【都政の潮流】
● 都議会は大所高所からの判断を
~東京維新の迷走ぶり
一般職の公務員は日本国憲法を順守することを採用の時に宣誓させられる。しかし、特別職公務員の石原知事は憲法破棄を都議会本会議でも明らかにしているので、現憲法自体を認めない立場にあるように推察される。
これに対して、リーガルマインドに長けた弁護士でもある橋下徹大阪市長の立場は違っている。現憲法の有効性を認めた上での改憲論者だ。
石原知事の尊敬する中曽根元首相は、自らの内閣で、質問主意書への答弁において、日本国憲法制定に関する日本政府の見解について「日本国憲法は、大日本帝国憲法の改正手続によって有効に成立したものであって、その間の経緯については、法理的に何ら問題ないもの」(1985年9月)と答えている。
そういった事実を知ってか知らずか、東京維新の会は先の第3回定例会で取り上げられた請願24第8号「日本国憲法」(占領憲法)と「皇室典範」(占領典範)に関する請願について、賛成の立場をとり、日本維新の会を率いる橋下市長に「大日本帝国憲法の復活なんてありえない」と一刀両断にされ、維新本体との連携を停止、保留されたと聞く。
そもそも、この請願は、京都府京都市在住の方、外5千34人から提出されたもので、紹介議員は、平成維新の会の土屋敬之議員と東京維新の会の野田数議員の2人である。
その内容は、占領憲法(日本国憲法)が憲法としては無効であることを確認し、大日本帝国憲法が現存するとする決議がなされることなどを求めているものである。
さすがに都議会自民党も不採択とし、総務委員会における共産党の吉田信夫議員の不採択とする意見さえも傾聴に値した。
紹介議員のうち土屋議員はその言動が常に一貫しており、見事と言うしかないが、野田議員は「憲法破棄が持論の石原知事との関係に配慮して賛成したが、軽率だった。引き続き日本維新の傘下に入ることを目指し、今後はすべての指示に従う」(読売新聞10月12日付朝刊)。何とすぐに撤回するかのようなよく分からない態度を取っているばかりか、石原知事のせいにまでしている。
紹介議員になっているのに、変節はおろか責任転嫁までするのは、自らを「真性保守」とし、他の都議会議員を「偽装保守」と雑誌(月刊『WILL』9月号)で切って捨てたのに大丈夫であろうか。
加えて、野田代表以上に心配なのが、今回の請願に賛成した栗下善行議員など民主党から離党してきた2人の議員である。彼らの思考回路はどうなっているのだろう。
維新の会が賛成した請願には、「我々臣民としては、国民主権という傲慢(ごうまん)な思想を直ちに放棄して、速やかに占領典範と占領憲法の無効確認を行って」云々とある。国民を「臣民」と称し、国民主権を否定してしまっていいのか。えっ?民主主義を否定していいのですか、と問いたくなる。
青少年条例では散々、表現の自由を守ると言ってみたり、新銀行東京の撤退、八ッ場ダムの必要性の再検証をマニフェストに掲げ、揚げ句の果てには豊洲新市場整備の予算に党の決定に造反してまで反対したのに、いつの間にかすんなりと石原与党に変身してしまう。
この姿勢は栗下氏のモットーとする「わかりやすく、身近な政治」とはかけ離れており、むしろ都民からは分かりにくいものとなっている。
もっとも、栗下氏はオリンピックの調査に、自らのスタッフが偽りの身分を名乗って得た情報をもとに、議会の質疑を行ったという過去を持つことからも、いろいろなことに平気なのかもしれない。
最近もまたテレビに出て、都議会議員の費用弁償や公有車問題に、元都議のパン屋さんと同じ論陣を張っていい顔をしたつもりでいる。支離滅裂とはこのことである。公有車大好きの野田代表の了解は取ったのであろうかと余計なことまで心配になってしまう。
誤解を恐れずに言えぱ、一部マスコミの「庶民感覚とずれている」という論調にくみしていいのか。安倍自民党総裁の3500円のカレーの話もあったが、そういう比較の世界ではないだろう。
首都東京の都政を預かる都議会は、都議会のノブレス・オブリージュを堅持し、大所高所からの判断を行うようにしなくてはならない。
そもそも庁有車も、行政委員会の事務局長車を廃止して良かったのか。庁有車は災害対策の緊急のため整理したと聞く。しかし、局長の高い責任に見合う処遇であるとしなかったことが、今日の人材不足の原因でもある。
また、当時の財務局長が元都議の訴訟への対応の難儀から、執行機関側の庁有車制度を廃止し、その分を議会に押し付けた側面も否定できないのではないか。“コストカッター何兄弟”など全くナンセンスな存在であった。都政を悪くしただけである。
石原知事は10月5日の記者会見で、「(議会の費用弁償は)初めて聞いた話。こっちは経費削減してきた。自分の給料も削ってやってきている。職員の数だって減らしている。実態を把握した上で議会と話す」と答えていた。
次週の12日の会見でも注目していたが、話題にならなかった。せめて知事には賢明な判断を期待したい。(マクロ)
『都政新報』(2012/10/19)
● 都議会は大所高所からの判断を
~東京維新の迷走ぶり
一般職の公務員は日本国憲法を順守することを採用の時に宣誓させられる。しかし、特別職公務員の石原知事は憲法破棄を都議会本会議でも明らかにしているので、現憲法自体を認めない立場にあるように推察される。
これに対して、リーガルマインドに長けた弁護士でもある橋下徹大阪市長の立場は違っている。現憲法の有効性を認めた上での改憲論者だ。
石原知事の尊敬する中曽根元首相は、自らの内閣で、質問主意書への答弁において、日本国憲法制定に関する日本政府の見解について「日本国憲法は、大日本帝国憲法の改正手続によって有効に成立したものであって、その間の経緯については、法理的に何ら問題ないもの」(1985年9月)と答えている。
そういった事実を知ってか知らずか、東京維新の会は先の第3回定例会で取り上げられた請願24第8号「日本国憲法」(占領憲法)と「皇室典範」(占領典範)に関する請願について、賛成の立場をとり、日本維新の会を率いる橋下市長に「大日本帝国憲法の復活なんてありえない」と一刀両断にされ、維新本体との連携を停止、保留されたと聞く。
そもそも、この請願は、京都府京都市在住の方、外5千34人から提出されたもので、紹介議員は、平成維新の会の土屋敬之議員と東京維新の会の野田数議員の2人である。
その内容は、占領憲法(日本国憲法)が憲法としては無効であることを確認し、大日本帝国憲法が現存するとする決議がなされることなどを求めているものである。
さすがに都議会自民党も不採択とし、総務委員会における共産党の吉田信夫議員の不採択とする意見さえも傾聴に値した。
紹介議員のうち土屋議員はその言動が常に一貫しており、見事と言うしかないが、野田議員は「憲法破棄が持論の石原知事との関係に配慮して賛成したが、軽率だった。引き続き日本維新の傘下に入ることを目指し、今後はすべての指示に従う」(読売新聞10月12日付朝刊)。何とすぐに撤回するかのようなよく分からない態度を取っているばかりか、石原知事のせいにまでしている。
紹介議員になっているのに、変節はおろか責任転嫁までするのは、自らを「真性保守」とし、他の都議会議員を「偽装保守」と雑誌(月刊『WILL』9月号)で切って捨てたのに大丈夫であろうか。
加えて、野田代表以上に心配なのが、今回の請願に賛成した栗下善行議員など民主党から離党してきた2人の議員である。彼らの思考回路はどうなっているのだろう。
維新の会が賛成した請願には、「我々臣民としては、国民主権という傲慢(ごうまん)な思想を直ちに放棄して、速やかに占領典範と占領憲法の無効確認を行って」云々とある。国民を「臣民」と称し、国民主権を否定してしまっていいのか。えっ?民主主義を否定していいのですか、と問いたくなる。
青少年条例では散々、表現の自由を守ると言ってみたり、新銀行東京の撤退、八ッ場ダムの必要性の再検証をマニフェストに掲げ、揚げ句の果てには豊洲新市場整備の予算に党の決定に造反してまで反対したのに、いつの間にかすんなりと石原与党に変身してしまう。
この姿勢は栗下氏のモットーとする「わかりやすく、身近な政治」とはかけ離れており、むしろ都民からは分かりにくいものとなっている。
もっとも、栗下氏はオリンピックの調査に、自らのスタッフが偽りの身分を名乗って得た情報をもとに、議会の質疑を行ったという過去を持つことからも、いろいろなことに平気なのかもしれない。
最近もまたテレビに出て、都議会議員の費用弁償や公有車問題に、元都議のパン屋さんと同じ論陣を張っていい顔をしたつもりでいる。支離滅裂とはこのことである。公有車大好きの野田代表の了解は取ったのであろうかと余計なことまで心配になってしまう。
誤解を恐れずに言えぱ、一部マスコミの「庶民感覚とずれている」という論調にくみしていいのか。安倍自民党総裁の3500円のカレーの話もあったが、そういう比較の世界ではないだろう。
首都東京の都政を預かる都議会は、都議会のノブレス・オブリージュを堅持し、大所高所からの判断を行うようにしなくてはならない。
そもそも庁有車も、行政委員会の事務局長車を廃止して良かったのか。庁有車は災害対策の緊急のため整理したと聞く。しかし、局長の高い責任に見合う処遇であるとしなかったことが、今日の人材不足の原因でもある。
また、当時の財務局長が元都議の訴訟への対応の難儀から、執行機関側の庁有車制度を廃止し、その分を議会に押し付けた側面も否定できないのではないか。“コストカッター何兄弟”など全くナンセンスな存在であった。都政を悪くしただけである。
石原知事は10月5日の記者会見で、「(議会の費用弁償は)初めて聞いた話。こっちは経費削減してきた。自分の給料も削ってやってきている。職員の数だって減らしている。実態を把握した上で議会と話す」と答えていた。
次週の12日の会見でも注目していたが、話題にならなかった。せめて知事には賢明な判断を期待したい。(マクロ)
『都政新報』(2012/10/19)
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