27日に東京競馬場で行われたジャパンC・G1でキタサンブラック(牡4歳)が優勝。オーナーの歌手・北島三郎(80、名義は大野商事)は歓喜の涙を流した。
レースの優勝賞金は国内最高の3億円。同馬のデビューからの総獲得賞金は約9億5000万円に上る。オーナーに渡るのはその80%で、北島はジャパンCで2億4000万円、総額約7億6000万円を手にすることに。
一見すると「うらやましい」の一言だが、それほど甘くないのが馬主という“商売”だ。
北島が馬主資格を取得したのは今から半世紀以上前の1963年。以来、約170頭を所有したが、最高峰のレースであるG1に出走したのは、キタサンブラックを含めわずかに6頭。うち勝利したのはこの馬だけ。G1はおろか、1勝もできずに現役を退いていった馬も存在する。
JRA(日本中央競馬会)の競走馬は通常、生産牧場から育成牧場を経て美浦(茨城)か栗東(滋賀)にあるトレーニングセンター(トレセン)に入厩し、放牧を繰り返しながら引退まで過ごす。この間は毎月数十万円の管理費がかかるが、これを負担するのは馬主だ。順調に成長すればいいが、けがや事故でデビューできないことも。また、デビューしたとしても成績が伴わなければ地方競馬に転出、引退して乗馬になるなど、続々と脱落していく。レース中のけがで安楽死処分が取られることも少なくない。
北島の場合もキタサンブラック1頭だけで考えれば大もうけだが、通算での見れば収支は疑問。初G1制覇となった菊花賞後に「夢を売るお仕事をさせてもらっている自分がこの年齢になって、キタサンブラックから夢をもらった」という言葉通り、損得ではないのが馬主なのだ。
ただ、キタサンブラックの場合にはG1を勝ったことで種牡馬の道が開けている。その際には数十億円の値段が付くこともあるだけに、夢が広がる。
◆馬主になるには
多額の費用を必要とするため、日本中央競馬会(JRA)では厳しい条件を定めている。現在、個人では過去2年で年収が1700万円以上あり、かつ預貯金や不動産、有価証券などの資産が7500万円以上あることとしている。また、09年秋からは国外居住者の登録も可能になった。