▼ 杉並「つくる会」教科書裁判で2度目の強制退去
主権者である国民がここまでないがしろにされる「高等」裁判所
東京都杉並区が05年に「つくる会」歴史教科書採択に関わって違法に支出した公金の返還を求める控訴審第2回口頭弁論で、東京高裁第5民事部小林克己裁判長(陪席:綿貫万里子・中村慎裁判官)は自らの「後で聞きます」という言葉を覆し、控訴人に口頭で陳述させずに強引に結審しました。
納得できない控訴人、傍聴人は法廷内にとどまり、「後で」というのはいつなのか裁判長に聞いてほしいと書記官に頼んでいましたが、裁判所側は「法廷は終わったので外に出て下さい」と言うのみで、人間としての誠意は全く見られず、約1時間後に強制退去させられました。筆者は控訴人の1人です。
▼ 第1回口頭弁論で裁判長は被控訴人を誘導
控訴審第1回口頭弁論では、控訴理由書に対し、被控訴人が「反論します」と言っているのに、小林裁判長は「反論するんですか? 従前通り(審理の必要なし)でよろしいのでは」と被控訴人を制し、「反論しません」と言わせました。
被控訴人が「反論する」と言っているのに、裁判長が自ら「する必要なし」と誘導するということは、「あなたたちを勝たせますよ」と言っているに等しいものです。この不公平かつ横暴な訴訟指揮に対して、控訴人は裁判官忌避の申し立てを行いましたが、地裁で棄却、高裁、最高裁でも棄却され、12月22日午後、第2回口頭弁論が開かれました。
私たちは「開かれた法廷」を標榜する裁判所に、傍聴人にわかりやすくするためと、裁判官に切実な思いを肉声で聞いてほしいとの趣旨で、口頭で陳述する時間を取ってくれるよう、事前に交渉しています。この日は全体で20分取ってくれているはずでした。(交渉しないと、口頭弁論と称してはいても「陳述しますか」「はい」だけで、書面の確認と次回期日を決めるのみで、数分で終わってしまいます。傍聴人はせっかく来たのに何が何だか何もわかりません)。
▼ 「後で聞きます」と控訴人をだましていきなり結審
裁判が始まると小林裁判長は控訴人に「準備書面(4)(5)(6)を陳述しますね」と言い、私が「口頭で述べる時間を取ってくださっていますよね」と言うと、「今、やってください」と言いました。そこでまずYさんが準備書面(4)を陳述しようと立ち上がったところ、小林裁判長は「選定当事者(私)から先にやって下さい。選定者(Yさん)は後で聞きます」と言いました。私は「え?なぜ? 変だな」とちらっと思ったものの、言いなりになってしまい、準備書面(5)(6)の要旨を陳述しました。
さあ、次はYさんの番だと思ったところ、小林裁判長は「書証104~106号証を出していますね。むにゃむにゃ」と言いました。「むにゃむにゃ」の部分がむずかしい法廷用語だったため、私は「どういう意味ですか?」と聞き返しました。すると、裁判長は「これは写しですが、被控訴人は認めますか?」とかなんとか聞きました、被控訴人は「認めます」と答えました。その意味をもう一度聞く間もなく(証拠が偽造ではないことを認めたという意味だそうです)、裁判長は続けて「ではこれで口頭弁論を終結し・・・」と言い出しました。
Yさんが「ちょっと待って下さい。まだ陳述していません」と叫びました。私も「さっき、『後で聞きます』って言ったでしょ!」と叫びました。傍聴席からも「まだ陳述していません」等と声があがりました。裁判長は「判決言い渡しは・・・」と続けたようですが、私は裁判官が逃げる前に言わなくちゃと「まだ何も審理していません。日本には裁判所なんかないと同じ。税金泥棒!」と叫びました。その声を背に受け、裁判官はそのままドアの後ろに消えました。裁判が始まってから10分でした。
▼ 嘘をつくことも訴訟指揮のうち
控訴人の私とYさんは書記官に、裁判長は「後で聞きます」と言ったのだから、裁判はまだ終わっていない、裁判官をもう一度呼んできてほしい、時間も十分に余っていると訴えました。
傍聴席からも「おかしい」との声があがりました。裁判官は仕事で給料をもらってやっているけれど、控訴人らは大変な時間をかけ、お金も持ち出しで、子どもの命を守るために必死でやっているのだと誰かが言ってくれました。
裁判官の給料は税金であり、それを払っているのは主権者である私たちです。*主権者に嘘をつくような卑劣な裁判官は裁判官の資格がありません。Yさんは「このままでは戦争になってしまう。子どもに申し訳ない。こんな国で子どもを産まなければよかった。裁判所には責任がある」と泣きながら訴えていました。
書記官は心のないロボットのように「法廷は終わりましたので外に出て下さい」と繰り返すばかり。やがて訟廷管理室の西尾さんという人が来て、出ていかないと強制退去になると警告しました。
私たちが裁判官は「後で聞く」と言ったのに聞かなかったので裁判は終わっていないと話しても、「法廷は終わりました。裁判官の訴訟指揮です」と言うばかり。
「嘘をつくのも訴訟指揮のうちですか?」と質問すると、「訴訟指揮がすべてです」という答えが返ってきました。こうやって国民の裁判を受ける権利を奪い、憲法に違反するのも訴訟指揮のうちですね!
約1時間の押し問答の末、私たちは強制退去させられました。裁判官も書記官も訟廷管理室の西尾さんも、人間の言葉が全く通じないということを痛感させられました。前回強制退去させられた時は、若い書記官が人間として少しは話を聞いてくれたのですが、今回はそういう人も1人もいませんでした。
▼ 私たちはあきらめない
この不毛な時間に、被爆者やハンセン病者や水俣病患者や三里塚の農民たちや・・・戦後補償裁判の原告の人々や・・・その他数えきれない「国」が踏みにじってきた人たちが心に浮かんできました。
「国」を相手に闘ってきた人たちがどんなに悔しい思いをしてきたのか、その無念さがどんなものだったのか。「国」は庶民のことなど虫けら同然にしか思っていない。そのことがよくよくわかりました。私も「国」に対して物申す当事者になって、「国」というものはこういうものだと実感しました。
「後で聞きます」と言ったのだから、そのまま陳述させても5分か10分延長しただけのことです。それなのにあえてこのように国民を怒らせることをするのはなぜなのでしょうか? 裁判官の権威、ひいては「国」の権威をひけらかし、何をしても無駄なんだと、物申す国民を屈伏させようとしているとしか思えません。
裁判官が嘘をついたのは何も今回が初めてではありません。原審でも東京地裁大門匡裁判長が証人喚問について「別の機会に検討します」などと言っておいて、その舌の根も乾かぬうちに結審しました。私たちが最も許せないのは、弁護士のついている裁判では、裁判長はこんな訴訟指揮はしないということです。弁護士のいる裁判と比べれば、それはあからさまなものです。コスタリカでは小学生が「憲法違反です」と電話すれば裁判してくれ、小学生が勝った判例もあるというのに、権威をひけらかす日本の裁判官は基本的人権すら認めないのです。
私たちは裁判官が嘘をついたので誠実に対応してほしいと、ごくごくまっとうなことを言っているにすぎません。それなのに2回も強制退去させられました。本当にこの国には国民の意見を聞こうなどという姿勢は皆無なのです。ましてや憲法で保障されている裁判を受ける権利がすべての国民に保障されるのはいつのことなのか。私たちが生きている間に実現できるとは思いません。しかし屈伏してしまえば可能性もなくなってしまいます。長い長い道のりですが、子どもたちのためにあきらめずにやっていこうと思います。
『JANJAN』 2008/12/27
http://www.news.janjan.jp/living/0812/0812254194/1.php
(次ページに口頭弁論内容)
http://www.news.janjan.jp/living/0812/0812254194/2.php
『暗川』
http://lumokurago.exblog.jp/i25/
主権者である国民がここまでないがしろにされる「高等」裁判所
渡辺容子
東京都杉並区が05年に「つくる会」歴史教科書採択に関わって違法に支出した公金の返還を求める控訴審第2回口頭弁論で、東京高裁第5民事部小林克己裁判長(陪席:綿貫万里子・中村慎裁判官)は自らの「後で聞きます」という言葉を覆し、控訴人に口頭で陳述させずに強引に結審しました。
納得できない控訴人、傍聴人は法廷内にとどまり、「後で」というのはいつなのか裁判長に聞いてほしいと書記官に頼んでいましたが、裁判所側は「法廷は終わったので外に出て下さい」と言うのみで、人間としての誠意は全く見られず、約1時間後に強制退去させられました。筆者は控訴人の1人です。
▼ 第1回口頭弁論で裁判長は被控訴人を誘導
控訴審第1回口頭弁論では、控訴理由書に対し、被控訴人が「反論します」と言っているのに、小林裁判長は「反論するんですか? 従前通り(審理の必要なし)でよろしいのでは」と被控訴人を制し、「反論しません」と言わせました。
被控訴人が「反論する」と言っているのに、裁判長が自ら「する必要なし」と誘導するということは、「あなたたちを勝たせますよ」と言っているに等しいものです。この不公平かつ横暴な訴訟指揮に対して、控訴人は裁判官忌避の申し立てを行いましたが、地裁で棄却、高裁、最高裁でも棄却され、12月22日午後、第2回口頭弁論が開かれました。
私たちは「開かれた法廷」を標榜する裁判所に、傍聴人にわかりやすくするためと、裁判官に切実な思いを肉声で聞いてほしいとの趣旨で、口頭で陳述する時間を取ってくれるよう、事前に交渉しています。この日は全体で20分取ってくれているはずでした。(交渉しないと、口頭弁論と称してはいても「陳述しますか」「はい」だけで、書面の確認と次回期日を決めるのみで、数分で終わってしまいます。傍聴人はせっかく来たのに何が何だか何もわかりません)。
▼ 「後で聞きます」と控訴人をだましていきなり結審
裁判が始まると小林裁判長は控訴人に「準備書面(4)(5)(6)を陳述しますね」と言い、私が「口頭で述べる時間を取ってくださっていますよね」と言うと、「今、やってください」と言いました。そこでまずYさんが準備書面(4)を陳述しようと立ち上がったところ、小林裁判長は「選定当事者(私)から先にやって下さい。選定者(Yさん)は後で聞きます」と言いました。私は「え?なぜ? 変だな」とちらっと思ったものの、言いなりになってしまい、準備書面(5)(6)の要旨を陳述しました。
さあ、次はYさんの番だと思ったところ、小林裁判長は「書証104~106号証を出していますね。むにゃむにゃ」と言いました。「むにゃむにゃ」の部分がむずかしい法廷用語だったため、私は「どういう意味ですか?」と聞き返しました。すると、裁判長は「これは写しですが、被控訴人は認めますか?」とかなんとか聞きました、被控訴人は「認めます」と答えました。その意味をもう一度聞く間もなく(証拠が偽造ではないことを認めたという意味だそうです)、裁判長は続けて「ではこれで口頭弁論を終結し・・・」と言い出しました。
Yさんが「ちょっと待って下さい。まだ陳述していません」と叫びました。私も「さっき、『後で聞きます』って言ったでしょ!」と叫びました。傍聴席からも「まだ陳述していません」等と声があがりました。裁判長は「判決言い渡しは・・・」と続けたようですが、私は裁判官が逃げる前に言わなくちゃと「まだ何も審理していません。日本には裁判所なんかないと同じ。税金泥棒!」と叫びました。その声を背に受け、裁判官はそのままドアの後ろに消えました。裁判が始まってから10分でした。
▼ 嘘をつくことも訴訟指揮のうち
控訴人の私とYさんは書記官に、裁判長は「後で聞きます」と言ったのだから、裁判はまだ終わっていない、裁判官をもう一度呼んできてほしい、時間も十分に余っていると訴えました。
傍聴席からも「おかしい」との声があがりました。裁判官は仕事で給料をもらってやっているけれど、控訴人らは大変な時間をかけ、お金も持ち出しで、子どもの命を守るために必死でやっているのだと誰かが言ってくれました。
裁判官の給料は税金であり、それを払っているのは主権者である私たちです。*主権者に嘘をつくような卑劣な裁判官は裁判官の資格がありません。Yさんは「このままでは戦争になってしまう。子どもに申し訳ない。こんな国で子どもを産まなければよかった。裁判所には責任がある」と泣きながら訴えていました。
書記官は心のないロボットのように「法廷は終わりましたので外に出て下さい」と繰り返すばかり。やがて訟廷管理室の西尾さんという人が来て、出ていかないと強制退去になると警告しました。
私たちが裁判官は「後で聞く」と言ったのに聞かなかったので裁判は終わっていないと話しても、「法廷は終わりました。裁判官の訴訟指揮です」と言うばかり。
「嘘をつくのも訴訟指揮のうちですか?」と質問すると、「訴訟指揮がすべてです」という答えが返ってきました。こうやって国民の裁判を受ける権利を奪い、憲法に違反するのも訴訟指揮のうちですね!
約1時間の押し問答の末、私たちは強制退去させられました。裁判官も書記官も訟廷管理室の西尾さんも、人間の言葉が全く通じないということを痛感させられました。前回強制退去させられた時は、若い書記官が人間として少しは話を聞いてくれたのですが、今回はそういう人も1人もいませんでした。
▼ 私たちはあきらめない
この不毛な時間に、被爆者やハンセン病者や水俣病患者や三里塚の農民たちや・・・戦後補償裁判の原告の人々や・・・その他数えきれない「国」が踏みにじってきた人たちが心に浮かんできました。
「国」を相手に闘ってきた人たちがどんなに悔しい思いをしてきたのか、その無念さがどんなものだったのか。「国」は庶民のことなど虫けら同然にしか思っていない。そのことがよくよくわかりました。私も「国」に対して物申す当事者になって、「国」というものはこういうものだと実感しました。
「後で聞きます」と言ったのだから、そのまま陳述させても5分か10分延長しただけのことです。それなのにあえてこのように国民を怒らせることをするのはなぜなのでしょうか? 裁判官の権威、ひいては「国」の権威をひけらかし、何をしても無駄なんだと、物申す国民を屈伏させようとしているとしか思えません。
裁判官が嘘をついたのは何も今回が初めてではありません。原審でも東京地裁大門匡裁判長が証人喚問について「別の機会に検討します」などと言っておいて、その舌の根も乾かぬうちに結審しました。私たちが最も許せないのは、弁護士のついている裁判では、裁判長はこんな訴訟指揮はしないということです。弁護士のいる裁判と比べれば、それはあからさまなものです。コスタリカでは小学生が「憲法違反です」と電話すれば裁判してくれ、小学生が勝った判例もあるというのに、権威をひけらかす日本の裁判官は基本的人権すら認めないのです。
私たちは裁判官が嘘をついたので誠実に対応してほしいと、ごくごくまっとうなことを言っているにすぎません。それなのに2回も強制退去させられました。本当にこの国には国民の意見を聞こうなどという姿勢は皆無なのです。ましてや憲法で保障されている裁判を受ける権利がすべての国民に保障されるのはいつのことなのか。私たちが生きている間に実現できるとは思いません。しかし屈伏してしまえば可能性もなくなってしまいます。長い長い道のりですが、子どもたちのためにあきらめずにやっていこうと思います。
『JANJAN』 2008/12/27
http://www.news.janjan.jp/living/0812/0812254194/1.php
(次ページに口頭弁論内容)
http://www.news.janjan.jp/living/0812/0812254194/2.php
『暗川』
http://lumokurago.exblog.jp/i25/
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