悪人 スタンダード・エディション [DVD] | |
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東宝 |
「悪人」ってなんだ?というのを考えちゃいます。
いわゆる「善人」といわれる人だって悪いことを一度もしたことがない人はいないでしょう。
主人公は人を殺しました。そういう意味では「悪人」です。でも、だからといってすべてを否定されるようなことではないわけですね。
同時に人を殺さなかった学生さんの方が印象としては「悪人」です。
殺された女の人だって、そのセリフから出てくる「悪人」ぶりは相当な悪です。
一緒に逃げた女の人もそれ自体が悪いことをしたことになります。
犯人の家に群がるマスコミのくずどもは、一般的には悪者ではないわけです。
人間には良い心と悪い心が両方あわせもっていて、それははっきりと分かれているものではなくて、連関しあいながら一体のものとして内包されているのでしょう。
犯罪なんかを第3者が判断する場合には、基本的にその行いそのものが悪いかどうかという断片をみるわけで、個々の問題の判断に対しては、その行為がどのようなものか、社会的な基準、人間としての判断基準に照らして結論付けることができたとしても、それを人間そのものを白黒できるわけではありません。
考えさせられる映画でしたが、もうちょっと、一人ひとりの内面に踏み込んで描いてほしかった気がします。かなりわかりやすく「悪人」の印象を観る側に押し付けてくれるので、ちょっとっそこが薄っぺらな感じがしました。
殺人まで発展してしまう過程もなんかもうちょっと必然性が乏しい気がしました。
とはいっても、実際の犯罪だって、説得力ある動機が結果に結びついたわけではないと思うので、そこはそれでも、そうしてしまったということでそこにケチをつけてはいけないのかもしれません。
本当に殺そうと思っていなければ、首をしめるなんていう行為は普通にはできない気がします。あの時犯人の人も言ってたけど、あの女は死んでも当たり前という気持ちがあったからこそ首をしめることができたのだとしたら、成り行きでというものじゃなくて、殺そうという能動的な力が働いている気がします。
それに、それまでも金で関係を持っていたのだから、そういう女だという認識はもっていなければならないし、自分の約束を反故にして他の男の車に乗ったことはそんなに腹を立てることじゃないと思います。なぜ、そんな女に執着したのかがよくわからないです。
そういう点ではもう一人の男のほうがまともだったといえなくもない気がします。車からけりだした行為はありえないですけど。結果的に殺人事件にまでいってしまった最初の原因は餃子だったとは!
最後の方のお父さんの話は、この映画の問題提起なんだと思います。でも、人間の関係は希薄になったのかな・・・本当は人間が求める絆みたいなものがウン十年でそんなにかわるわけじゃないし、もっと昔には、ある意味すごい人権侵害も平気で行われていたわけだし。
やっぱり、根本的には生活の土台を崩している今の社会に問題を求めていくべきなのだろう・・なんて思いながら・・・
ふかつえりさん、薄幸そうな愛を求める役がぴったりはまってます。