◆ 2020経労委報告批判 (週刊新社会)
◆ 言葉巧みに生産性向上を狙う
経団連は1月21日、経営側の春闘方針になる「2020年版経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)を発表した。
経団連が大学側に強く求めて決定をさせた通年採用を前面に出してきた。それは搾取の強化を進めるために、新卒一括採用や終身雇用を「古い日本型の雇用システム」と決めつけたものだ。
経団連が推し進める「ジョブ型採用」のもとで、経済のグローバル化・デジタル化に対応できる新しい人事・賃金制度への移行を求め、いろいろ理屈を並べ、労働者を使い勝手の良い将棋の駒として経営の調整弁にしようとする狙いだ。
賃金引き上げについて、経営側が好んで使うようになった「モメンタム(勢い)」は維持されていると述べ、賃金の引き上げ数値は明らかにしない。ベアも「選択肢になり得る」とだけ示すにとどめる。
20年の経労委報告が重視するテーマは「働き方改革」の名を使った労働者の合理化である。言葉巧みに生産性向上に引き込もうとする。
「テレワークを活用」「柔軟な働き方」「仕事と育児・介護などを両立させる支援」「社員の職務や能力に対応した制度の構築」などを列挙し、労働者のエンゲージメント(働きがい)を高める環境整備の重要性を訴える。
そして、労働組合(連合)の方針批判へと進む。
「連合が求める2%ベアは、月例賃金引き上げに偏重している」と切り捨てる。
経営側の作り出した「経営環境のデジタル化やグローバル化、雇用形態」の問題を労働者に転嫁する。
「多様化」「急速な変化」を理由に、「賃上げは各社一律ではなく、自社の実情に応じて前向きに検討していくことが基本」などコストダウンを正当化する。
そこには、第2次安倍政権になって8年で、500万人も非正規雇用労働者を増やし2200万人にまで達している。その平均年収は174万円で、ワーキングプア(働いても生活できない年収200万円以下)状態である。
G7で2000年以降、実質賃金のマイナスが続いているのは日本だけ。
それなのに、経団運はあたかも賃金向上を続けているとうそぶくが、低賃金にあえぐ労働者の生活実態に目は向けられていない。
◆ 最賃引き上げ阻止を強調
報告書は一貫して、「産別の横並びと統一賃金交渉」を否定する。
労働組合は「賃上げよりも、職場環境の整備、能力開発など総合的な処遇改善を重視すべきだ」と「賃上げ!賃上げ!と騒ぐな」と労働者の目をそらし、搾取強化で生活改善を踏みつけ、独善的方針を貫いている。
報告書の随所に、「賃金だけではなく、総合的な処遇改善や会社の方向性」「社員が何を求め、何に達成感を感じるかなどをしっかり話し合うことが大事だ」などの記述が見られる。
つまるところ「賃金の引き上げをしたくないから、春闘だからと言って毎年の賃金引き上げは止めたい」と賃金引き上げをぼかす資本の本音が露呈する。
だから、毎年のように繰り返すのが「日本型の雇用システムを前提にしたこれまでの春闘を一変させたい」と春闘の終焉こそ主張する。
その証として、今後の労使関係の項で「春闘を主導してきた業種(産別)横並びによる集団的賃金交渉は、実態に合わなくなってきている。企業労使には、『共感と信頼』により、良好で安定的な労使関係を多層的に深化させていくことが求められる」など資本の論理を押しつける。
これらの論理を労働組合が理解するならば、成果主義の名の下で、企業による労働者の選別が横行する。
単なる仕事ができる、できないでなく、企業の思いに反する意見を主張すれば、「成果主義」の下では選別の手段に使われる。
企業がいくらコンプライアンスを唱え、報告書で予防を作り上げても、「ハラスメント」はなくならない。
これらの問題点を避けて、報告の隅々に「賃上げは、成果重視」「年功序列・終身雇用の否定」「賃上げの横並びの脱却」などをちりばめる。
とんでもない搾取の強化を並べ続けるのが経労委報告書だ。
経団連は、近年特に地域最低賃金の引き上げに神経を使っている。
19年10月の地域最賃改正で、全国平均で901円になり、東京都と神奈川県で初めて1000円を超えた。
その経過の中で、報告書は、地域別最低賃金の引き上げを「事業の継続不能」になると非難する。
さらに、特定(産別)最低賃金の廃止を迫る。
時給で働く労働者は「今すぐ1000円、早く1500円」を声にしているが、毎年ささやかな平均26円程度の引き上げを経団連は「急激な引き上げ」と決めつける。
地域別最低賃金の引き上げにブレーキをかける。
20年春闘は経団連が1月28日に開かれた「労使フォーラム」に連合が招かれ事実上スタートした。
これから3月11日の集中回答日に向かい、各産別や単組の労使が交渉を進めていく。
労働者が要求を獲得するには、経団連の望まない「統一要求、集団交渉、不満なときはストライキ、平等に行き渡る配分」の実践こそが、労使対等の春闘になる。
『週刊新社会』(2020年2月4日、11日)
◆ 言葉巧みに生産性向上を狙う
経団連は1月21日、経営側の春闘方針になる「2020年版経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)を発表した。
経団連が大学側に強く求めて決定をさせた通年採用を前面に出してきた。それは搾取の強化を進めるために、新卒一括採用や終身雇用を「古い日本型の雇用システム」と決めつけたものだ。
経団連が推し進める「ジョブ型採用」のもとで、経済のグローバル化・デジタル化に対応できる新しい人事・賃金制度への移行を求め、いろいろ理屈を並べ、労働者を使い勝手の良い将棋の駒として経営の調整弁にしようとする狙いだ。
賃金引き上げについて、経営側が好んで使うようになった「モメンタム(勢い)」は維持されていると述べ、賃金の引き上げ数値は明らかにしない。ベアも「選択肢になり得る」とだけ示すにとどめる。
20年の経労委報告が重視するテーマは「働き方改革」の名を使った労働者の合理化である。言葉巧みに生産性向上に引き込もうとする。
「テレワークを活用」「柔軟な働き方」「仕事と育児・介護などを両立させる支援」「社員の職務や能力に対応した制度の構築」などを列挙し、労働者のエンゲージメント(働きがい)を高める環境整備の重要性を訴える。
そして、労働組合(連合)の方針批判へと進む。
「連合が求める2%ベアは、月例賃金引き上げに偏重している」と切り捨てる。
経営側の作り出した「経営環境のデジタル化やグローバル化、雇用形態」の問題を労働者に転嫁する。
「多様化」「急速な変化」を理由に、「賃上げは各社一律ではなく、自社の実情に応じて前向きに検討していくことが基本」などコストダウンを正当化する。
そこには、第2次安倍政権になって8年で、500万人も非正規雇用労働者を増やし2200万人にまで達している。その平均年収は174万円で、ワーキングプア(働いても生活できない年収200万円以下)状態である。
G7で2000年以降、実質賃金のマイナスが続いているのは日本だけ。
それなのに、経団運はあたかも賃金向上を続けているとうそぶくが、低賃金にあえぐ労働者の生活実態に目は向けられていない。
◆ 最賃引き上げ阻止を強調
報告書は一貫して、「産別の横並びと統一賃金交渉」を否定する。
労働組合は「賃上げよりも、職場環境の整備、能力開発など総合的な処遇改善を重視すべきだ」と「賃上げ!賃上げ!と騒ぐな」と労働者の目をそらし、搾取強化で生活改善を踏みつけ、独善的方針を貫いている。
報告書の随所に、「賃金だけではなく、総合的な処遇改善や会社の方向性」「社員が何を求め、何に達成感を感じるかなどをしっかり話し合うことが大事だ」などの記述が見られる。
つまるところ「賃金の引き上げをしたくないから、春闘だからと言って毎年の賃金引き上げは止めたい」と賃金引き上げをぼかす資本の本音が露呈する。
だから、毎年のように繰り返すのが「日本型の雇用システムを前提にしたこれまでの春闘を一変させたい」と春闘の終焉こそ主張する。
その証として、今後の労使関係の項で「春闘を主導してきた業種(産別)横並びによる集団的賃金交渉は、実態に合わなくなってきている。企業労使には、『共感と信頼』により、良好で安定的な労使関係を多層的に深化させていくことが求められる」など資本の論理を押しつける。
これらの論理を労働組合が理解するならば、成果主義の名の下で、企業による労働者の選別が横行する。
単なる仕事ができる、できないでなく、企業の思いに反する意見を主張すれば、「成果主義」の下では選別の手段に使われる。
企業がいくらコンプライアンスを唱え、報告書で予防を作り上げても、「ハラスメント」はなくならない。
これらの問題点を避けて、報告の隅々に「賃上げは、成果重視」「年功序列・終身雇用の否定」「賃上げの横並びの脱却」などをちりばめる。
とんでもない搾取の強化を並べ続けるのが経労委報告書だ。
経団連は、近年特に地域最低賃金の引き上げに神経を使っている。
19年10月の地域最賃改正で、全国平均で901円になり、東京都と神奈川県で初めて1000円を超えた。
その経過の中で、報告書は、地域別最低賃金の引き上げを「事業の継続不能」になると非難する。
さらに、特定(産別)最低賃金の廃止を迫る。
時給で働く労働者は「今すぐ1000円、早く1500円」を声にしているが、毎年ささやかな平均26円程度の引き上げを経団連は「急激な引き上げ」と決めつける。
地域別最低賃金の引き上げにブレーキをかける。
20年春闘は経団連が1月28日に開かれた「労使フォーラム」に連合が招かれ事実上スタートした。
これから3月11日の集中回答日に向かい、各産別や単組の労使が交渉を進めていく。
労働者が要求を獲得するには、経団連の望まない「統一要求、集団交渉、不満なときはストライキ、平等に行き渡る配分」の実践こそが、労使対等の春闘になる。
『週刊新社会』(2020年2月4日、11日)
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