【気になるこの症状】
春から夏に流行する“風疹”が、今年は最悪のペース。患者数はすでに昨年の371人を大幅に上回る1112人(今月12日時点)。30-50代前半の男性の5人に1人は免疫(抗体)を持たない。出産・育児世代は予防接種を受けておこう。
■妊婦の感染が怖い
風疹の流行が問題になるのは、免疫を十分に持たない妊娠初期の妊婦に感染させると、生まれてくる赤ちゃんに障害(先天性風疹症候群)が出る可能性があるからだ。
国立感染症研究所・感染症情報センターの多屋馨子(けいこ)室長は「20-40代の女性の95%は免疫を持つが、十分に持っているのは85-90%。妊婦に風疹の症状が出た場合、胎児に障害が出る頻度は妊娠1カ月で50%以上、2カ月で35%、3カ月で18%、4カ月で8%程度といわれています」と警告する。
代表的な障害は、心疾患、難聴、白内障だ。
■対策は予防接種のみ
風疹ウイルスは、感染者の咳や会話などによって飛ばされる微小の飛沫(ツバ)に含まれる。半径2メートル内でうつるので、家庭や職場などを中心に感染が拡大していく。
「感染すると、症状が現れる少し前から他人にうつしてしまう。それに成人では15%程度が感染しても症状が出ない不顕性感染。感染を防ぐには、事前にワクチンを接種するしか効果的な予防法がないのです」
ただし、一度感染して十分な抗体ができればかからない。免疫を持たないのは、過去にワクチン接種を受けたことがなく、一度も風疹にかかったことのない人だ。
多屋室長は「自分は子供の頃にかかったという人でも、はしかや別の病気と勘違いしている人が非常に多い」と思い込みに注意を呼びかける。
■親子で夏休みに接種
それにしても、なぜ中年層の男性と女性では風疹の免疫をもつ人の割合に差があるのか。
「公費のワクチン接種がはじまったのは1977年で、当初は学校での集団接種で女子中学生だけが対象でした。89-93年は一部の幼児が麻疹・風疹・おたふくかぜ混合ワクチンを受けていますが、男子中学生と男女幼児が対象となったのは95年以降なのです」
現在の法律に基づく定期接種は、1歳と小学校入学前の2回接種。2008年度から5年間は、中学1年と高校3年に相当する年齢で2回目の接種の措置がとられており、今年度が最後の年になる。
大人のワクチン接種は自費で1回1万円ほど。抗体の有無を知りたい場合も血液検査(数千円)で調べられるという。
多屋室長は「現在は麻疹と風疹の混合ワクチンの2回接種が原則です。2回接種をしていない中1、高3年齢の子供をお持ちのお父さんは夏休み期間中に是非一緒に受けに行ってもらいたい」と話している。
■風疹の典型的な3大症状
★37-38℃台の発熱
★全身に薄紅い発疹が出現する
★耳の後ろや首の周りのリンパ節が腫れる
※特効薬はなく、症状に対する治療のみで自然治癒を待つ