5日前にさかのぼる。
オカンと娘がうちのドラヤーにいろいろケチを付けてきた。
「乾きがものすごく遅い」
「自分が持っているパナソニックのドライヤーとはぜんぜん違う」
「毎日使うものをケチって」
これは1年前、私がアマゾンの日替わり特価で買ったドライヤー。
1,500円の無名のドライヤーである。
値段の割には風力があってそう悪いドライヤーではない。
夏場はいい感じに爽やかな温風を吹きだす。
ただ、いかんせん1000Wでは真冬には弱い。
風は強くても熱がぬるい。
髪の長い女性は乾かすのに長い時間を要することになる。
そこで、もう少し強力なやつをアマゾンの日替わり特価で買うことにした。
「コイズミ大風量マイナスイオンダブルファンドライヤー」。
別名、モンスタードライヤー。
通常5,350円のところを3,980円。
これで決まり。
パナソニックでなくてもいいさ。
値段ほどに差はあるまい。
早いもので、夜に注文して次の日に送って来た。
娘が箱を開けるなりぼやく。
「また、中途半端なやつ買うとる。なんでパナソニックの高いのにせんやったと」
それに対して、
「そう違わん。パナソニックのドライヤーだって実際はコイズミのようなとこが作いよる」
と、テキトウな理屈をいってその場を逃れる。
使えば分かることよ。
その日の夜、ついにその真価が試される。
髪を洗って、湯船につかり、ドライヤーのときを待つ。
もうまもなくモンスタードライヤーの威力を体感できる。
ちょっとワクワクしてきた。
体が温まった頃合いを見て、風呂からあがる。
いよいよそのときがきた。
おっと、その前に眼鏡が汚れている。
レンズを水道水で洗ってタオルでふき取る。
レンズに付いた脂分が完全にふき取れていない。
眼鏡用の布に変えてふき直す。
レンズを天井の照明に向けて仕上がり具合を確かめる。
完全ではないが、ほぼ透明になっている。
これでよし。
そこからしばし物思いにふける。
ハッと、我に返ったときは髪を乾かしたあとだった。
すでに髪は乾ききっている。
しかし、手にしているのはいままで使っていた古い方のドライアーだった。