■ 自責の念で異例の表明 訂正申請執筆者
沖縄戦をめぐる教科書検定問題で、訂正申請する記述の検討内容について二十七日、執筆者の高校教諭、坂本昇さん(51)が明かした。結果の公表までは途中経過が明かされることのない教科書検定では、極めて異例のことだ。
坂本さんが今回明らかにすることを決めたのは、検定意見が付いた際に、異議を申し立てなかったことについての自責の念からという。(1面参照)
■ 教科書検定 沖縄反発「申し訳ない」
文部科学省の検定規則では、申請者は検定審査の終了まで、申請内容や文科省からの通知文書について公開しないことを求めている。外部からの働きかけなどを排除し、中立公正を保った形で「静謐(せいひつ)な環境」を確保して、検定を進めるためとされている。
今回、訂正申請前のぎりぎりの段階での検討状況を明らかにしたのは「検定は密室で行われ、風通しのいい状態ではない。若干の一石を投じることが執筆者の責任」と考えたからという。

坂本さんは十五年ほど前に「自分が沖縄戦のよい資料を持っている」と手を挙げて、執筆を担当した。
昨年末、文部科学省で教科書調査官から検定意見について説明を受ける場に、坂本さんも同席した。軍の強制性について二、三のやりとりをしただけという。
「検定意見がおかしいなどと言えばへ調査官は『議論する場ではない』と話を終わらせてしまう」
制度上、教科書発行者が意見申立書を出すこともできるが「文科省が刑事事件の検事と裁判官の両方を務めているようなもので、あきらめの気持ちが先に立った」という。
検定内容が公表された後、沖縄から激しい反発の声が上がったことに「大変申し訳ないことをした」と感じたという。
訂正申請で、今回の検定問題についても書き込む方向で検討しているのは「検定に対し折れてしまった執筆者としての責任から」と話している。
■ 削除問題言及を評価
沖縄県民 要求は検定意見撤回
教科書執筆者が「集団自決」をめぐる記述の訂正申請内容を公表した二十七日、沖縄では「記述復活を訴えてきてよかった」と歓迎の声が上がる一方、「沖縄が真に求めるのは文部科学省の検定意見の撤回。これを残したままでは、いつまた同じ問題が起こるか分からない」と慎重論も出た。
九月に検定意見撤回を求める沖縄県民大会の実行委員長を務めた仲里利信県議会議長(70)は「『軍の強制』の記述復活は当然だが、今回の記述削除問題や県民大会にまで触れる内容は一歩前進だ」と評価。
しかし「これが文科省の審議会をすんなり通るかは疑問。沖縄が検定意見の撤回を求めていくことに変わりはない」と語気を強めた。
同実行委の副委員長、玉寄哲永さん(73)は「県民が訴えてきたことが執筆者の支えとなり、勇気を出してもらった。しかし検定意見を撤回せずに、訂正申請に応じようという文科省の姿勢は主客転倒だ」と語った。
『東京新聞』(2007年10月28日 朝刊【社会】)
■ 沖縄集団自決 週内にも訂正申請執筆者が明かす 削除問題も教科書記述
沖縄戦の集団自決への日本軍関与をめぐる教科書検定問題で、検定意見の付いた教科書の出版社五社のうち一社は、「日本軍によって『集団自決』を強いられた」など日本軍の強制性を復活させ、削除の経緯などについても記述することで十一月二日ごろまでに訂正申請する方向で調整していることが、分かった。五社はいずれも訂正申請する方向だが、具体的な検討内容が明らかになったのは初めて。
■ 削除問題も教科書記述
執筆者の高校教諭、坂本昇さん(51)が二十七日記者会見で明らかにした。「日本軍によって強いられた」を「日本軍によって追い込まれた」などの表現にする可能性もあるという。
さらに、今年の教科書検定で、日本軍の強制に関する記述が消えたことや、九月に検定意見の撤回を求める沖縄県の県民大会が開かれたことについても教科書に書き込む方向で調整が進められているという。
■ 「軍の強制」復活
坂本さんが執筆した当初の記述では「日本軍がスパイ容疑で虐殺した一般住民や、集団で『自決』を強いられたものもあった」としていた。これに「誤解するおそれがある」との検定意見が付き、「そのなかには、『集団自決』においこまれたり、日本軍がスパイ容疑で虐殺した一般住民もいた」と修正し、合格していた。
教科書では、渡嘉敷島民の集団自決の手記の一部を資料として引用しているが、訂正申請では「軍から命令が出たとの知らせがあり、いよいよ手榴(しゅりゅう)弾による自決が始まりました」などの部分も追加することを検討している。
五社は既に文部科学省に手続きの相談に訪れている。来月初めから、遅くても上旬までには訂正申請するとみられる。同省では、これを受け教科書検定審議会の日本史小委員会を開いて意見を聞き、訂正申請の承認について最終的には社会科や地歴科を担当する第二部会が判断する。渡海紀三朗文科相は遅くとも年内に結論を出すことや、審議会として沖縄の専門家の意見を聞く可能性があることを明らかにしている。
<メモ>
沖縄教科書検定問題 今年3月に公表された文部科学省の教科書検定で、2008年度から使用される5社の高校日本史の教科書7点で、沖縄戦の集団自決について、日本軍の強制があったとの記述に、「誤解するおそれ」との意見が付いた。各出版社は日本軍の強制に触れない形に修正し、合格した。これに対し、検定意見に抗議する大規模な沖縄県の県民大会が9月に開かれるなどしたことを受け、政府が対応を転換。文科省は出版社からの訂正申請を教科書検定審議会に諮った上で、記述の見直しに応じる姿勢を示している。
『東京新聞』(2007年10月28日 朝刊1面トップ)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007102802059903.html
沖縄戦をめぐる教科書検定問題で、訂正申請する記述の検討内容について二十七日、執筆者の高校教諭、坂本昇さん(51)が明かした。結果の公表までは途中経過が明かされることのない教科書検定では、極めて異例のことだ。
坂本さんが今回明らかにすることを決めたのは、検定意見が付いた際に、異議を申し立てなかったことについての自責の念からという。(1面参照)
■ 教科書検定 沖縄反発「申し訳ない」
文部科学省の検定規則では、申請者は検定審査の終了まで、申請内容や文科省からの通知文書について公開しないことを求めている。外部からの働きかけなどを排除し、中立公正を保った形で「静謐(せいひつ)な環境」を確保して、検定を進めるためとされている。
今回、訂正申請前のぎりぎりの段階での検討状況を明らかにしたのは「検定は密室で行われ、風通しのいい状態ではない。若干の一石を投じることが執筆者の責任」と考えたからという。

坂本さんは十五年ほど前に「自分が沖縄戦のよい資料を持っている」と手を挙げて、執筆を担当した。
昨年末、文部科学省で教科書調査官から検定意見について説明を受ける場に、坂本さんも同席した。軍の強制性について二、三のやりとりをしただけという。
「検定意見がおかしいなどと言えばへ調査官は『議論する場ではない』と話を終わらせてしまう」
制度上、教科書発行者が意見申立書を出すこともできるが「文科省が刑事事件の検事と裁判官の両方を務めているようなもので、あきらめの気持ちが先に立った」という。
検定内容が公表された後、沖縄から激しい反発の声が上がったことに「大変申し訳ないことをした」と感じたという。
訂正申請で、今回の検定問題についても書き込む方向で検討しているのは「検定に対し折れてしまった執筆者としての責任から」と話している。
■ 削除問題言及を評価
沖縄県民 要求は検定意見撤回
教科書執筆者が「集団自決」をめぐる記述の訂正申請内容を公表した二十七日、沖縄では「記述復活を訴えてきてよかった」と歓迎の声が上がる一方、「沖縄が真に求めるのは文部科学省の検定意見の撤回。これを残したままでは、いつまた同じ問題が起こるか分からない」と慎重論も出た。
九月に検定意見撤回を求める沖縄県民大会の実行委員長を務めた仲里利信県議会議長(70)は「『軍の強制』の記述復活は当然だが、今回の記述削除問題や県民大会にまで触れる内容は一歩前進だ」と評価。
しかし「これが文科省の審議会をすんなり通るかは疑問。沖縄が検定意見の撤回を求めていくことに変わりはない」と語気を強めた。
同実行委の副委員長、玉寄哲永さん(73)は「県民が訴えてきたことが執筆者の支えとなり、勇気を出してもらった。しかし検定意見を撤回せずに、訂正申請に応じようという文科省の姿勢は主客転倒だ」と語った。
『東京新聞』(2007年10月28日 朝刊【社会】)
■ 沖縄集団自決 週内にも訂正申請執筆者が明かす 削除問題も教科書記述
沖縄戦の集団自決への日本軍関与をめぐる教科書検定問題で、検定意見の付いた教科書の出版社五社のうち一社は、「日本軍によって『集団自決』を強いられた」など日本軍の強制性を復活させ、削除の経緯などについても記述することで十一月二日ごろまでに訂正申請する方向で調整していることが、分かった。五社はいずれも訂正申請する方向だが、具体的な検討内容が明らかになったのは初めて。
■ 削除問題も教科書記述
執筆者の高校教諭、坂本昇さん(51)が二十七日記者会見で明らかにした。「日本軍によって強いられた」を「日本軍によって追い込まれた」などの表現にする可能性もあるという。
さらに、今年の教科書検定で、日本軍の強制に関する記述が消えたことや、九月に検定意見の撤回を求める沖縄県の県民大会が開かれたことについても教科書に書き込む方向で調整が進められているという。
■ 「軍の強制」復活
坂本さんが執筆した当初の記述では「日本軍がスパイ容疑で虐殺した一般住民や、集団で『自決』を強いられたものもあった」としていた。これに「誤解するおそれがある」との検定意見が付き、「そのなかには、『集団自決』においこまれたり、日本軍がスパイ容疑で虐殺した一般住民もいた」と修正し、合格していた。
教科書では、渡嘉敷島民の集団自決の手記の一部を資料として引用しているが、訂正申請では「軍から命令が出たとの知らせがあり、いよいよ手榴(しゅりゅう)弾による自決が始まりました」などの部分も追加することを検討している。
五社は既に文部科学省に手続きの相談に訪れている。来月初めから、遅くても上旬までには訂正申請するとみられる。同省では、これを受け教科書検定審議会の日本史小委員会を開いて意見を聞き、訂正申請の承認について最終的には社会科や地歴科を担当する第二部会が判断する。渡海紀三朗文科相は遅くとも年内に結論を出すことや、審議会として沖縄の専門家の意見を聞く可能性があることを明らかにしている。
<メモ>
沖縄教科書検定問題 今年3月に公表された文部科学省の教科書検定で、2008年度から使用される5社の高校日本史の教科書7点で、沖縄戦の集団自決について、日本軍の強制があったとの記述に、「誤解するおそれ」との意見が付いた。各出版社は日本軍の強制に触れない形に修正し、合格した。これに対し、検定意見に抗議する大規模な沖縄県の県民大会が9月に開かれるなどしたことを受け、政府が対応を転換。文科省は出版社からの訂正申請を教科書検定審議会に諮った上で、記述の見直しに応じる姿勢を示している。
『東京新聞』(2007年10月28日 朝刊1面トップ)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007102802059903.html
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