2019年のブログです
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帚木蓬生さんの『風花病棟』(2011・新潮文庫)を読みました。
2011年の作品ですが、旭川の本屋さんで本を眺めている時に、偶然、目にしました(帚木さん、遅くなってごめんなさい)。
いい本です。
10篇の医師と患者さんを描いた短編集ですが、いずれもなかなかの力作で、読み応えがあります。
帚木さんは精神科医で作家さん。
『三たびの海峡』『閉鎖病棟』などなど、いい小説を書かれています。
本書に登場するお医者さんは精神科医だけでなく、さまざまな分野の専門医やさらには研修医などですが、いずれもが真の医療とは何かを問いかけます。
例えば、問診だけで医学部の学生をうならせるほどの診察をする市井の老医師、アルコール依存症の患者さんと真摯につきあう若手医師、看護師に、現場から離れるな、と教わる研修生、その他、もろもろ。
また、登場する患者さんもなかなか個性的で魅力的です。
そして、帚木さんらしく、戦争に関係のある小説も登場します。
いずれも、ヒューマニズムというと簡単ですが、生きる意味や医療の意味を問いかけて、なかなか重いです。
軽いことやお笑いが横行している世の中ですが、たまには重くて、深いテーマの小説もいいものです。
重さを忘れるためのユーモアは大切ですが、笑いっぱなしでは仕方ありません。
今日もいい小説が読めて幸せです。 (2019.8 記)