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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

海外メディアが伝える、福島原発難民を犠牲にして挙行される東京オリンピックの非情

2019年03月31日 | フクシマ原発震災
  <人々の命を脅かす原子力の嘘>
 ◆ オリンピック・イベントの犠牲にされる人々
(『星の金貨 new』)
   アーニー・ガンダーセン / フェアウィンズ 2019年3月8日

 フェアウィンズの記事『アトミック・バーム第1部』に賛辞をいただいた皆さんに感謝の意を表し、2020年のオリンピックがなぜ東京で開催されることになったのか、その本当の理由についての分析を読んで理解しようとされているフェアウィンズの友人たちに感謝の意を表します。
 第2部を始めるにあたり、2012年に立ち戻りマルコ・カルトフェン博士と私が行った科学的研究についてまずお話します。
 福島第一原発の原子炉のメルトダウンによって作り出された大災害は現在も進行していますが、この事故発生以前、商業用原子力原子炉から漏出する放射線に対し、一般市民の許容被曝線量は年間100ミリレム(1ミリシーベルト)でした。
 原子力発電所作業員は放射線被曝リスクの高い環境での作業によって受ける身体的ダメージの増加について補償を受けていますが、彼らには年間最大5,000ミリレム(50ミリシーベルト、あるいは5レム - どの単位が適用されているかにより表現が異なりますが)の放射線被曝が許されていました。
 法的な上限ですが、実際には原子力産業のほとんどの労働者が受ける被曝線量は年間およそ2,000ミリレムに止められています(20ミリシーベルトまたは2レム)。
 福島第一原発の原子炉のメルトダウンの発生に対し、日本政府は放射線許容量を従来の20倍に増やすという規則変更を行いました。
 これは原子力発電所作業員が1年間に被曝する上限の放射線量とほぼ同じ数値です。

 2020年に開催予定の東京オリンピックで最も象徴的なのは、男子野球、女子ソフトボール、聖火リレー、そしてサッカートレーニング施設を、日本政府が「原子力非常事態」を宣言した地域の中に協議会場が設定されたことです。
 競技選手と一般市民は、日本列島以外の場所にある運動施設で許されているより20倍も高い放射線レベルが設定されている場所に滞在することになるということを意味します。
 米国科学アカデミーのしきい値なし直線(Linear No-threshold)放射線リスク・アセスメント(判断基準)によれば、アスリートの放射線関連疾患のリスクも今いる場所に留まっている場合よりも20倍高くなります
 福島第一原発事故の周辺および周辺地域に住む人々は、日本政府から、放射線量が20ミリシーベルトであれば、汚染された家や村に戻らなければならないと宣告されました。
 日本国内のどの原子力発電所の近隣住民も経験したことがない、これまでの基準の20倍という多量の放射線被曝の危険にさらされる可能性があっても帰れと言われているのです。
 日本政府はもっとも効果的な方法で除染を行ったから安全だと言っている訳ではなく、原子力災害被災者に対し、公的な補助金を受け続けたいと望むなら、除染が終わったとされるものの現実にはまだ放射能汚染が深刻な自宅に戻ることを強制しているのです。
 一般市民が新しい基準をはるかに上回る放射線被曝の危険にさらされている点について、根本的問題が3つあります
 第1の問題、それは日本政府の除染基準で、家の中とその周辺のみの作業によって除染が完了したとされている点です。
 私は福島でまず高速道路の放射線量を計測した後、周囲にある森の中に50フィート(約15メートル)ほど入った場所でも計測を行いました。
 その結果明らかになったのは、結局のところ森の中は依然深刻に汚染されたままだということでした。
 つまり雨や雪が降ったり、あるいは風によって森の中の埃や花粉が飛ばされて来れば、そこに付着としている放射性物質が除染によって汚染が除去されたとされる場所に舞い戻ってくるということです。
 私は南相馬市に行って、福島第一原発のメルトダウン事故後に完璧に除染されたとされる4か所の屋根に上りました。
 これらの屋根は周囲の山や丘から風によって飛ばされてきた放射性物質によって再び汚染されてしまっていました
 これらの街並みは、周囲の山々から風によって運ばれてきた放射性物資を含む塵埃によって再び汚染されていました。
 人々の家も、そのコミュニティもこうした形で日々再び汚染されてしまっていたのです。
 第2の問題、それは日本政府がたった1種類の放射性物質の調査のみを全てに優先させ、避難民に対して帰還を強制している点です。
 現在日本政府が公表している放射線量とは、携帯式のガイガーカウンターを使い、セシウムから直接放出されている放射線だけを測定した値なのです。
 通常こうした測定方法が使われるのは、胸部X線検査のように人体を一定の形で通過する外部ガンマ線などです。
 ホット・パーティクルまたは細かい放射性ダスト(またはナノ粒子)と呼ばれる放射性粒子は、人々の肺や消化器系に入り込み、その人間の内臓は何年もの間、大量の放射線を浴び続けることになります。
 東京電力も日本政府も、このような微細な放射性ダストの存在を無視しています。

 第3の問題、すなわち最後の問題は、こうしたホット・パーティクルの中に平均的なものと比較して異常に放射性が高いものがあることです。
 カルトフェン博士と私が共同で執筆し、第三者の科学者による審査を論文において、私たちは300種類に及ぶ微細な放射性ダストについて調査研究を行った結果、平均よりも最大10,000倍放射能の値が高い放射性ダストが約5パーセント含まれていることを確認しました。
 こうした高放射性ダストが存在する場所で暮らしている人々の内臓や体内組織は一般的な避難生活者と比べ、絶えず非常に高いレベルの放射線の照射にさらされていることを意味するのです。
《前編》
https://kobajun.biz/%e3%82%a2%e3%83%88%e3%83%9f%e3%83%83%e3%82%af%e3%83%bb%e3%83%90%e3%83%bc%e3%83%a0%e7%ac%ac%ef%bc%92%e9%83%a8%ef%bc%88%e4%ba%ba%e3%80%85%e3%81%ae%e5%91%bd%e3%82%92%e8%84%85%e3%81%8b%e3%81%99%e5%8e%9f/
《後編》に続く

 ここにご紹介する3本のビデオは2017年9月に私自身が福島で撮影したもので、福島近郊で実際に起こっていることを示しています。
 2020年に日本が東京オリンピックを開催するため福島第一原発の周辺があたかも正常な状態に戻ったかのような印象を与えるために人々を帰還させ、結果的に大量の放射線を浴びさせる結果になったことを忘れることはできません。
 かつて福島第一原発周辺で生活していた人々のうち、数万人は遥か離れた場所に避難したまま、そこでの生活再建に取り組んでいる一方、何千人もの人々は経済的に追い詰められ今や帰還を余儀なくされています
 福島第一原発周辺に存在する移動性放射性ダストは、帰還を選択した人々にこれまでもこれからも壊滅的な影響を与え続けることになりました。
 この極めて高い放射線量を持つ移動性放射性ダストは、東京のように遥か離れた人口密集地でも存在が確認されています。
             
 福島第一原発がトリプル・メルトダウンを起こす前と同じ状態になるよう、あらゆるものを回復させようと試みてはいるものの、日本政府は日本も周辺世界もかつてとは非常に異なる場所になってしまったことを理解できずにいます。
 安倍政権は原発難民を汚染されたかつての居住地へ強制的に帰還させ、放射線のさらされた福島県産品の販路拡大に取り組んでいます。
 一度原子炉がメルトダウンしてしまったら、その後のクリーンアップは容易なことではなく、完全に放射性物質を取り去ることは技術的に不可能です。
           
 実際、どこまで問題が及んでいるかの範囲の特定、深刻度、根本的な原因を検証する代わり、あちこちに絆創膏を貼りまくり、応急措置だけを繰り返しても問題は無くなりません。
 そして日本の政治家や政府高官、東京電力は自分たちの政治的地位、会社の財政基盤や個人の財産、そして原子力産業の財政基盤を守るために何千人もの日本国民の命を危険にさらしています。
          
 先週号のアジアパシフィック・ジャーナル(APJ)には、シカゴ大学教授ノーマ・フィールド博士、東アジア言語・文明学の日本研究における功労賞受賞者のロバートS.インガソール教授による秀逸なエッセイが掲載されています。
            
 2020年の東京オリンピック - パラリンピックは当初これまでで『最もコンパクトな』で低予算での開催を約束していながら、現在はその何倍もの約3兆円の費用がかかってしまう可能性があるという予測に、私たちは凝然(ぎょうぜん)たらざるをえません。
 そして日本では殊更に『復興オリンピック』ともてはやされているのです。
          
 これほど多額の予算を巨大地震、巨大津波、原子炉のメルトダウンという三重災害に見舞われた地域全体、特に原発難民にされた得難い思いをされているの犠牲者たちのために役立たら、という思いを持つのは当たり前のことではないでしょうか?
 巨額のオリンピック予算のごく一部であっても、福島第一原発の周辺から避難者している人々 - 命令された人『自主避難』した人を問わず - が必要としている住宅支援のために使えば、人々はもっと生活の先行きを見通すことができたことでしょう。
             
 しかし現実にはこれまで入ることが厳しく制限されていた福島第一原発の周辺の地区では、科学的根拠が乏しいまま避難区域の指定が解除されました。
 これらの地区では広い範囲にわたって汚染されていることが懸念されているにもかかわらず、避難指定が解除され、元住民に対し無謀とも言える帰還を強制しているのです。
             
 東京電力が提供しているJ-ヴィレッジは放射能で汚染された一帯の処理作業を行う作業員の防護服の着脱、仮眠、放射線量の測定場所として使われてきたため、当然放射能で汚染されているはずですが、オリンピック期間はナショナル・サッカーチームのトレーニング施設として利用される予定です。
          
 アジアパシフィック・ジャーナル(APJ)に掲載されたシカゴ大学教授ノーマ・フィールド博士のエッセイには、最近引退した京都大学原子炉実験所の小出裕章博士の長文の論説が紹介されています。
             
 …医療ジャーナリストの藍原寛子氏が決して少なくはない皮肉を込め、こう語っています。
 「確かに東京オリンピックは「災害からの復興」を世界にアピールする素晴らしい機会になるでしょう。」しかしその一方で、「国家の原子力政策がもたらした人為的災害の結末、その本当の状況について」も、国際社会に明らかにすることになるでしょう。すなわち長期にわたる避難を課し、一部の地域住民に犠牲を強いること。」
 アジアパシフィック・ジャーナル(APJ)に掲載されたシカゴ大学教授ノーマ・フィールド博士と小出裕章博士の長大な論文を読むと、いてもたったもいられないような気持ちにさせられます。
 それでも彼らはまだすべてを語っているわけではないのです。
 3基の原子炉がメルトダウンしてからすでに8年、私が感じるのは16万人の福島の原発難民がいまだに現在進行形の放射線被ばくを経験させられているという事実を、一人でも多くの人に認識してもらうことが重要だということです。
            
 この科学的事実を世界各国の政府は人々の目の届かないところに隠そうとしています。
 しかし私たちが各国の政府が密接な関係がある原子力発電と核兵器の開発に巨額の投資を続けてきたという事実に焦点を合わせれば、彼らが金銭的に、政治的に、そして感情の上でも真に望むものが何であるか理解するのは難しいことではありません。
          
 日本で初めて著作を刊行して以降、私は4度にわたる調査旅行中、数多くの原発難民の人々に会って話をし、情報を交換しました。
 そしてフェアウィンズは彼らが被った衝撃的なまでの痛手を理解していると確信しています。
 見逃せないのは日本政府がオリンピック開催のために多額の資金を投入していながら、福島第一原発の事故処理費用をできるだけ切り詰めようとしている点です。
 そのために安倍政権は16万人に上る福島の原発難民の人々を実験台のモルモット並みに扱い、放射能汚染がまだ解決していない避難指定解除エリアに戻るように強制し、世界に向けてあたかも問題が解決したような印象操作を行っています。
 そして帰還した原発難民の人々がどれだけの放射線被曝をすることになるのか、誠実な志を持った科学者が検証することを妨げるということまでしています。
             
 オリンピック開催に数兆円という国費を投入するより、まず福島第一原発事故で自宅や故郷を失ってしまった人々の救済のために使う方がはるかに有効であると考えます。
 帰還を強制されている家族が今まさに帰還を強制されている汚染された場所ではなく、遠く離れた安全な場所で永続的な雇用と住居を手に入れることができるよう、新たなコミュニティの建設のために資金は使われるべきです。
《 完 》

https://www.fairewinds.org/demystify/atomic-balm-part-2-the-run-for-your-life-tokyo-olympics
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 もはや日本のメディアが2020年東京オリンピックについてはこぞって『楽しみ』と大政翼賛的報道にはしる中、ご紹介するレポートは非常に貴重なものになりました。
 福島の原発難民の人々の本当の意味での救済については、オリンピック以上に国民全員の議論が必要なはずですが、日本全国各放送局から聞こえてくるのは、『オリンピックへの盛り上がり』云々という話ばかりです。
 これも国策なのかと、つくづく『人間として』という思考が無視される時代になったなと厭世観にとらわれそうです。
       
 そんな中でも福島の原発難民に対する安倍政権の扱いについては、顔が青ざめるほどの怒りを覚えます。
 戦後日本の政治は国民の暮らしと安全を守ることを第一義とする方向に進んできたはずですが、それが安倍政権になって国家行事を人権に優先するという思想があらわになりました。
          
 その国家行事も安倍政権の場合は最大公約数の国民のためではなく、自分たち政権の周囲に群がる人間たちの利権につながる建設業界や長年ナショナルスポーツに寄生してきた広告業界を潤すことの方が先なのではないか?という深刻な疑問があります。
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 福島の問題はわたしたち日本人の『良心の質』の問題かもしれません。
 世界レベルの壮大なイベントを日本で開催することが、ただただ嬉しいのか?
 このようなイベントに国を挙げて取り組む一方で、国としての体面と巨大企業救済のため、切り捨てられていく人々がいることを常に忘れずにいることができるのか?
《後編》
https://kobajun.biz/%e3%82%a2%e3%83%88%e3%83%9f%e3%83%83%e3%82%af%e3%83%bb%e3%83%90%e3%83%bc%e3%83%a0%e7%ac%ac%ef%bc%92%e9%83%a8%ef%bc%88%e5%91%bd%e3%82%92%e8%84%85%e3%81%8b%e3%81%99%e5%8e%9f%e5%ad%90%e5%8a%9b%e3%81%ae/
https://www.fairewinds.org/demystify/atomic-balm-part-2-the-run-for-your-life-tokyo-olympics
『星の金貨 new』

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