▼ 放射能汚染水 無害主張はウソだ (週刊新社会)
東京電力の福島第一原発敷地内にたまり続ける放射能汚染水を政府と東電は、あたかも無害のように偽って海に捨てようとしている。この閣議決定についてNHKの世論調査(5月)では賛成29%、反対22%、どちらともいえない43%となっている。ウソとごまかしの政府主張の主な論点を整理する。
▼ 「トリチウムは自然界にもあるし、通常の原発からも海に流している」
確かにトリチウムは普段原発から排水しています。だからといってこれ以上流していいとはなりません。原発周辺では、がんの発生率が高いというデータが報告されています。
トリチウムは飲んでも平気と公言する政治家もいますが、トリチウムが有機物の水素と置換して有機結合型トリチウムとなり、生物に取り込まれた場合、食物連鎖で濃縮される可能性が指摘されています。
福島第一原発から海洋放出しようとしているALPS「処理水」の8割には、トリチウム以外にストロンチウム90やヨウ素129、ルテニウム106など、基準値を超える放射性核種が含まれており、まさに「核汚染水」です。
これは通常の原発運転から出るトリチウム水と異なり、デブリとなった核燃料などに触れたためです。
▼ タンクが満杯になるのだから仕方がない
東電はタンクを増設する敷地がなく、2年後には満杯になると言っています。しかし、これは海洋放出に世論を誘導するための印象操作です。
まず原発敷地にデブリ処理の施設用地を計画していますが、デブリを取り出すのは困難です。取り出したデブリの一時保管施設といってもそのあとどうするのか。実行不可能な計画は見直さなくてはなりません。
また、敷地内には工事で発生した土などの置き場が敷地北側にある。
この土の放射能汚染はセシウム137で最大1キログラム当たり2200ベクレルと東電は説明します。政府は8000ベクセル未満なら通常の方法で処分できる廃棄物として、自治体などに処分させてきました。
それなら、周囲にある一時保管施設に移動してタンク敷地にすればよいのです。
さらに第二原発との距離は12キロメートルです。パイプラインを敷設して第二原発敷地に送ることもできるのではないでしょうか。
▼ 解決は汚染水のモルタル固化や地下水流入を止めること
専門家や市民などからなる原子力市民委員会(座長=大島堅一龍谷大学政策学部教授)は、福島第一原発のALPS(多核種除去設備)処理汚染水海洋放出問題についての緊急声明で次のように主張しています。
政府や東電はトリチウムの年間放出量を22兆ベクレル以下にするとしている。しかし、これは、福島第一原発における事故前放出実績、年間約2兆ベクレルの10倍である。
それでも19年10月現在の汚染水(トリチウム総量、約860兆ベクレル)全量を放出するまでに数十年かかり、その間に汚染水は増え続ける。
したがってタンクによる長期保管は避けられず、堅牢な大型タンクによる保管継続か、モルタル固化処分が現実的かつ合理的である。
政府は大型タンクからの漏洩リスクについて指摘しているが、石油備蓄タンクなどの設置・運用実績から、十分な信頼性がある。
また、デブリ冷却を早急に空冷化すること(冷却のため、現在毎日数百トンの水を使用し、核汚染水を発生)、また、地下水流入を止めて汚染水の増加を防ぐためには、デブリを含む事故炉を「外構シールド」で覆い、放射能の拡散を防ぐ「長期遮蔽管理」に移行することが欠かせない。
▼ 漁業者の誇りをないがしろに
反故にされる東電の漁連との約束
福島の漁民は事故以来、東電の汚染水の海洋放出に何度も煮え湯を飲まされてきました。
その結果、東電は15年、福島漁連に対して、ALPS処理水について、「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わず」との回答をしています。
もちろん、今回の海洋放出の閣議決定には漁民も全国漁連、福島漁連も絶対反対です。
一方、政府は風評被害による減収を補償することで、「関係者の理解」をとりつけようとしています。
しかし、漁業者は安全でおいしい魚介類を消費者に提供したいとの誇りで漁業を営んでいるのです。とりわけ、事故以来、福島県や近隣県の漁業者が、やっとここまでたどり着いたのです。この努力を無にし、これから何十年も放射能汚染を恐れながら漁業を続けるわけにはいきません。
海洋放出に理解を示したアメリカでさえ、日本産の魚介類の輸入制限を続けています。
▼ 海洋放出の狙いは核燃料サイクル維持が目的か
政府や東電は汚染水の海洋放出になぜこだわるのでしょうか。
原子力科学者の小出裕章さんは、使用済み核燃料の再処理施設の六ヶ所工場は、福島第一の汚染水排出とはレベルのけたが数段違う高い量のトリチウム水を海洋放出する前提なので、政権が海洋放出を撤回することはあり得ないと訴えています。
事実、東海村にある再処理工場では大量の海洋放出を行っています。薄めて流せばよいというものではありません。
根本的にはすべての原発推進政策を止めるしかありません。
『週刊新社会』(2021年5月25日)
東京電力の福島第一原発敷地内にたまり続ける放射能汚染水を政府と東電は、あたかも無害のように偽って海に捨てようとしている。この閣議決定についてNHKの世論調査(5月)では賛成29%、反対22%、どちらともいえない43%となっている。ウソとごまかしの政府主張の主な論点を整理する。
▼ 「トリチウムは自然界にもあるし、通常の原発からも海に流している」
確かにトリチウムは普段原発から排水しています。だからといってこれ以上流していいとはなりません。原発周辺では、がんの発生率が高いというデータが報告されています。
トリチウムは飲んでも平気と公言する政治家もいますが、トリチウムが有機物の水素と置換して有機結合型トリチウムとなり、生物に取り込まれた場合、食物連鎖で濃縮される可能性が指摘されています。
福島第一原発から海洋放出しようとしているALPS「処理水」の8割には、トリチウム以外にストロンチウム90やヨウ素129、ルテニウム106など、基準値を超える放射性核種が含まれており、まさに「核汚染水」です。
これは通常の原発運転から出るトリチウム水と異なり、デブリとなった核燃料などに触れたためです。
▼ タンクが満杯になるのだから仕方がない
東電はタンクを増設する敷地がなく、2年後には満杯になると言っています。しかし、これは海洋放出に世論を誘導するための印象操作です。
まず原発敷地にデブリ処理の施設用地を計画していますが、デブリを取り出すのは困難です。取り出したデブリの一時保管施設といってもそのあとどうするのか。実行不可能な計画は見直さなくてはなりません。
また、敷地内には工事で発生した土などの置き場が敷地北側にある。
この土の放射能汚染はセシウム137で最大1キログラム当たり2200ベクレルと東電は説明します。政府は8000ベクセル未満なら通常の方法で処分できる廃棄物として、自治体などに処分させてきました。
それなら、周囲にある一時保管施設に移動してタンク敷地にすればよいのです。
さらに第二原発との距離は12キロメートルです。パイプラインを敷設して第二原発敷地に送ることもできるのではないでしょうか。
▼ 解決は汚染水のモルタル固化や地下水流入を止めること
専門家や市民などからなる原子力市民委員会(座長=大島堅一龍谷大学政策学部教授)は、福島第一原発のALPS(多核種除去設備)処理汚染水海洋放出問題についての緊急声明で次のように主張しています。
政府や東電はトリチウムの年間放出量を22兆ベクレル以下にするとしている。しかし、これは、福島第一原発における事故前放出実績、年間約2兆ベクレルの10倍である。
それでも19年10月現在の汚染水(トリチウム総量、約860兆ベクレル)全量を放出するまでに数十年かかり、その間に汚染水は増え続ける。
したがってタンクによる長期保管は避けられず、堅牢な大型タンクによる保管継続か、モルタル固化処分が現実的かつ合理的である。
政府は大型タンクからの漏洩リスクについて指摘しているが、石油備蓄タンクなどの設置・運用実績から、十分な信頼性がある。
また、デブリ冷却を早急に空冷化すること(冷却のため、現在毎日数百トンの水を使用し、核汚染水を発生)、また、地下水流入を止めて汚染水の増加を防ぐためには、デブリを含む事故炉を「外構シールド」で覆い、放射能の拡散を防ぐ「長期遮蔽管理」に移行することが欠かせない。
▼ 漁業者の誇りをないがしろに
反故にされる東電の漁連との約束
福島の漁民は事故以来、東電の汚染水の海洋放出に何度も煮え湯を飲まされてきました。
その結果、東電は15年、福島漁連に対して、ALPS処理水について、「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わず」との回答をしています。
もちろん、今回の海洋放出の閣議決定には漁民も全国漁連、福島漁連も絶対反対です。
一方、政府は風評被害による減収を補償することで、「関係者の理解」をとりつけようとしています。
しかし、漁業者は安全でおいしい魚介類を消費者に提供したいとの誇りで漁業を営んでいるのです。とりわけ、事故以来、福島県や近隣県の漁業者が、やっとここまでたどり着いたのです。この努力を無にし、これから何十年も放射能汚染を恐れながら漁業を続けるわけにはいきません。
海洋放出に理解を示したアメリカでさえ、日本産の魚介類の輸入制限を続けています。
▼ 海洋放出の狙いは核燃料サイクル維持が目的か
政府や東電は汚染水の海洋放出になぜこだわるのでしょうか。
原子力科学者の小出裕章さんは、使用済み核燃料の再処理施設の六ヶ所工場は、福島第一の汚染水排出とはレベルのけたが数段違う高い量のトリチウム水を海洋放出する前提なので、政権が海洋放出を撤回することはあり得ないと訴えています。
事実、東海村にある再処理工場では大量の海洋放出を行っています。薄めて流せばよいというものではありません。
根本的にはすべての原発推進政策を止めるしかありません。
『週刊新社会』(2021年5月25日)
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