箆柄暦『箆柄日記(ぴらつかにっき)』

沖縄へ流れ着いた箆柄暦のぴらつかさんの
沖縄的日常とか、イベントの感想とかを綴る。
戻れぬ 旅だよ 人生は…。

ジェス・サンチャゴの歌声

2005-08-21 10:46:05 | 箆柄日記
フィリピンの民衆歌手、ジェス・サンチャゴさんの歌を聴いた。まるみかなーにて。不意打ちを食らったような衝撃だった。


優しい歌声なのに

ジェス・サンチャゴさんは、マルコス政権下のフィリピンからずっと大衆の中で歌ってきた人なのだそうだ。テレビでもラジオでも彼の歌は流れない。なのにピープルズパワーが爆発した時、全ての人たちが、彼の作ったピープルズマーチを歌っていたという。

彼は、本来詩人なのだという。しかし、フィリピンの現状を詠んだ詩を出版することはできない。詩をメロディに乗せ、歌うことで詩を広めようとした。テープもレコードもCDも発売できないなかで、歌詞にコードを書き加えた紙が広がっていった。あとは人々の口伝え。

正確には自分は音楽家ではないというが、その歌声は一度聞けばいくつもの修羅場をくぐってきたことを感じさせ、これが歌でなければ何を歌と言えばよいのかと思わせる力を持っていた。優しく素朴な歌声、タガログ語の歌詞だったが、凛としたものがちゃんと伝わってくる。

フィリピンも、今はもう自由に歌うことができる世の中になっているのかと思っていたが、ジェスさんは未だ混乱が続いていることをビデオを交えて訴えた。次々と映し出されるむごたらしい死体は、今のフィリピンの様子、過去のことではなかった。

最後に歌った歌で、マルコス政権打嶋ネ降民衆は何度も政治に裏切られ、そのたび立ち上ったが、何度ピープルパワーが爆発しても、同じ事が繰り返され暮らしは何も変わらないと歌っていた。日本語の歌詞を交えて。

今日のライブは新聞にも載ったけれど、お客さんは少なかった。正直なところ集まった人もほとんど常連で、ジェスさんとは友達になったので見に来たという程度でしかなかっただろう。私自身もあまり期待していなかった。

しかし最後にはみな聴きに来て良かったと真剣に思ったことと思う。同時に、フィリピンのことについてあまりに知らないことに愕然とした。問題の根っこに、アメリカと日本がある。他人事ではなかった。

演奏の後、ジェスさんが酒飲み座の戯れに似顔絵を描いてくれた。
たまらない気持ちになった。大切に持ち帰った。

追記:
なんかジェスさんのおかげでちょっと肩の力が抜けた感じがする。そんな意味でも行って良かった。
コメント
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