=原発事故6年半の被災地=
◆ 「除染」できない放射性物質 (週刊新社会)
人類史上最悪ともいえる東京電力(株)福島第一原発の1~4号機の爆発から6年を経た被災地・福島では、国を挙げての除染作業を進める中で、復興の名のもとに着々と帰還政策が押し進められている。しかし、被災地の放射線測定を続ける私たちのデータからは、そうした除染効果を一向に読み取ることはできない。国が被災者に帰還を促す地域の測定結果からは、いずれの地域も放射線管理区域の指定基準を下回ることはなく、けっして人が生活できる環境にないことを示している。
◆ 被災者の武器となる被曝データの集積
私たちは、2011年3月の福島第一原発の爆発によって広く拡散された放射性物質による汚染状況を、その土地の住民の方々の生活実態に即した形で測定し、記録することを目的として活動を続けている。
継続的に計測し記録したデータを、汚染された地域に住まわされている住民や帰還を強制されようとしている人々に活用して頂ければと考え、特定避難勧奨地点のあった南相馬市鹿島区と原町区の山側8行政区をベースに、12年10月から毎月1週間にわたって測定を開始した。
国や自治体が行う測定よりもキメの細かいメッシュ法測定の手法で、空間線量率(地上高1m/50㎝/1㎝)と表面汚染計数率(地表1㎝高)、さらに土壌採取して放射性セシウム量の分析を実施。すでに同地区同ポイントの測定の2巡目を終了し、今年より3巡目の測定をスタート。
国の20mSv避難解除基準の引き上げに対して訴訟を起こした、南相馬の原告団側の証拠としても採用されている。(左の図)
http://www.f1-monitoring-project.jp/dirtsfiles/20170722-2015-2017ohara-ss.jpg
◆ 双葉郡浪江町のほとんどは放射性管理区域の基準以上
今年4月から7月にかけては、より福島第一原発に近い避難解除されたばかりの双葉郡浪江町を測定した。
全村の4分の1弱にあたる地域を横375m×縦250mのメッシュで区切り、そのほぼ中心ポイントを測定した結果が上段の図だが、315ポイント中の土壌汚染密度の平均はなんと85万8143Bq/㎡(最大で678万Bq/㎡、最小で3万1400Bq/㎡)で、空間線量率(地上高1m)の平均は1・12μSv/h、表面汚染計数率(地上高1㎝)の平均は1199cpmという結果となった。
http://www.f1-monitoring-project.jp/dirtsfiles/20170628namie-38+39+40.jpg
国が放射線管理区城に指定する基準は「0.6μSv/hまたは4万Bq/㎡の汚染の恐れ」だが、この基準をここに当てはめてみると、315ポイント中3ポイントを除いた全てがこの基準を上回るという衝撃的な事実が判明したのだ。
放射線管理区域では、放射線業務従事者は10時間以上の滞在は許されず、飲食の禁止や18歳未満の立入りも禁止されている。しかし、帰還を強要される被災者に対しては、それ以上の環境下に置かれながらも、成人はもとより乳幼児や妊婦に対してまで「生活せよ!」と命じているのである。
◆ 第42回(8月)からは富岡町の測定をスタート
なお、富岡町の測定は第42回(8月)で116メッシュを終えているが、まだ目標の半分にも達していない。
先に行った浪江町に比べると、高線量の地域は今のところわずかしかないが、決して低い値ではない。
何より驚くべきは、116メッシュのほぼ中心ポイントで任意に採取した土壌の全てが、放射線管理区域に指定される土壌の基準を上回っていたことである。
あと2~3回程度の計測で富岡町の避難指示解除エリアの測定を終えそうだが、それをまとめた後には何らかの方法でこの厳しい現状を多くの人びとに知らせて、国が何の罪もない被災者に強いている非人間的な帰還政策を見直させていきたいと考えている。
さらに、年末までには従来から続けている「20ミリ基準撤回!」訴訟に関わる南相馬市山側8行政区の3巡目を、完了させる予定である。
力不足・資金不足・拠点不足で、浪江町や富岡町と同じくこの春、避難指示が解除された飯舘村などの他地域のモニタリングに着手できないのが悔しいが、やれるだけやっていきたいと思っている。皆さまのご支援をお願いしたい。
なお、空間線量率や土壌汚染分析の結果を可視化した鮮明なカラー画像をwebサイトで公開しているので、是非ご覧頂きたい。
http://www.f1-monitoring-project.jp/dirts.html
『週刊新社会』(2017/9/19)
◆ 「除染」できない放射性物質 (週刊新社会)
岡本達思(ふくいち周辺環境放射線モニタリングプロジェクト)
人類史上最悪ともいえる東京電力(株)福島第一原発の1~4号機の爆発から6年を経た被災地・福島では、国を挙げての除染作業を進める中で、復興の名のもとに着々と帰還政策が押し進められている。しかし、被災地の放射線測定を続ける私たちのデータからは、そうした除染効果を一向に読み取ることはできない。国が被災者に帰還を促す地域の測定結果からは、いずれの地域も放射線管理区域の指定基準を下回ることはなく、けっして人が生活できる環境にないことを示している。
◆ 被災者の武器となる被曝データの集積
私たちは、2011年3月の福島第一原発の爆発によって広く拡散された放射性物質による汚染状況を、その土地の住民の方々の生活実態に即した形で測定し、記録することを目的として活動を続けている。
継続的に計測し記録したデータを、汚染された地域に住まわされている住民や帰還を強制されようとしている人々に活用して頂ければと考え、特定避難勧奨地点のあった南相馬市鹿島区と原町区の山側8行政区をベースに、12年10月から毎月1週間にわたって測定を開始した。
国や自治体が行う測定よりもキメの細かいメッシュ法測定の手法で、空間線量率(地上高1m/50㎝/1㎝)と表面汚染計数率(地表1㎝高)、さらに土壌採取して放射性セシウム量の分析を実施。すでに同地区同ポイントの測定の2巡目を終了し、今年より3巡目の測定をスタート。
国の20mSv避難解除基準の引き上げに対して訴訟を起こした、南相馬の原告団側の証拠としても採用されている。(左の図)
http://www.f1-monitoring-project.jp/dirtsfiles/20170722-2015-2017ohara-ss.jpg
◆ 双葉郡浪江町のほとんどは放射性管理区域の基準以上
今年4月から7月にかけては、より福島第一原発に近い避難解除されたばかりの双葉郡浪江町を測定した。
全村の4分の1弱にあたる地域を横375m×縦250mのメッシュで区切り、そのほぼ中心ポイントを測定した結果が上段の図だが、315ポイント中の土壌汚染密度の平均はなんと85万8143Bq/㎡(最大で678万Bq/㎡、最小で3万1400Bq/㎡)で、空間線量率(地上高1m)の平均は1・12μSv/h、表面汚染計数率(地上高1㎝)の平均は1199cpmという結果となった。
http://www.f1-monitoring-project.jp/dirtsfiles/20170628namie-38+39+40.jpg
国が放射線管理区城に指定する基準は「0.6μSv/hまたは4万Bq/㎡の汚染の恐れ」だが、この基準をここに当てはめてみると、315ポイント中3ポイントを除いた全てがこの基準を上回るという衝撃的な事実が判明したのだ。
放射線管理区域では、放射線業務従事者は10時間以上の滞在は許されず、飲食の禁止や18歳未満の立入りも禁止されている。しかし、帰還を強要される被災者に対しては、それ以上の環境下に置かれながらも、成人はもとより乳幼児や妊婦に対してまで「生活せよ!」と命じているのである。
◆ 第42回(8月)からは富岡町の測定をスタート
なお、富岡町の測定は第42回(8月)で116メッシュを終えているが、まだ目標の半分にも達していない。
先に行った浪江町に比べると、高線量の地域は今のところわずかしかないが、決して低い値ではない。
何より驚くべきは、116メッシュのほぼ中心ポイントで任意に採取した土壌の全てが、放射線管理区域に指定される土壌の基準を上回っていたことである。
あと2~3回程度の計測で富岡町の避難指示解除エリアの測定を終えそうだが、それをまとめた後には何らかの方法でこの厳しい現状を多くの人びとに知らせて、国が何の罪もない被災者に強いている非人間的な帰還政策を見直させていきたいと考えている。
さらに、年末までには従来から続けている「20ミリ基準撤回!」訴訟に関わる南相馬市山側8行政区の3巡目を、完了させる予定である。
力不足・資金不足・拠点不足で、浪江町や富岡町と同じくこの春、避難指示が解除された飯舘村などの他地域のモニタリングに着手できないのが悔しいが、やれるだけやっていきたいと思っている。皆さまのご支援をお願いしたい。
なお、空間線量率や土壌汚染分析の結果を可視化した鮮明なカラー画像をwebサイトで公開しているので、是非ご覧頂きたい。
http://www.f1-monitoring-project.jp/dirts.html
『週刊新社会』(2017/9/19)
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