今読んでる本{オルセー美術館」NHK出版の中にマネが描いた「海辺で」の絵があります。
左にマネ夫人、右にマネの弟が描かれており、実際に海辺で描かれたものだそうです。
海は、一色ではなく、ヨットが浮かぶ沖合から波打ち際の灰色まで何重にも描き分けられています。解説は更に続きます。沖へ向けて色調を変化させる海の表現は、浮世絵のぼかしの技法を思わせます。
印象派の人たちが浮世絵の影響を受けていたのは知っていましたが、自然を表現することは日本に原点はあったのかと驚いてしまいました。
もうひとつこの本を読んで感動した言葉があります。
印象派は「見たままを描く」というよりは、「自分の見たままを描く」芸術である。
だからどの作品もどの画家の絵を見ても想像力を奮い立たせてくれるのかもしれません。
酒井治は海と対話をしながら描いていたように思います。
オーストラリアのグリーン島
ケアンズ
「自分の見たままを描く」については、ベクトルは異なりますが多少なりとも臨床心理に関わっている者としてその通りだと実感しています。臨床では、その方の「まま」に寄り添うことが原点になりますが、それは前提として、同じ現象を見ていても決して同じに見ていないからだという立場があるから可能になることです。各々がお互いの考え方や感じ方を知るということは、容易ではありません。でも、そこに人の自由の何たるかがあるように思います。酒井治氏は「描く」ことを通して自由を追求され続けたのだと、改めて感じ取ったことでした。