現在の新型コロナ感染症の動向
日本は新型コロナ感染症患者の増加を受けて、複数の地域で2回目の緊急事態宣言が発せられました。世界でも感染者数は1億人を突破し、増加し続けています。2020年暮れから、新型コロナウイルスに対するワクチンが実用化されて、世界では既に数百万人が投与されています。また感染力が強いと言われる変異種も欧州を中心に騒がれており、新型コロナウイルス感染症の話題は尽きることがない(ようにしている)と思われます。
rakitarouブログでは、当初から新型コロナウイルスに関する話題を取り上げる際は、世界の感染状況を客観的に把握する意味で、Corona world meterと Our world in dataの統計図を引用してきましたが、今回も現在までの傾向と集計を載せます。下図に示す様に、感染者数は増減しながらもやや増加傾向ですが、回復者も増えており、致死率は低下したままであることが解ります。悪性度の高まった株は存在しません。
世界における毎日の感染者数と回復者数の増減 感染者が増加するにつれて回復率は高くなり、死亡率も低下する傾向が続く
100万人あたりの日ごとの新規感染者数の国際比較では、最も多いイスラエル、米国や英国、ドイツなどと共に、実は日本も1月半ばをもってピークアウトしつつあることが解ります。つまり世界的にやや感染は収束しつつある(ように見える)のが現在の状態です。ここでイスラエルを何故取り上げたかと言うと世界で最も早くワクチン接種を進めているからです。図に示す様に12月下旬からワクチン接種が進んでおり、10-20%の国民が少なくとも1回目のワクチン接種が終了しているという事です。米国、英国もワクチン接種が進んでいますが、1月をピークとした収束傾向がワクチン接種の効果かどうかは現在の所不明です。
各国の100万人あたりの日々の新規感染者数 世界的に1月中旬をピークに減少に転じている様に見える。 各国の新型コロナワクチン接種数(国民100人あたり1日の)緑色のイスラエルが突出して多い(感染も多かったが)
新型コロナ感染症は死者を増加させたか
感染症を抑制する究極の目的は感染症による死亡数を減らす事に尽きます。感染症が起こっても感冒の様に治ってしまうのであれば大騒ぎする必要はありません。また感染者がなくなったとしても、それが他の合併症によるものが主たる原因であるならば、感染による死亡とは言えません。そこで問題となる感染症による死亡者の増加の指標となるのが、例年の死亡者数と実際の死亡者数を比較した超過死亡の多寡の比較です。超過死亡数については統計を出している国が限定されているので国際比較が難しいのですが、米国、ドイツ、スウェーデン、英国の統計図を示します。いずれも昨年春に超過死亡のピークがあり、今回の冬も10-20%近くの超過死亡を記録しています。一時ほぼ完全に収束していたスウェーデンが、超過死亡が0になっていた時期と、再度流行した時期が超過死亡が増加していることからも、この超過死亡の増加はCovid-19感染症によるものだろうと推測されます。では欧米よりも感染者、死亡者が100分の一程度しかいない日本はどうかと言うと、厚労省として正式な統計は出していないのですが、池田信夫氏の記事を引用すると、図に示す様に日本の超過死亡はマイナスであり、例年よりも肺炎で亡くなる高齢者が減少していることから、コロナが流行したことでかえって死亡者が減っているのが現状です。
各国の超過死亡数の推移 2020年春は各国とも突出しているが、この冬は20%増程度 日本はマイナスの月が多く、年の集計ではマイナスだろう(文献7)
ワクチンの効果とリスク
世界では既に多数の人たちがワクチン接種を済ませています。mRNAを主体とする遺伝子ワクチンは今まで大規模な人体への投与は経験がなく、副反応も通常のインフルエンザなどに用いられる不活化ワクチンより強く、しかも高頻度であるという懸念があり、ほぼその予想通りの結果になっています(頭痛や倦怠感は50%以上)(文献3)。しかし非可逆的な後遺症が残る様な副反応の発生は想定以上ではないのが今までの結果です。今後1回目よりも非常に強い副反応が出るという2回目接種後の報告が増加するとどうなるか分かりませんが、新型コロナ感染症に罹る以上にワクチン接種の副反応の死亡率が高いという最悪の結果は出ていません。抗体依存性感染増強(antibody dependent enhancement)というワクチンによってかえって感染症に罹りやすくなるという、猫などのコロナワクチン接種で見られた(ワクチンで感染死亡率が高まる)作用も今の所報告はありません。論文では、猫のコロナは腸管感染であり、ヒトの気道感染と異なるので同じ副作用にはならないのではないかという考察はありましたが、ヒトでは起こらないという推論はできないので観察が必要という結論でした(文献2)。また下記の様に中和抗体が大量にできることが期待できる場合、ADEのリスクは減少するので、現状ではリスクが低いという考察もありました(文献1)。
ワクチンの効果についてはNEJMなどに報告された結果を見る限り、かなり有望であることが解ります。1回目投与から1週間目頃から明らかにプラセボ(非投与群)との差が現れて、ワクチンの効果で感染数が減少している事がわかります。また中和抗体を産生するTリンパ球の増加が確認されたという論文もあり(文献4)、ワクチンの効果は確実と私も思います。
New England Journal of Medicineに掲載されたワクチンの効果 プラセボ群(青□)が一定の率で感染者が増加しているが、投与群(赤丸)は抗体が効果を始める10日目頃から横ばいになった。
残る懸念は、私が以前から指摘している1)投与されたmRNAに反応して抗原を作る宿主の細胞は何かが明らかでない、2)通常速やかに細胞内で分解されるmRNAが大量にしかも分解されずに体内に非生理的な状態で注入され、存在することによる人体への影響はないのか、について答えがない事です。医学専門の論文検索であるPUBMEDなどでいくら検索しても全く出てこないということは、「世界中で誰も知らない」「結果は予測できないし、責任も取らない」事を意味します。心ある医師、科学者達は大規模な人体実験である遺伝子ワクチンの人類全体規模での使用に警鐘を鳴らし続けていますが、人類が歴史的に失敗するいつものパターンでその手の人たちは「変わり者」として扱われ「警鐘は無視」されています。まあ、人類は聡明な宇宙人達からの視線では「煽ってしまえば集団で嵐の海に飛び込んでゆく愚かな生き物」に見える存在であり、一歩止まって考えられない性分なので仕方ないでしょう。
(1)Arvin AM et al. A perspective on potential antibody-dependent enhancement of SARS-CoV-2. Nature 584. 353 2020
(2)Lee WS et al. Antibody-dependent enhancement and SARS-CoV-2 vaccines and therapies. Nature microbiology 5 1185-1191 2020
(3)Polack FP et al. Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine. New England Journal of Medicine DOI:10.1056/NEJMoa2034577
(4)Sahin U et al. Covid-19 vaccine BNT162b1 elicits human antibody and TH1Tcell responses. Nature 586 594 2020
(5)Knipe DM et al. Ensuring vaccine safety. Science 10.1126/science.abf0357(2020)
(6)Maruggi G et al. mRNA as a transformative technology for vaccine development to control infectious diseases. Molecular therapy 27(4) 757-772 2019
(7)Kurita J et al. Few excess mortality in Japan in August and October, 2020 since January, 2020. medRxiv doi:https://10.1101/2020.07.09.20143164
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