《斎藤貴男の「二極化・格差社会の真相」 (日刊ゲンダイ)》
◆ 44年間獄中…冤罪を訴える星野さんの仮釈放はかなうのか
「星野さんが真っすぐな目で見ていたものが、日本政府は怖かったのだろう。彼を取り戻すことは沖縄が変わる道でもある。取り戻しましょう!」
沖縄県南城市の宮城康博市議(59)が力を込めた。先月25日、香川県高松市内で開かれた「星野文昭さんの解放を求める全国集会」での発言である。
星野さん(72)というのは1971年、沖縄の米軍基地を固定化する返還協定の批准に反対する渋谷闘争のリーダーで、その際に機動隊員1人(当時21)を殺害したとして無期懲役刑を受けた人物だ。
一貫して無実を主張し、再審請求も重ねているが、まるで顧みられないまま、44年間もの獄中生活を強いられてきた。
現在は徳島刑務所に服役中。
ようやく開始された四国地方更生保護委員会(法務省の地方支分部局)による仮釈放審理が大詰めを迎えつつあるタイミングで支援グループが主催した集会には約650人が集まり、市内のパレードも展開された。
亡くなった機動隊員は、デモ隊のガソリンを浴び、火炎瓶を投げつけられて焼死している。犯人が厳罰に処されなければならないのは当然だが、星野さんは実行はおろか、指示もしていないと言う。現場とは10メートルほど離れた場所にいたのだ、と。
〈私の良心と、人間としての全存在にかけて、一点の曇りもなく言い切ることができる〉(東京高裁に提出された陳述書)
実際、目撃証言の数々はあまりに曖昧だし、検察側の証拠も十分に開示されていない。本来なら求刑の以前に、公判の維持さえ難しい事件だったのではないか。極めて濃い冤罪の可能性が黙殺され続けているのは、星野さんが“政治犯”だからに他ならない。
すでに検察庁は20年も前から、無期懲役刑が確定した事件のうち、「動機や結果が死刑事件に準ずるくらい悪質」と見なしたものを「〇特無期事件」として事実上、終身刑化する手続きを設けてしまっている。
政府と一体になったマスコミが五輪だ万博だとバカ騒ぎを繰り広げる一方で、沖縄などの反戦運動家が次々に逮捕され、長期勾留されるケースが目立つ昨今、星野さんの今後は、権力に盲従したくない、自由な魂をたたえた人間にとっては決して他人事ではあり得ないのである。
仮釈放はかなうのか、否か。
「どうしようもないヤツらの中で、私たちは確かに風穴をあけた。だが甘い幻想を持つことはできない。悲観に陥ることも禁物だ」
集会の冒頭で、再審弁護団の鈴木達夫弁護士が述べていた。
※ 斎藤貴男ジャーナリスト
1958年生まれ。早大卒。イギリス・バーミンガム大学で修士号(国際学MA)取得。日本工業新聞、プレジデント、週刊文春の記者などを経てフリーに。「戦争経済大国」(河出書房新社)、「日本が壊れていく」(ちくま新書)、「『明治礼賛』の正体」(岩波ブックレット)など著書多数。
『日刊ゲンダイ』(2018/12/05)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/242988
◆ 44年間獄中…冤罪を訴える星野さんの仮釈放はかなうのか
「星野さんが真っすぐな目で見ていたものが、日本政府は怖かったのだろう。彼を取り戻すことは沖縄が変わる道でもある。取り戻しましょう!」
沖縄県南城市の宮城康博市議(59)が力を込めた。先月25日、香川県高松市内で開かれた「星野文昭さんの解放を求める全国集会」での発言である。
星野さん(72)というのは1971年、沖縄の米軍基地を固定化する返還協定の批准に反対する渋谷闘争のリーダーで、その際に機動隊員1人(当時21)を殺害したとして無期懲役刑を受けた人物だ。
一貫して無実を主張し、再審請求も重ねているが、まるで顧みられないまま、44年間もの獄中生活を強いられてきた。
現在は徳島刑務所に服役中。
ようやく開始された四国地方更生保護委員会(法務省の地方支分部局)による仮釈放審理が大詰めを迎えつつあるタイミングで支援グループが主催した集会には約650人が集まり、市内のパレードも展開された。
亡くなった機動隊員は、デモ隊のガソリンを浴び、火炎瓶を投げつけられて焼死している。犯人が厳罰に処されなければならないのは当然だが、星野さんは実行はおろか、指示もしていないと言う。現場とは10メートルほど離れた場所にいたのだ、と。
〈私の良心と、人間としての全存在にかけて、一点の曇りもなく言い切ることができる〉(東京高裁に提出された陳述書)
実際、目撃証言の数々はあまりに曖昧だし、検察側の証拠も十分に開示されていない。本来なら求刑の以前に、公判の維持さえ難しい事件だったのではないか。極めて濃い冤罪の可能性が黙殺され続けているのは、星野さんが“政治犯”だからに他ならない。
すでに検察庁は20年も前から、無期懲役刑が確定した事件のうち、「動機や結果が死刑事件に準ずるくらい悪質」と見なしたものを「〇特無期事件」として事実上、終身刑化する手続きを設けてしまっている。
政府と一体になったマスコミが五輪だ万博だとバカ騒ぎを繰り広げる一方で、沖縄などの反戦運動家が次々に逮捕され、長期勾留されるケースが目立つ昨今、星野さんの今後は、権力に盲従したくない、自由な魂をたたえた人間にとっては決して他人事ではあり得ないのである。
仮釈放はかなうのか、否か。
「どうしようもないヤツらの中で、私たちは確かに風穴をあけた。だが甘い幻想を持つことはできない。悲観に陥ることも禁物だ」
集会の冒頭で、再審弁護団の鈴木達夫弁護士が述べていた。
※ 斎藤貴男ジャーナリスト
1958年生まれ。早大卒。イギリス・バーミンガム大学で修士号(国際学MA)取得。日本工業新聞、プレジデント、週刊文春の記者などを経てフリーに。「戦争経済大国」(河出書房新社)、「日本が壊れていく」(ちくま新書)、「『明治礼賛』の正体」(岩波ブックレット)など著書多数。
『日刊ゲンダイ』(2018/12/05)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/242988
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