2019年のブログです
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西丸四方さんの『彷徨記-狂気を担って』(1991・批評社)を再読しました。
西丸さんはドイツの伝統的な精神医学であるシュナイダーやブロイアー、ヤスパースなどの本を翻訳されたかたで、松沢病院や信州大学病院などで精神科臨床にあたられたかた。
その見識と実践はすごいです。
偉い先生なのですが、飾りが全然なくて、いつも本音で語られている印象で、そのざっくばらんさは魅力です。
幻聴についての考察など、オリジナルな発想で、とても興味深い検討がなされていて、じーじももう少し考えてみたいと思うところが多々ありました。
また、精神科臨床の実践がとてもていねいで思わずうなってしまいます。
トイレのたれ流しで、トイレットペーパーを集めてしまう患者さんについて、細やかにその日常行動を観察し、それまで誰もが気づかなかった不潔恐怖に気づき、ていねいな対策を講じた結果、患者さんの症状はなくなります。
たんに精神病の症状だと皆があきらめていたことがらを解明するその姿に感動します。
このような細やかで、ていねいな診療がいくつか紹介され、本当に感心させられます。
他にも、東京裁判で東条英機の頭を叩いた大川周明さんの治療体験や精神病になった医学部の学生さんの治療経験など、西丸さんならではの経験も披露されます。
いずれも真摯でていねいな精神科治療の実践例であり、経験の少ないじーじなどには宝の山のようです。
こういう先達がおられることを誇りにして、少しでも近づけるよう努力していきたいと思いました。 (2019.6 記)