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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

マスコミの偏向報道が、国を軍拡や全体主義に向かわせる危険

2022年02月22日 | 平和憲法
  《マスコミ市民》
 ◆ 立憲民主党は外交・軍事政策で右旋回すべきではない
   「自民の進めた安保政策=是」の枝野氏発言、票を減らす

永野 厚男(教育ジャーナリスト)

21年8月の米軍空爆の現場に掲げられた子ども7人を含むアフガン人犠牲者たちの遺影、NHKのHPから

 憲法改〝正〟を党是としたり〝前向き〟な政党が衆院選で改憲発議に必要な3分の2超という結果が、昨年11月1日出た。この日から多くのマスコミが、抑止力と称する軍拡(自衛隊増強・日米軍事同盟強化)を是と宣伝、改憲を煽り、立憲民主党(以下、立憲)と共産党・れいわ・社民党との共闘を妨害しようとする主張を、より強く発信し続けている。泉健太氏始め立憲の議員、連合の幹部に、軍拡や全体主義の方向に行くと危険だ、気付いてほしいという思いで、本稿を認(したた)めた。
 ◆ 放送法4条違反のフジテレビ・日本(読売)テレビ

 11月1日のフジテレビ『めざまし8』で、安倍晋三氏の〝スシ友〟と言われる田崎史郎氏(71歳)が「立憲が負けたのは共産と組んで左の方にブレてしまったのが、失敗の原因だ。(09年に政権を取った時の)民主党は保守層も包み込んだ形で支持を集め政権が取れて、政権運営に失敗し引いたわけだが、今の左寄りの路線を立憲が続けていくのかどうか。それをしっかり議論しないと、再生は危ないんじゃないか」と、野党共闘を妨げるような主張をした。
 旧民主党が政権から下りたのは、第1次安倍政権が〝愛国心〟を盛った教育基本法を元に戻し、教員免許更新制を廃止する等をせず、軍事問題では辺野古の新基地建設を是とし、最後は自衛隊員出身の森本敏(さとし)氏に防衛相を委ねた等、右寄りの路線をとったからだという意見もあるのに、田崎史郎氏は「右に行けば再生できる」かのように誘導している。
 11月6日の日本(読売)テレビ『ウェークアップ』も、辻元清美氏らの落選を挙げ、男性ナレーターが「立憲の比例票が伸びなかった原因は共産党との共闘だとされる」と煽(あお)り、芳野友子・連合会長の「市民連合・共産党との関係でかなり現場が混乱した。連合としては戦いづらかったのは事実かと思う」という、市民連合をも非難するような主張を流した後、男性ナレーターが「野党共闘したとはいえ、共産党は日米安条約の破棄が持論で、日米同盟を重視する立憲の立場とは大きく異なる」と、また煽る。
 続けて、維新・松井一郎大阪市長が記者会見で「憲法改正案を固めて、参院選と同時に国民投票を実施すべきだ。そこへ向けてやっぱり憲法改正を各党しっかり出すべきだ」と主張する映像も流した。
 そして「キャスターの野村修也(しゅうや)中央大法科大学院教授とコメンテーターとのやり取りの時間」を含めてではあるが、25分間も維新・馬場伸幸(のぶゆき)幹事長(現共同代表)だけを出演させ、同氏は「全国を回らせて頂き、基本的な考え方が違う立憲と共産が選挙に勝つためだけに野合しているという訴えをさせて頂きましたけども、聞いている皆様方も頷うなずいている方がたくさんいらっしゃいましたんで、国民側から見ても、選挙に勝つために協力するというのは疑問を感じている方が多かった、と思います」と、一方的に野党共闘を非難。
 この後、野村氏が「国会で憲法改正についてアクション起こしますか」と問い、馬場氏は「衆参の憲法審査会が立憲と共産の妨害(ママ)で長い間、まともに開催されていない。まず正常化する。毎週参院は水、衆院は木曜の定例日に審査会を開く癖を付けていかないと、今入り口で開く、開かせないの駆け引きばかりになってるので、まず審査会を開くというところに力を入れていきたい。我々、審査会の委員も2から今回、5議席に与えて頂き、発言力は増したと思うので、協力できる他の野党とタッグを組み、審査会正常化に力を入れていきたい」と回答。野村氏がすぐ「憲法審査会の定例開催は重要なご指摘と思う」と応じた。
 野村氏は「維新と自民の取引材料として何が考えられるか」と問い、(この番組にも出た、前出の)田崎氏が「憲法改正で先頭に立ちますよ、その代わり議員定数削減やってねとか、取引をやってく必要があると思う」と発言。馬場氏が「田崎さんが仰って頂いた通り」と応じた。
 馬場氏はこの後も「憲法審査会で各党が憲法改正項目を出せ」等まくし立てた。読売テレビは馬場氏と真っ向価値観の違う政党や護憲の憲法学者を出演させず、反論権を保障しない。全体主義国のようなプロパガンダ、放送法4条違反なのではないか。
 11月7日のフジテレビ『日曜報道 THE PRIME』も、憲法問題ではキャスターの松山俊行解説委員、維新の吉村洋文(ひろふみ)大阪府知事、玉木雄一郎国民民主党代表のタッグで、改〝正〟だけを大宣伝した。
 この番組も護憲派の反論権の保障はない


 ◆ 政府・自民党の外交・軍事政策〝正当化〟に邁進するNHK

 NHKは11月21日、「どうする立憲民主党 代表選4候補に」問う」と題する『日曜討論』で、候補者以外では白井さゆり慶大教授と室橋祐貴(むろはしゆうき)・日本若者協議会代表理事(33歳)だけ出演させた。
 室橋氏は「団体内で選挙後に、なぜ立憲民主党に投票しなかったか聞いた。①批判ばかり、政権担当能力がない、②やっぱり外交・安保・経済政策を中心に、政策の評価が非常に低い、③やっぱり共産党との距離感が近すぎる。やっぱり若者からの支持を得られない」「憲法の話は若者は議論を求めていて。結局は国民投票やるわけですよ。なので国民にもっと開いていいんじゃないかな」と述べた。
 室橋氏はこの前段で、「政府・自民・維新の外交・安保(軍事)政策を是とする若者が多い」かのような主張をしたが、調査対象・範囲は「自らの団体内」に留まる旨、明言している。後段の「若者は憲法の議論を求めてい」るは調査対象・範囲を含む、エビデンスを明らかにしていない。
 筆者や知人が街頭等で若者(戦争法反対の元SEALDsメンバーを含む)に調査すると、外交・安保(軍事)政策で、「立憲はもっと政府・自民と対決し、野党共闘を進め軍事費を削ってほしい。海自の〝かが・いずも〟の空母化や敵基地攻撃力保有をやめさせて」等、室橋氏と真逆の意見が多い
 また、憲法9条等を「守り活かす」意見が、「改〝正〟を求める」意見よりも多かったし、そもそも政策の優先順位を問う各種世論調査で、若者のトップは「雇用や賃金、貧困格差問題」であり、憲法改悪は最下位だ
 司会の伊藤雅之(まさゆき)解説委員・井上あさひアナは、「若者が本当に改憲を求めていると言うなら、そのエビデンスを明らかにしなさい」等、室橋氏に問い質(ただ)すべきだが、これを怠ったのは中立性を欠くと言わざるを得ない。
 なお白井氏も「やはり政権を担うためには、安全保障・外交の所を、今の現実的に、台湾問題とかね、いろんな問題がありますけども、そこを明確に出して、その上で憲法論議をどうするかを、示してほしい」と、前述の御用ジャーナリストらと同じ、軍事力による国家安全保障に立脚する主張をした。
 NHKは白井氏と室橋氏のどちらかを招かず、代わりに例えば中野晃一(こういち)上智大教授や五野井郁夫(ごのいいくお)高千穂大教授らを招き、憲法・立憲主義に則り大いに語って頂き、政府・自民党の(特に外交・軍事)政策には賛否両論あると、視聴者に提示するべきだ。さもなければ、国営放送局のそしりは免れないだろう。
 ◆ 〝同盟国〟米軍は、アフガンで多数の市民を殺害

 投票日1週間前、10月24日のNHK『衆院選特集』「コロナ禍の選挙戦 党首に問う」で、維新・松井氏が「立憲と共産の野合(ママ)大連合は国の根幹の外交・安全保障を横に置いて、政権選択選挙で有権者の信を問う。これほど無責任な話はない。まさに選挙目当て、選挙互助会としか僕には見えません」と非難した。
 これに対し立憲・枝野幸男代表は「4野党の間では20項目、かなり詳細・具体的な政策の共有をして、これを実現するために(共産は)閣外からご協力頂けると。安全保障などに違いはありますが、それについてはこの連携には持ち込まないと、3党の皆さんのご理解を頂いていることは、候補者の数から言っても、もし政権変わるとすれば、立憲の政権を作らせて頂く。それについては政府としては立憲の安全保障政策でしっかりと進めさせて頂く。日米同盟を軸として、現実的で国土・国家をしっかりと守ると。こういう外交・安全保障政策。その大筋はこれまで50年近く自民党がやってきた日本の現実的な、しかもかつてのハト派宏池会が進めてきた安全保障政策と大きな違いはありません」と述べた。
 しかし宏池会・岸田文雄氏は、敵基地攻撃力を是とし、軍事費倍増、憲法改悪も進める人物だ。もはや〝ハト派〟でない人物の軍事政策と「大差ない」と言う枝野氏の発言で、護憲の有権者の票はどっと減ったのではないか。
 枝野氏が「軸」だと言う軍事同盟国・米国は、同時多発テロ事件への報復と称し、アフガニスタン戦争を20年もやった。
 自衛隊も洋上給油等の〝後方支援〟で加担してしまったこの戦争で、誤爆を繰り返し多数の民間人を殺害してきた米軍は、「過激派組織による攻撃の脅威を取り除くため」とし昨年8月29日、首都カブールで無人機による空爆を強行。その空爆は、車で同僚を送り自宅に駐車しようとしたゼマリ・アフマディさん(米国に本拠を置く慈善団体「栄養&教育インターナショナル」の職員だった)と、迎えようと車に駆け寄っていた子ども7人を含む10人もの無辜(むこ)なる市民を、無残にも殺害した。
 こうした米軍の非人道的で残虐な軍事行動を、枝野氏は厳しく批判し、日米安保条約の軍事色を段階的に消していき、自衛隊の縮小と併せ、平和友好条約に変えて行く等主張すれば、立憲の票はもっと伸びたはずだ。
 なお選挙後の12月13日、米国防総省のカービー報道官は記者会見で冷酷にも「誤爆の原因は、過失や違法な行為、それに不十分なリーダーシップによる結果ではなかった」ので「個人の責任を問うことはない」と述べ、関係者の処分は行わないと明言した(オースティン国防長官も処分を求めなかったという)。こういう体質を構造的に持つ米軍は、日本でも沖縄等で多くの事件・事故を起こしている。
『マスコミ市民』(2022年2月号)

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