『週刊新社会』から
◆ 非正規の差別許さず組合結成
結実した不屈の闘志
非正規雇用労働者に一筋の光明が差した。会長が経団連会長を務めた大企業、天下のキヤノンを相手に労働組合として闘い、一部とはいえ非正規の正社員化を勝ち取った(本紙1月15日号既報)。弁護団として共に闘った萩尾健太弁護士にこの勝利の意味を明らかにしてもらった。
◆ キヤノンと和解成立
昨年12月20日、東京都労働委員会において、キヤノン非正規労働者組合とキヤノン株式会社との間で和解が成立した。
この和解においてキヤノン組合、組合員5名、キヤノン株式会社は以下の内容(別項)を開示することについて合意した。さらに、雇用を実現できなかった3名についても、解雇撤回に匹敵する解決金が支払われることとなった。
◆ キヤノン解雇争議とは
2000年からキヤノン宇都宮光学機器事業所で働いていた非正規労働者は、新聞報道で自らの働き方が偽装請負と知って2006年に労働組合を結成し、偽装請負を栃木労働局長に告発した。衆議院予算委員会でも組合員によるキヤノンの偽装請負についての実態を公述した。
組合員らは、こうした運動の力でキヤノンに直接雇用されたものの正社員への希望は認められず有期契約とされ、異議を留めて就労していた。この間、キヤノンは雇用政策を大きく転換し、派遣・請負から期間社員への切り替えを数千人規模で進め、更に期間社員から正社員を数多く登用してきた。
しかし、組合の求めた従来の勤続を踏まえた正社員としての採用はなく、組合差別がされるもとで、組合は2008年12月に都労委に不当労働行為救済命令申立てをした。
さらに、2009年6月に組合員5名が東京地裁の正社員の地位確認訴訟を起こすと、9月に報復的に「雇い止め」=解雇された。その撤回と正社員化を求めて組合員らは闘ってきた。
東京地裁では栃木労働局の調査の文書提出命令を勝ち取り、都労委では組合員らや会社担当者らの1年にわたる尋問によって不当労働行為を立証した。
労働組合の上部団体の枠を越えてキヤノンに対し総行動が取り組まれ、全国で抗議行動も行われた。韓国非正規労働者の闘いとの国際連帯も築かれた。
◆ 支えられた和解交渉
2012年4月から都労委の勧告を受けてキヤノン偽装請負争議の和解交渉が始まった。キヤノンは雇用は認めるものの低い解決金で責任を逃れようとしていた。
組合はキヤノンが非正規労働者を長年偽装請負で働かせ、違法を正そうと組合を結成した組合員に対して不当労働行為を行い解雇したことの責任を踏まえた公正な解決を実現するよう求めてきた。
和解交渉の大詰めではーカ月の間に800団体の団体署名、51名の学者・法律家・文化人の共同アピールが出された。
そうした経緯を経て、裁判所の提案を上回る案を都労委に出させ、請負先に責任を認めさせて2名の正社員雇用を勝ち取り、会社の意見表明を得て勝利和解した。
◆ 組合活動が勝利のカギ
2009年8月末の解雇以来、3年4カ月は解雇者5名と家族にとって筆舌に尽くしがたい苦労の連続であり、1名は重い病のため和解の場には出席することができなかった。
しかし、小さな組合であっても、組合差別・不当労働行為に負けず活動し、解雇後も団結し励まし合い裁判、労働委員会、社前行動、株主総会と不屈に闘い続けた。この組合活動があったからこそ勝利に結びついた。
この和解により組合員数名がキヤノングループ内で勤務することになるため、今後も組合の闘いは続く。今後予想されるキヤノングループ内でのリストラや、すでに寄せられている社員の方々からの相談の受け皿として、組合は労働者の権利を守る活動を強化していく。
非正規労働者でも組合をつくり不屈に闘えば大企業の横暴をはね返すことができる。今回の勝利解決が、違法行為の告発者や非正規を含む多くの労働者を勇気づけ、さらに高い水準の勝利、全ての争議の勝利につながってゆくことを切に願う。
『週刊新社会』(2013/1/22)
◆ 非正規の差別許さず組合結成
結実した不屈の闘志
弁護士 萩尾健太
非正規雇用労働者に一筋の光明が差した。会長が経団連会長を務めた大企業、天下のキヤノンを相手に労働組合として闘い、一部とはいえ非正規の正社員化を勝ち取った(本紙1月15日号既報)。弁護団として共に闘った萩尾健太弁護士にこの勝利の意味を明らかにしてもらった。
◆ キヤノンと和解成立
昨年12月20日、東京都労働委員会において、キヤノン非正規労働者組合とキヤノン株式会社との間で和解が成立した。
この和解においてキヤノン組合、組合員5名、キヤノン株式会社は以下の内容(別項)を開示することについて合意した。さらに、雇用を実現できなかった3名についても、解雇撤回に匹敵する解決金が支払われることとなった。
◆ キヤノン解雇争議とは
2000年からキヤノン宇都宮光学機器事業所で働いていた非正規労働者は、新聞報道で自らの働き方が偽装請負と知って2006年に労働組合を結成し、偽装請負を栃木労働局長に告発した。衆議院予算委員会でも組合員によるキヤノンの偽装請負についての実態を公述した。
組合員らは、こうした運動の力でキヤノンに直接雇用されたものの正社員への希望は認められず有期契約とされ、異議を留めて就労していた。この間、キヤノンは雇用政策を大きく転換し、派遣・請負から期間社員への切り替えを数千人規模で進め、更に期間社員から正社員を数多く登用してきた。
しかし、組合の求めた従来の勤続を踏まえた正社員としての採用はなく、組合差別がされるもとで、組合は2008年12月に都労委に不当労働行為救済命令申立てをした。
さらに、2009年6月に組合員5名が東京地裁の正社員の地位確認訴訟を起こすと、9月に報復的に「雇い止め」=解雇された。その撤回と正社員化を求めて組合員らは闘ってきた。
東京地裁では栃木労働局の調査の文書提出命令を勝ち取り、都労委では組合員らや会社担当者らの1年にわたる尋問によって不当労働行為を立証した。
労働組合の上部団体の枠を越えてキヤノンに対し総行動が取り組まれ、全国で抗議行動も行われた。韓国非正規労働者の闘いとの国際連帯も築かれた。
◆ 支えられた和解交渉
2012年4月から都労委の勧告を受けてキヤノン偽装請負争議の和解交渉が始まった。キヤノンは雇用は認めるものの低い解決金で責任を逃れようとしていた。
組合はキヤノンが非正規労働者を長年偽装請負で働かせ、違法を正そうと組合を結成した組合員に対して不当労働行為を行い解雇したことの責任を踏まえた公正な解決を実現するよう求めてきた。
和解交渉の大詰めではーカ月の間に800団体の団体署名、51名の学者・法律家・文化人の共同アピールが出された。
そうした経緯を経て、裁判所の提案を上回る案を都労委に出させ、請負先に責任を認めさせて2名の正社員雇用を勝ち取り、会社の意見表明を得て勝利和解した。
◆ 組合活動が勝利のカギ
2009年8月末の解雇以来、3年4カ月は解雇者5名と家族にとって筆舌に尽くしがたい苦労の連続であり、1名は重い病のため和解の場には出席することができなかった。
しかし、小さな組合であっても、組合差別・不当労働行為に負けず活動し、解雇後も団結し励まし合い裁判、労働委員会、社前行動、株主総会と不屈に闘い続けた。この組合活動があったからこそ勝利に結びついた。
この和解により組合員数名がキヤノングループ内で勤務することになるため、今後も組合の闘いは続く。今後予想されるキヤノングループ内でのリストラや、すでに寄せられている社員の方々からの相談の受け皿として、組合は労働者の権利を守る活動を強化していく。
非正規労働者でも組合をつくり不屈に闘えば大企業の横暴をはね返すことができる。今回の勝利解決が、違法行為の告発者や非正規を含む多くの労働者を勇気づけ、さらに高い水準の勝利、全ての争議の勝利につながってゆくことを切に願う。
・キヤノン株式会社はキヤノンの関連会社においてキヤノン非正規労働者組合の組合員2名を正社員として雇用する。
・また、キヤノン宇都宮光学機器事業所宇都宮光機第一工場光学製造部製造第二課第2ブロック(当時)における構内請負について、平成19年9月21日付で栃木労働局長より、労働者派遣法違反が存する旨の是正指導を受けたことを真摯に受けとめ、今後は同様の指導等を受けることのないよう、再発防止に向けた不断の取組を継続する。
・本件紛争が長期化したことについて、労使双方は、遺憾の意を表する。
『週刊新社会』(2013/1/22)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます