実は、先週の観劇でした。
つまり、マチは池袋で「マタハリ」、ソワは渋谷で「首切り王子と愚かな女」のはしご。
2日通うより、一日にまとめた方が効率的ではありますが、疲れます。
とくに、「首切り王子と愚かな女の子」は、ひとつひとつの台詞を噛みしめながらの観劇で、脳みそフル回転でした。
でも、決して理屈が勝った舞台ではなく、心にさざなみが立つような、ゾワッとしたなんとも言えない変な気持ちというか、違和感を感じる舞台で、気がついたら、泣いているというか。
この舞台は本当にすごくて、一週間経っても、ふと、あれは?とひとつひとつのシーンが頭に浮かんだりするのです。
例えば、トル王子が手に怪我をしているのを見て、母親である王女デンが取り乱すシーン。
トルの身を案じて、という母心とは少し違う?
その違和感の正体がわかったとき、心底ゾッとしたのです。
デンにとって、トルは器にすぎないから、器の中身なんか、どうでもいい。
そういえば、デンが優しい言葉をかけたのは?
そういうのを確かめたい思いがつのります。
一幕目の傍若無人に見えるトルが、ヴィリとの関わりの中で変わっていく姿にほっとしたのに、ヴィリの裏切りを知り、捨てられた子犬のようにしおれていく姿が愛おしく、その歌声に心を掴まれました。
すごく実験的な舞台で、観客の想像力を信じたシンプルな舞台装置も、パーテーションで区切られた舞台上の楽屋も、こうきたか!という感じでした。
あの椅子だかテーブルだかわからないシロモノが、本当に冬の孤島や城の中に見えて来るのは、そこで演じる役者の熱量も関係しているのだと思います。
そして、井上芳雄さんと伊藤沙莉さんの、はっきりくっきりした滑舌の良い台詞回しは、言葉がすっと心に届いてきます。
台詞の二重唱や三重唱でも、ちゃんと埋もれずに太字で届くのです。
ダークファンタジーだけど、シェークスピアっぽい感じもあるし、ドロドロ不倫?もBL?も、首切り役人の苦悩もある。
もう一度見に行きたいなあ。