★ 名古屋市を舞台に起こった3つの「教育統制事件」が象徴するもの
はじめに
安倍政権の改憲・教育の国家主義・軍国主義化の展開の中で、この間、象徴的なことが名古屋市を舞台に、3つの象徴的「教育統制事件」が起こった。
①名古屋市教委による「教育出版」道徳教科書の採択、
②文科省による「前川氏授業報告調査」、
③名古屋地裁での「朝鮮高校無償化排除訴訟・名古屋地裁「不当な支配」論判決
を報告し、注意を喚起したい。
(1)名古屋市では、昨2017年7月「教育出版」小学校道徳教科書を採択
名古屋市では、1年前の2017年7月、「教育出版」小学校道徳教科書が採択された。
教科書採択では「教育出版」小学校道徳教科書を採択し、今年度から「教育出版」での道徳授業が行われ、「道徳徳目」・「愛国心」など、子どもたちの内心が評価・評定されている。
また、昨日2018年7月20日の中学道徳教科書採択でも…(集会で報告)。
そして、河村名古屋市長は、5年後の今も「南京虐殺否定発言」を撤回せず、教育委員に河村市長の息のかかった人物を送り込み、歴史修正主義教科書「育鵬社」・「自由社」教科書採択を目論み、来年は「育鵬社」中学歴史・公民教科書の採択を射程に入れている。
(2)安倍政権の改憲・教育統制・教科書統制、メディア統制、「日の丸・君が代」強制など「思想・言論の自由」統制と軌を一にする「前川氏授業報告調査」
2018年3月、文部科学省が自民党「日本会議議員連盟」議員の圧力により、前川喜平・前文部科学省事務次官を「総合学習の時間」講師として呼んだ名古屋市立八王寺中学校での授業の確認や録音データ提出を求めた「前川氏授業調査」に対し、名古屋市教委は、国による個別授業・教育への干渉であるとして、文科省に抗議する姿勢を見せたが、文科省による「授業報告」と言う名の憲法違反の教育統制を撥ね付けることはできなかった。
今回の事件は森友事件同様、「日本会議」・「日本青年会議所(JC)」系の政治家が官僚に圧力をかけ、教育に介入した事件である。
文科省へ働きかけたのは二人の自民党議員で、赤池誠章参院議員(56歳)は、細田派=安部派で自民党文部科学部会会長、日本会議国会議員懇談会所属。2017年夏の道徳教科書採択では、自分のプログで8社の教科書をランキングし、小学校道徳教科書で最も右翼的な「教育出版」道徳教科書を第1位にあげていた。
池田佳隆衆議院議員(自民党細田派、日本会議国会議員懇談会、51歳)は、比例:東海「愛知3区」選出衆院議員。「日本青年会議所」(∫C)会頭、名古屋青年会議所元理事長。2013年2月発行の『教育再生』では、日本教育再生機構の理事の一人として、八木秀次氏らとともに、特別対談で「教科書正常化」などを主張していた議員である。
前川氏は、5月5日の名古屋市での講演で「私の授業が対象になったのは、一部の勢力から目の敵にされているから。文科省が品のない質問状を送りつけることになったのは残念だし情けない」と述べた。
今回の「前川氏授業調査」は明確な政治介入・文科省強制調査であり、安倍政権が進める改憲・教育統制・教科書統制、「特別な教科・道徳」授業・評価、「日の丸・君が代」強制、不服従教員への「思想転向研修」、メディア統制、「聴衆の動員」調査・反応調査であり、戦前の「治安維持法」の思想調査に近いものであり、安倍政権の「教育の自由」統制、「思想・言論・表現の自由」統制と軌を一にするものであり、憲法・教育基本違反の教育への露骨な介入であり、国による個別授業への干渉・教育への介入である。として行われた危険なものである。
(3)「朝鮮高校無償化排除訴訟」名古屋地裁7.27判決での「不当な支配」論の問題性
2017年4月27日の「朝鮮高校無償化排除訴訟」名古屋地裁判決は、広島・東京の不当判決以上の悪質な判決だった。
朝鮮学校が朝鮮総聯の「不当な支配」を受けている疑いがあるとした広島・東京地裁判決からさらに踏み込み、「不当な支配」の疑いを認定した。
その根拠には、国側が大阪裁判敗訴を受けて新たに証拠として追加した「朝鮮高級学校教科書の記述」なども含まれている。
「民族教育の価値」は認めても、その「民族教育」は「不当な支配」を受けているとし、朝鮮学校には朝鮮総聯の「不当な支配」があるとする。
「不当な支配」云々が後付けに過ぎないことは裁判経過からも明白な事実である。「不当な支配」論は、国側が規定削除の違法性を十分に認識したからこそ持ち出した虚構の根拠である。
被告・国は、17年7月に大阪無償化裁判で敗訴すると、愛知での口頭弁論で朝鮮学校の教科書を多数翻訳し、『朝鮮学校の教科内容には北朝鮮への賛美的な内容が含まれている』とし、裁判所はこれに対して、「不当な支配があるかないか判断する際には、教育内容も資料にしてもいい」、「むしろ教育内容を見ることで外部団体からの支配があるかどうかがよくわかる」との判断をした。
これは戦後日本の教育法制を揺るがす内容である。
今後、これまで以上に、教育現場への誤った「不当支配」論による教育支配・教育内容統制が跋扈することに特段の注意を喚起する。
以上、名古屋市で起こった3つの「教育統制事件」は、何を象徴しているのだろうか。そして今、子どもたちは、誰によって、どこに連れて行かれようとしているのだろうか。
2018.7.22 小野政美(憲法の理念を生かし、子どもと教育を守る愛知の会)
はじめに
安倍政権の改憲・教育の国家主義・軍国主義化の展開の中で、この間、象徴的なことが名古屋市を舞台に、3つの象徴的「教育統制事件」が起こった。
①名古屋市教委による「教育出版」道徳教科書の採択、
②文科省による「前川氏授業報告調査」、
③名古屋地裁での「朝鮮高校無償化排除訴訟・名古屋地裁「不当な支配」論判決
を報告し、注意を喚起したい。
(1)名古屋市では、昨2017年7月「教育出版」小学校道徳教科書を採択
名古屋市では、1年前の2017年7月、「教育出版」小学校道徳教科書が採択された。
教科書採択では「教育出版」小学校道徳教科書を採択し、今年度から「教育出版」での道徳授業が行われ、「道徳徳目」・「愛国心」など、子どもたちの内心が評価・評定されている。
また、昨日2018年7月20日の中学道徳教科書採択でも…(集会で報告)。
そして、河村名古屋市長は、5年後の今も「南京虐殺否定発言」を撤回せず、教育委員に河村市長の息のかかった人物を送り込み、歴史修正主義教科書「育鵬社」・「自由社」教科書採択を目論み、来年は「育鵬社」中学歴史・公民教科書の採択を射程に入れている。
(2)安倍政権の改憲・教育統制・教科書統制、メディア統制、「日の丸・君が代」強制など「思想・言論の自由」統制と軌を一にする「前川氏授業報告調査」
2018年3月、文部科学省が自民党「日本会議議員連盟」議員の圧力により、前川喜平・前文部科学省事務次官を「総合学習の時間」講師として呼んだ名古屋市立八王寺中学校での授業の確認や録音データ提出を求めた「前川氏授業調査」に対し、名古屋市教委は、国による個別授業・教育への干渉であるとして、文科省に抗議する姿勢を見せたが、文科省による「授業報告」と言う名の憲法違反の教育統制を撥ね付けることはできなかった。
今回の事件は森友事件同様、「日本会議」・「日本青年会議所(JC)」系の政治家が官僚に圧力をかけ、教育に介入した事件である。
文科省へ働きかけたのは二人の自民党議員で、赤池誠章参院議員(56歳)は、細田派=安部派で自民党文部科学部会会長、日本会議国会議員懇談会所属。2017年夏の道徳教科書採択では、自分のプログで8社の教科書をランキングし、小学校道徳教科書で最も右翼的な「教育出版」道徳教科書を第1位にあげていた。
池田佳隆衆議院議員(自民党細田派、日本会議国会議員懇談会、51歳)は、比例:東海「愛知3区」選出衆院議員。「日本青年会議所」(∫C)会頭、名古屋青年会議所元理事長。2013年2月発行の『教育再生』では、日本教育再生機構の理事の一人として、八木秀次氏らとともに、特別対談で「教科書正常化」などを主張していた議員である。
前川氏は、5月5日の名古屋市での講演で「私の授業が対象になったのは、一部の勢力から目の敵にされているから。文科省が品のない質問状を送りつけることになったのは残念だし情けない」と述べた。
今回の「前川氏授業調査」は明確な政治介入・文科省強制調査であり、安倍政権が進める改憲・教育統制・教科書統制、「特別な教科・道徳」授業・評価、「日の丸・君が代」強制、不服従教員への「思想転向研修」、メディア統制、「聴衆の動員」調査・反応調査であり、戦前の「治安維持法」の思想調査に近いものであり、安倍政権の「教育の自由」統制、「思想・言論・表現の自由」統制と軌を一にするものであり、憲法・教育基本違反の教育への露骨な介入であり、国による個別授業への干渉・教育への介入である。として行われた危険なものである。
(3)「朝鮮高校無償化排除訴訟」名古屋地裁7.27判決での「不当な支配」論の問題性
2017年4月27日の「朝鮮高校無償化排除訴訟」名古屋地裁判決は、広島・東京の不当判決以上の悪質な判決だった。
朝鮮学校が朝鮮総聯の「不当な支配」を受けている疑いがあるとした広島・東京地裁判決からさらに踏み込み、「不当な支配」の疑いを認定した。
その根拠には、国側が大阪裁判敗訴を受けて新たに証拠として追加した「朝鮮高級学校教科書の記述」なども含まれている。
「民族教育の価値」は認めても、その「民族教育」は「不当な支配」を受けているとし、朝鮮学校には朝鮮総聯の「不当な支配」があるとする。
「不当な支配」云々が後付けに過ぎないことは裁判経過からも明白な事実である。「不当な支配」論は、国側が規定削除の違法性を十分に認識したからこそ持ち出した虚構の根拠である。
被告・国は、17年7月に大阪無償化裁判で敗訴すると、愛知での口頭弁論で朝鮮学校の教科書を多数翻訳し、『朝鮮学校の教科内容には北朝鮮への賛美的な内容が含まれている』とし、裁判所はこれに対して、「不当な支配があるかないか判断する際には、教育内容も資料にしてもいい」、「むしろ教育内容を見ることで外部団体からの支配があるかどうかがよくわかる」との判断をした。
これは戦後日本の教育法制を揺るがす内容である。
今後、これまで以上に、教育現場への誤った「不当支配」論による教育支配・教育内容統制が跋扈することに特段の注意を喚起する。
以上、名古屋市で起こった3つの「教育統制事件」は、何を象徴しているのだろうか。そして今、子どもたちは、誰によって、どこに連れて行かれようとしているのだろうか。
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