いろいろな色が溢れているこうした風景から、私はなんとなく「パレット」の表面をイメージしてしまいます。
子供の頃、いろいろな色が無道さにおかれた「パレット」を見るたびの、心が躍るような錯覚に陥ったものです。
はじめの頃は、誰もが原色の色に目をうばわれますが、やがてそうした強烈な色から遠ざかり、やがて「淡い色調」に心ひかれるものがでてきます。
そうした色に対する興味の対象が変化する中で、最も普遍的な色が実は「白」という色ではないかと最近つくづくと考えるようになりました。
「白」は色の原点のような存在で、皆さんも小さい頃この「白」をさかんに使ったのではないかと思います。
「空」の色を明るくする時、「青」に「白」を混ぜると、自分がイメージする色に近いものができたことを覚えていると思います。
そうしたことを考えながら、友員さんのパステル画を見ていると、そこに「白」と言う存在が浮き上がって来るような感覚が芽生えます。
「虚飾のない世界」、それが我々の心に残る「ふるさとの色」であり、思い出に浸ることのできる空間になっています。
「自然の存在」をそのまま表現し、そこに「自分と自然」との素直な対話を交わしているこのパステル画は、誰の目にも共有できるものがあると思います。
「日本人の心の原点」を描いているようなそんな気さえしてくるこのパステル画から、日本人の持つ「和」という世界さえイメージできるものが感じられます。
それは日本人の精神性にも及んでいて、この絵からもそうしたことが感じられます。
「日本の原風景」にあたるこうした「古い神社」や「四季の変化」は同じように我々の心に深く根ざしているものがあります。
こうした絵を見ていると、自分たちが小さな頃の「ひとコマ」が自ずとイメージされ、輝きを増す存在に変化し、新たな活力を我々に与えてくれます。
また、それは「豊潤な空間」を創る手助けをしてくれるようで、どこか「醸造の世界」に似ている感覚が起きてきます。
このように「色や形」と「イメージ」はとても深い関係にあり、絵を見ながら我々を「別世界」へ運んでくれる大きな役割を持っています。
そこに「個」の持つ「表現」が現れることにより、その「個」から新たに学ぶおもしろさがあるのもこうした「絵画表現」ならではの世界ではないでしょうか。
そこに見える単なる色が、皆さんのイメージを広げる大きな力になっていることに気づいて欲しいものです。
「色には力がある」という言葉がありますが、そうした「伝達の力」から、自分なりの世界へと飛游する「創造させる力」へと向かうステップがとても楽しく、毎日の生活に大きな潤いを与えることは確かです。