り返し、民意無視の新基地建設にお墨付きを与え続けている。
 米軍基地建設でかたくなまでに沖縄県の民意を無視し、基地建設を強行する安倍政権が、沖縄県管理のもとで喪失した首里城の再建には、「二つ返事」で沖縄県の要請に即座に応じる。
 沖縄県民からすれば「裏に何かある」と疑心暗鬼になるのは当然の流れであろう。
 誰もが不安になる。特に、あの「上から目線」と亡き翁長雄志・前沖縄県知事から酷評された菅官房長官が、首里城再建には「清々しいまでに積極的」という点に波紋が広がっている。
 安倍長期政権との長い付き合いの中で、沖縄県民が学んできたことは何か。
 沖縄県は、再建を頼む相手をしっかり見定める必要がある。
 首里城再建と引き換えに、何かを求められたときに、断れないような状況にならないように注意が必要。
 普天間飛行場返還に絡めて辺野占新基地建設を強行する安倍政権が、首里城再建と基地建設をリンクさせかねないからである。
 昨年12月上旬、韓国で日韓市民フオーラムが開催され、筆者も東大の小森陽一名誉教授らと招待され出席した。
 日韓関係の悪化で、韓国からの沖縄県の観光入域客数は対前年度同時比で85%減というダメージを受けていた。観光立県の沖縄にとって深刻な事態にも関わらず、日韓関係の修復・改善に向けた安倍政権の動きは全く見えてこない。
 韓国政府や市民の側からも「日韓関係は、これでいいのか」との危機感が伝えられ、市民レベルでの交流による問題解決策、交流促進策が検討された。
 フォーラムの結論は、「お互いが出来の悪い政治家を選んだのが対立の原因。ちゃんとした政治家を選んでいたらこんな対立にはならなかった。お互いにいい政治家を選び直そう」ということであった。
 その日韓市民フォーラムでも「安倍政権にイジメにあっているのに、沖縄をいじめている安倍政権に、沖縄の魂となる首里城の再建を頼みに行くのはどうなんだろうか」という疑問の声が多く上がった。
 首里城再建と辺野古新基地建設のリンクへの強い懸念が、日韓両国の市民から噴き出るほど、安倍政権の首里城と辺野古との対照的な対応への強い警戒と不信感が渦巻いた。
 ◆ 辺野古基地建設に1兆円

 火事で焼失した首里城正殿、北殿、南殿など施設建設に、国は約70億円を投じたが、再建には物価高騰やヒノキなど希少資材の確保などで倍の140億から200億円の費用がかかると試算されている。
 一方で、焼失から2か月ほどで国内外の市民、企業団体などから20億円を超える再建に向けた寄付金が集まっている。
 「国に依存せず、県民の手で沖縄の魂となる首里城再建を」との声も出始めている。
 首里城焼失の騒ぎの中で、政府は昨年12月25日、辺野古新基地建設にかかる「技術検討会」の中で、新基地建設費用の総工費が9300億円かかるとの見通しを明らかにした。
 2014年に示していた3500億円に比べ3倍近い増額である。しかも工事完了までには知事による許認可を受けたあと9年を要するとの見通しを示した。
 9300億円の内訳は、埋め立て工費7,225億円(地盤改良費1000億円を含む)、埋め立て後の飛行場整備費625億円、環境対策費700億円などとなっている。
 経費が当初見込みの3倍増となった理由は、埋め立て予定地でみつかった軟弱地盤、沖縄県が再三指摘してきた問題である。
 それも数年も前から国が事前の環境アセス調査の段階で確認していた課題である、地盤を固めるために約7万7千本の砂ぐいを打ち込むため経費がかさむ。国は別工法で7万1千本に変更するとしているが、埋め立て工期の9年3カ月のうち、地盤改良には4年1カ月を見込んでいる。
 そもそも政府の新基地建設経費の見直しは、沖縄県からの指摘を受けてのものだ。
 2018年11月29日に安倍首相と会談した玉城知事は「このままいくと完成までの費用は最大2兆5500億円かかる」との試算を示した。
 当時、22カ所中完成した護岸は6カ所で工費は1428億円。政府が当初見込んでいた護岸工事費用78億円は、すでに支払い済み額が928億円を超え、当初計画の約12倍に上っていた。
 「莫大な費用負担は国民の理解を得られず、いずれ行き詰る」と沖縄県は2019年2月にも指摘していたが、安倍首相は「現段階では(工事費の)試算は困難」と述べ、岩屋防衛大臣(当時)は「沖縄県の試算は大げさ」と言ってのけた。
 しかし、再試算の結果は9300億円となった。

 沖縄県は「工事が進めば、さらに費用は嵩むことになる」「県の再試算では2兆6500億円」と警鐘を鳴らしている。
 そもそも「国民の税金を1兆円も投じて米海兵隊の基地を建設する必要は、本当にあるのか」というのが、沖縄県や沖縄県民からの安倍政権に投げられている疑問である。
 沖縄県民が選挙などで示した「新基地建設反対」の民意を無視し、豊かな海を埋める辺野古新基地建設を止めよう米軍基地フェンスの前で日々体を張った抵抗を続ける市民を、警察権力で排除する安倍政権である。
 「県民の皆さんに丁寧に説明し、理解を求めたい」(安倍首相)との言葉はいずこへ。沖縄では強権的政治がまかり通っている。
 日本を代表する軍事アナリストの小川和久氏は、辺野古新基地について「小さすぎて普天間基地の代替機能は全く果たせず、有事にも何の役にも立たない。なんのために作る基地か、まったく不明。建設業者との癒着、汚職としか考えられない」と酷評している。
 そもそも何年かかるか、最終的にいくらかかるもわからないまま、民意を無視して着工し、当初見込みの3倍もの予算を公表しする安倍長期政権。
 自戒を込めて言うが、そんな政権を支持し、批判もできず、血税の垂れ流しを止められないこの国のメディア、そして国民こそが、主権を放棄した残念な存在といえるかもしれない。
『子どもと教科書全国ネット21NEWS 130号』(2020年2月)

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