日野＆国立市教委宛請願・陳情、傍聴を

　★ 「小６社会教科書の国家主義加筆にノー」の日野＆国立市教委宛請願・陳情、傍聴を

永野厚男（教育ライター）

　保護者・市民ら「子どもたちが主権者の社会科教育を求める会」が日野市教育委員会と国立市教委に出した、後掲の「小学校６年生の社会科教科書採択に関する陳情」が、日野市は２０１０年７月２６日（月）、国立市は２０１０年７月２７日（火）の市教育委員会定例会で、いずれも午後２時から審議されます（冒頭、代表者の保護者が意見陳述します）。
　傍聴ご希望の方は、日野市教委は１時４５分までに日野市役所（ＪＲ中央線・日野駅１３分）５階の市教委庶務課で、国立市教委は１時５５分くらいまでに国立市役所（ＪＲ南武線・谷保駅７分）３階の市教委庶務課で、傍聴手続きの受付をして下さい。

☆　陳情の趣旨

　１　小学校６年生の社会科教科書採択においては、
　＜１＞アジアの人々や日本の権力者でなかった市民の大勢の犠牲の上に、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」て、誤った天皇主権（元首）をやめさせ、勝ち取った国民主権（日本国憲法前文）、
　＜２＞誤った天皇元首制をやめさせ、勝ち取った「法の下の平等」（憲法第１４条の「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」）、
　＜３＞国家権力の暴走を止める立憲主義の上で憲法第９条と共に重要な、憲法第１９条・２１条の「思想・良心・表現の自由」
　――の３点を最重視し、採択を行って下さい。
２　小学校６年生の社会科教科書採択においては、
　万一、上記３点を最重視した採択が行えなかった場合、教科書以外のＮＩＥや多様な書籍等を活用し、"天皇"や"君が代"といった、子どもたちにも大人にも多様な見方・考え方のある問題ついては、多様な見方・考え方を教えることが大切だ、ということを、市民も傍聴できる校長会で周知して下さい。
　但し、その周知に当たっては、文科省や都教育委員会（多摩教育事務所を含む）、特定の政党等の、権力者らに"ご機嫌伺い"をすることなく、在日外国人の児童・生徒・保護者や、多様な思想・信条・信教を持つ児童・生徒・保護者の人権に最大の配慮をする内容にさせて下さい。

☆　陳情の理由《一部、抜粋》

　私たちは教科書展示会に行き、小学校６年生の社会科教科書を実際に調査し、憲法第１９条や第１４条（法の下の平等）に則っていない記述を多く見付け、後掲の「記事」にまとめました。
　文科省の偏向検定により、子どもたちが将来、巨大な国家権力の言いなりにならず、主権者として考え、判断し行動する力を身に付けられないのでないかと、不安に思っています。
　☆　記事：小６社会教科書、目立つ天皇イデオロギー加筆
　多くの区市町村教育委員会で８月上旬から教科書の採択が始まる中、小学６年社会科で、国家主義色が顕著になっている。
　「国を愛する態度」を盛った改定教育基本法の先取りをしてきた文科省は、既に現行学習指導要領（９８年告示）以前から、「天皇の国事に関する行為など児童に理解しやすい具体的な事項を取り上げ、《中略》天皇についての理解と敬愛の念を深めるようにすること」と明記。新指導要領（０８年告示）も同文を載せてしまっている。
　ただ文科省は、現行指導要領の『解説』では、国事行為の内容を記述するに留めていたが、新指導要領の『解説』では「国事行為など」の「など」に着目し、「国会開会式への出席、全国植樹祭・国民体育大会への出席、被災地への訪問・励ましなど」を加筆。
　これを受け、日本文教出版（Ａ４判）・教育出版は明仁天皇の写真と共に、新指導要領の『解説』を丸写しし「公的な仕事も行います」などと記述。また、日本文教出版（Ｂ５判）は「福祉施設を訪問される天皇と皇后」という、尊敬語を用いたキャプションを付けた写真を掲載、テレビなどによく出て来るシーンを使い、"天皇への敬愛の念"を教え込もうとしている。
　文科省が異常な力を入れる"君が代"では、音楽の指導要領の「（いずれの学年も）歌えるよう」の加筆（他の歌で、こんな文言を入れているのはない！　完全に政治的意図あり）の影響もあり、「君が代は平和であることを願う歌」（教育出版）と記述したり、「国歌に誇りを表す」（東京書籍、日本文教出版Ａ４判は「国旗」の記述で）と、教科書出版の全社が特定の価値観を押し付けている。
　なお、日本文教出版（Ａ４判）３１頁は「海外に派遣された自衛隊」のキャプションを付けた"給水活動"をしている写真を掲載し、「２００３年、イラクの復興支援を目的として、自衛隊が派遣されました」と記述している。しかし２００９年、最高裁で確定した名古屋高裁の判決は「武装米兵を輸送し続けた自衛隊の軍事行動は憲法違反」と明言している（米英軍兵は多くのイラク市民を虐殺・虐待している）。
　この日本文教出版（Ａ４判）は、この自衛隊の写真のすぐ下に「日本国憲法の考え方は、日本だけでなく、世界の平和に役だてられると思う」という児童の"吹き出し"を載せており、児童にウソを教え込もうとしている（少なくとも最高裁判例に違反している）、と言わざるを得ない。