椿三十郎<普及版> [DVD]東宝このアイテムの詳細を見る |
面白かったです。
黒澤明さんって何個か作品見たことありますが、それまでは何となく、完ぺき主義で、ガチガチのイメージといいますか・・・みんなが口をそろえてすごい!すごい!と言うし、なんか、黒澤映画を理解できないやつは映画ファンじゃないみたいなイメージがあるじゃないですか。そうかと思うと、お前は黒澤映画のなにを理解してるんだ!と、小難しい見方を強要されて、人をよせつけない感じもあって・・・
本当にいろんな人に影響を与えた人だと思うし、すごい知識を持っているファンは大勢いるだろうし・・・何も知らんと、黒澤映画を論評するな!みたいな空気ありますよね。
だから、何となく観るのを避けてたところもありまして・・・
黒澤さんの映画を見るにはまず、そのハードルを越えなければいけないのです。今回はたまたま友だちがレンタルしてきたので、ハードルを越える心の準備も無く観ちゃったわけですが・・・
観始めたら、そんなヘンな先入観がいつの間にかなくなっていて、映画自体を素直に普通に観れました。
ただ素直に楽しめる映画だったことが驚きでした。
奥方様が面白いです。
いわゆる世間知らずといえばそれまでなんだけど、それだけじゃなくて、度胸が据わっている落ち着き払った態度がすごいのです。最悪の事態でも、動じない、そこのゆとりがすごい。殺伐とした緊張した空気の中で、ぱっと緊張をやわらげてくれる。つかまった人も面白いタイミングで面白い効果を出しています。しかも、それが案外鋭い指摘だったりして。
桂枝雀さんが緊張と緩和といってましたが、そういうことなのかな・・・と思いました。こういう笑えるものを黒澤さんが撮っていたことに驚いたのと、その設定のセンス(なんて言っちゃ失礼だけど)がすごい!思いました。
そういう意味で、今までのイメージがガラッと変わりました。
同時にこれは、イメージどおりのところですが、映画のつくりこみ方がすごいです。(また素人が・・・という感じですけど・・・)(こういうことをいちいちカッコつきで書いちゃうのが黒澤明さんがそういう存在だからです)(「黒澤明が好き」とか言ったら、どこがどんな風に?とか、いちいち聞かれそうですもんね。)(カッコばかりですいません)
ひとつひとつの映像に魂を感じるといいますか・・・いろんな工夫やこだわりを感じます。一番印象的だったのは、最初に椿さんが仕官(?)しに門をたたくところから、門が開いて、馬がぞろぞろ、そのあと、槍を持った人たちがぞろぞろ・・・そのあと、仲代さんが現れて、会話をして・・・という一連の流れをワンカットで撮っていて、その映像に圧倒されちゃいました。カメラの流れとか、全部考えてるんだろうなあ・・・なんて考えたら、このエキストラさんの動きとか、三船さんのウロウロのし方とか、自然な流れで見えるこのシーンもかなり計算しているんだろうと、勝手に想像しちゃうわけです。
椿の流れ方も、1個・・2個・と流れてきて、そのあと、ドバドバっと流れてきて・・・それで、そのあとの大騒動のかたがついたあとにまたぽとっとひとつゆらゆらと流れますが、そういうところにこだわりを感じます。だって、最後のひとつの流れなんて、なにも考えなければ無くてもいい映像ですもんね。
あと、田中邦衛さんが愚かさの象徴みたいにうまく目立ってるのも面白いです。だからといって、いやな感じがしないのは、あの表情でしょうね。ぐにゃぐにゃしてない、普通に話している田中さんを見たのは初めてです。
仲代さん(役名が思い出せん・・・)は椿さんと同じにおいを感じて心を許したんでしょうかね。最初ッから本音を言ってました。だからだまされたときの怒りがたまらないんでしょうけど・・・椿さんにしてみれば、だましたけれども、やはり同じにおいを感じてたたかいたくはない・・・たたかう以上はどちらかが死ぬわけだけれども、もう、さけられない状態になってしまったわけですね。自分の人生設計が壊されたというより、裏切られた怒りなのかもしれませんね。
椿もドバドバでしたけど、血飛沫はもっとドバドバでしたね。これでもかこれでもかというぐらいドバドバドボドボでした。終わったあとにまたスローで観たら本当にすごい量の血でした。鞘の無い刀のような人間の血は、血の気が多いということなのでしょうか。人間の体はほとんどが水分って聞いたことあるけど、何か納得です(笑)。
本当にいい刀は鞘に納まっているもの・・・すごい深いですねえ・・・・
最近リメイクした作品も見てみたくなりました。
この映画をリメイクするっていうのはかなり勇気がいりますよね。
なんで、その気になったのか、実際にその出来はどうなのか。
他の人のレビューを観てると、新旧の作品を比較している人はみんな駄作と言ってます。比較しないで作品単体で観ている人は結構評価が高いのが気になります。
とりあえず、こんなところで。