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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

すでに日本の教育現場はブラック企業のような状況

2014年07月01日 | こども危機
  《官製ワーキングプアをなくし、誰もが幸せになれる行財政へ(井上伸)》
 ● 駅前トイレで寝泊まりするトリプルワークの女子高生、
   世界ワースト長時間労働で鬱病激増する日本の教員


 OECDが、日本を含む34カ国・地域の中学校教員の勤務状況に関する調査結果を発表しました。その中で最も驚いたデータを私が分かりやすくグラフにしたものが以下です。

「OECD国際教員指導環境調査」より作成

 グラフにあるように、教員の1週間の労働時間が、日本は53.9時間と突出していて、各国平均の1.4倍で14.6時間も長く、一番短いチリのなんと1.84倍で24.7時間も長くなっています。
 内訳を見ると、部活動など課外活動指導が7.7時間と各国平均の2.1時間の3.6倍。書類作成など事務作業の時間が5.5時間と各国平均の2.9時間の1.9倍で、なんと授業時間は17.7時間で、各国平均19.3時間より短くなっています
 そして、「生徒に勉強できる自信を持たせているか」という問いでは、各国平均で9割近くが「できている」と積極的に肯定しているのに、日本の教員は2割に満たなかったという結果が出ています。日本の教員は忙しすぎて、子ども一人ひとりと向き合う時間が足りないという状況になってしまっているのです。
 この突出した日本の教員の長時間労働と相関関係にあるのが世界一低い日本の教育への公的支出です。下のグラフは、OECDデータから分かりやすくグラフにしたものです。4年連続で世界一低い日本の公的支出は、少ない教員数をはじめ、日本の教育体制の脆弱性となってあらわれています。

「図表でみる教育OECDインディケータ」から作成

 当たり前の話ですが、小さな公的支出の裏返しで教育への私的負担が大きくなって、子どもの貧困問題を悪化させる原因のひとつになっています。また、多忙な教員が子ども一人ひとりに向き合えないため、深刻化する子どもの貧困とも相まってさらなる学力低下なども問題になってきています。
 そして、日本の子どもの6人に1人が貧困状態に置かれ、次のような状況が生まれています。
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 ● 過酷なトリプルワークで睡眠2時間
   駅のトイレで寝泊まりする女子高生
◆アルバイト代で学費や自分の生活費を稼ぐだけでなく、家計の援助もしなければならない高校生たち
◆100円ショップの50枚入り薬用オブラートで空腹をまぎらわす高校生たち

◆東京近郊の私鉄の駅前にある多目的トイレで寝泊まりする女子高生。彼女は午前6時から9時までコンビニのレジ打ち、午前10時から午後3時までファストフード店で働き、午後5時半から9時まで定時制高校の授業、その後、飲食店で深夜労働という過酷なトリプルワークをこなし学費と生活費を稼ぐ。時間がないので、駅のトイレで「1日に2時間眠れたらいい方」。
◆子どもたちが朝食を求めて行列ができる大阪の公立小学校の保健室。給食のほかは何も食べられない子どもなどが増えているため2008年から保健室で朝食を出すようになった。お金がかかるから歯医者に行けず、視力が低下してもメガネを買えない家庭も増えている。
◆「先生、孫だけでも夜、保育園に泊めてもらえませんか」「1カ月前から、家族で車の中で寝泊まりしているんです」
◆ガリガリにやせて、体がふらふらして保育園の廊下を真っすぐ歩くのが大変な子ども。
【保坂渉・池谷孝司著『ルポ子どもの貧困連鎖――教育現場のSOSを追って』(光文社)から】
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 ● 病気になっても病院で診てもらえない
   予防接種も受けられない子どもたち
◆大阪の公立高校。修学旅行に行く2年生140人中、家庭の経済的事情で積立金滞納などによって20人が修学旅行を欠席。
◆月8千円の学童保育料が払えず留守番をする小学生。

◆無保険の中学生以下の子どもは全国に約3万2千人。
 無保険世帯の子どもを年齢別にみると、0~6歳の乳幼児は5,275人、小学生は1万6381人、中学生は1万1120人(2008年、厚労省調査)いることが分かり、2009年春から国保法改正で滞納世帯でも中学生以下には短期証が交付され、窓口での全額負担をしないですむようになった(2010年7月から高校生も短期証発行の対象となった)。しかし、滞納以前に高額の保険料が壁となり、国保に加入しない「本当の無保険」の家庭がある。国保加入を前提にした法改正には、すべての子どもを救いきれていない落とし穴が残っている。子どもの無保険問題に取り組む大阪社会保障推進協議会(大阪社保協)によると、金銭的事情で保険証の取得が念頭になかったり、保険申請の仕方がわからなかったりする保護者もいる。だが、厚生労働省は「基本的に何の保険にも入っていない人はいない。加入手続きをするのが大前提」と、国民皆保険を強調し、無保険者の実態を調査していない。大阪社保協の調査(2012年)によると、所得200万円の40歳代夫婦と未成年の子ども2人の4人世帯の場合、大阪市内の自治体の平均国保料は約41万円。高いところだと、守口市で約50万円だ。
  寺内順子事務局長は、「ご飯を食べないで保険料を払え、というのは絶対おかしい。親の事情がどうであれ、子どもは社会で守られなくてはならない。子どもに限っては未加入でも国保に入っているとみなすなど、医療費負担を減らす仕組みを作るべきだ」と指摘する。
◆毎年約1千人の子どもがかかる細菌性髄膜炎のうち、肺炎球菌が原因の場合は約7%が死亡し、約4割で手足のまひや知的障害が残る。この細菌性髄膜炎を防ぐ予防接種を受けた割合は、被用者保険91%、国保9%(日本外来小児科学会での高崎中央病院の鈴木隆院長の報告。2010年4~7月の調査。同院での予防接種の自己負担は5,250円から6,300円)
◆短期証が、子どもの健康格差を根本的に解決してくれるわけではない。和歌山市の生協こども診療所長の佐藤洋一医師は、2012年4~6月の間に、同診療所で受診歴があり、ワクチン接種した就学前の子どもを対象に、麻疹・風疹混合ワクチンの接種状況を調べた。通常の国保と社保の保険証を持っている場合、どちらも40~50%が接種していた。しかし、短期証の場合0%。
◆インフルエンザが流行していた時期、クラスの子が3日間学校に来なかった。心配になって家に電話したら、父親は「インフルエンザになっても病院に行くお金がないから休ませる」(高知県内の小学校の男性教諭)
【中塚久美子著『貧困のなかでおとなになる』(かもがわ出版)から】
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 こうした深刻な子どもの貧困が広がっているにもかかわらず、世界最悪の生活困窮状態にあるひとり親世帯の児童扶養手当の削減を、2013年度に続き、2014年4月から安倍政権は強行しています。安倍政権は、子どもの貧困促進政権でもあり、ここまでくると、教育を、子どもを、ネグレクトしている政権と言っても過言ではないと思います。
 一方、教員の方は以下のような状況に追い込まれています。


文部科学省「教員のメンタルヘルスの現状」(2012年3月4日)

 上のグラフは、文部科学省の「教員のメンタルヘルスの現状」(2012年3月4日)からです。グラフを見てわかるように、教員の精神疾患による休職者は10年で約3倍も増えています。
 (略)

 それでは、なぜ教員はこんなに精神疾患による病休者が激増してしまったのでしょうか?

文部科学省も客観データとして活用しているウェルリンクによる調査

 上のグラフは、文部科学省も客観データとして活用しているウェルリンクによる調査です。これによると、強い疲労を訴える教員は一般企業の3倍以上に及んでいるのです。

文部科学省も客観データとして活用しているウェルリンクによる調査

 そして、上のグラフにあるように、「1週間の中で休める日がない」とする教員は半数に近い43.8%で一般企業の約3倍にもなっています。
 こうした状況で、「児童生徒の訴えを十分に聴く余裕がない」とする教員は61.5%にも及んでいます。
 そして、教員の「うつ傾向」は一般企業よりも2.5倍も多くなっているのです。すでに日本の教育現場はブラック企業のような状況になっていると言っても過言ではないでしょう。
 以上、見てきたように、世界一低い教育への公的支出と、社会保障連続改悪や雇用破壊などが、子どもの貧困問題を深刻にし、ブラック企業のような教育現場を生み出しています。
 貧困連鎖ともなる子どもの貧困を悪化させ、さらに教育現場のブラック化を加速せざるをえない労働法制改悪などを進める安倍政権は、子どもの可能性をつみとり、日本社会の基盤をみずから壊していると思います。
『井上伸 - 個人 - Yahoo!ニュース』(2014年6月27日)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/inoueshin/20140627-00036818/
井上伸 | 国家公務員一般労働組合執行委員、国公労連書記、雑誌編集者

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