2023年8月のブログです
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旭川生まれの井上靖さんの『北の海』(1975・新潮文庫)を旭川の古本屋さんで見つける。
かなり厚い本だが、110円。
1975年(昭和55年)の文庫本、じーじが大学3年生の時の本だ。
この青春もの(?)、なぜかじーじはきちんと読まずにきてしまった。
暇な夏休みでもないと(いつも暇だが…)、厚い本はなかなか読まないかもしれないと思い、清水の舞台から飛び降りる覚悟で読む。
これが面白い。
時は大正15年。
青春小説だが、相当に男の世界。
なにしろ、世の中にあるのは柔道のみ(!)、勉強も女子も関係のないという世界。
これは相当に(?)、気持ちのいい世界だ。
今の芸能界など、吹っ飛んでしまう。
こういう世界があったんだなあ、と思う。
しかし、この時代にも戦争の予兆はある。
なにせ、主人公の父親は軍医で、台湾に赴任中だ。
父親への反感と時代への反感、男子の青春もなかなか大変だ。
そういう主人公が友達や先輩に囲まれ、少しずつ成長していく。
おそろしく真面目だが、不器用なユーモアがきいていて、読んでいて楽しい。
文章も良質で、いい小説だと思う。
あらすじはあえて書かないが、気持ちのいい小説だ。
夏休みにいい本に出会えたと思う。 (2023.8 記)