これ、なんだか判りますか?
これはスペインの解剖学者サンティエゴ・ラモン・イ・カハールが作成・模写したゴルジ染色による小脳のプルキンエ細胞です。
これ、たった一個の脳神経細胞ですよ!
神経細胞は、多入力1出力の重み付き積和素子でモデリングされますが、その入力分岐は凄まじいですね。これが我々のお頭には140億個も詰まっているのです。
この神経細胞はシナプス重み付けの積和総入力が閾値を超えると下図の軸策丘という部分でNaチャンネルのポジティブフィードバックが起り発火するわけですが、この発火電位が終端に届く伝達速度と髄鞘に深い関係があります。
神経細胞は長いものでは1mを超えるので、途中に増幅機構が無いと信号が減衰してしまいます。その増幅を行うのが細胞膜に有るNaチャンネル蛋白質ですが、これが順次発火する場合は比較的遅い1m/sという伝播速度で信号が伝わります。ところが髄鞘があると発火は髄鞘のギャップであるランヴィエ絞輪の部分でのみ起こり、髄鞘部分ではイオン電位により信号が伝達されます。この跳躍伝播により信号伝達速度が100倍になるのです。
この神経の鞘である髄鞘は生まれたときから全部揃っているのではなくヒトの成長にしたがって順次増加していきます。それを詳細に調べたのがフロイトと同時代のドイツのフレフシッヒ先生です。
上図はフレフシッヒ地図と呼ばれるものですが、髄鞘の年代別の発達部位を示しています。特に重要なのが黄色の部分で、これらは青年期に髄鞘化が進む部分で特に前頭葉の髄鞘化が顕著です。髄鞘は主にリン脂質であるDHAで構成されており、青年期にDHAを含むオメガ3必須脂肪酸を摂取する事が前頭葉の発達に必要なわけです。
まあ、人間の脳みそというものは宇宙で最も精緻な構造物だといわれていますが、その通りだと思います。あなたの頭にもこれが詰まっているのですよ、大事にしてください。