1月3日、PM8:20。
柳川で立花うどんを食べた帰りのこと。
家族を乗せて寂れた路地を走行する。
道が狭くて対向車との離合に苦労する。
道の両側には、田んぼを挟んで古びた民家がぽつりぽつりと立ち並ぶ。
中に人はいるようだが、どの家も空家のように生気がない。
ここには道を照らす街灯すらない。
あまりの暗さにヘッドライトを上向きにする。
ほんの10メートルくらい先に道を歩く人がいた。
グレーのコートを着ているせいで完全に闇に溶け込んでいる。
まだ20代とおぼしき女性である。
この暗い道を明かりも付けずに歩いている。
女性を通り過ぎる際にオカンがいう。
「この人、電池も持たんで歩きよる」
いわんとすることはわかる。
それでも一言いわずにはいられない。
「電池や」
オカンが「うっ」となる。
もう一度繰り返す。
「電池や」
オカンがもごもごいっている。
言葉を探してる。
数秒後、答えを得たかのような返事がくる。
「懐中電池のこと」
私はあざ笑うかのようにいい放つ。
「懐中電気やろもん」
オカン、そのまま無言になる。
いくらもしないうちに、後部座席にいる娘が口を出す。
「懐中電灯じゃなかと」
・・・
たしかにそうともいう。