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藤原伊織『テロリストのパラソル』1998・講談社文庫ー元東大全共闘のくたびれたアル中中年が小さな女の子のために走りまくる

2024年09月28日 | 小説を読む

 2023年7月のブログです

     *

 藤原伊織さんの『テロリストのパラソル』(1998・講談社文庫)を久しぶりに読む。

 1995年江戸川乱歩賞受賞作で、1996年の直木賞受賞作。

 東大全共闘で学生運動を闘った主人公が、今はアル中の中年バーテンダー。

 真昼の公園でウィスキーを楽しんでいたところ、偶然、爆弾事件に巻き込まれ、その直前に知り合った小さな女の子のために(?)、真相解明に走りまくる。

 いろんな登場人物が出てくるが、じーじには、主人公がただ小さな女の子のために走るまくる小説と読める。

 この小説については、特に、あらすじを書くのは「犯罪行為」(?)だと思うので、いつも以上に気をつけたい。

 描かれるのは、学生運動と個人、学生運動と恋愛、学生運動と暴力、暴力と警察・国家権力、やくざと警察、組織と個人、お金の魔力、人間の弱さ、などなど。

 それらが、主人公の飾らない生き方とともに、対比的にあぶりだされる。

 決してスマートではなく失敗だらけの中年男子。

 ただ、一本筋が通っているというか、頑固なところが魅力的だ。

 じーじの大好きな男性像。

 いい小説だ。

 途中から仲間になる、警察をくびになったやくざ屋さんの中年男子とともに、真相解明に走りまくる姿はまったくのハードボイルド小説だ。

 ハラハラ、ドキドキの連続で、小心者のじーじには少し心臓に悪い。

 しかし、とても良質で、後味のよい小説を楽しませてもらった。      (2023.7 記)

 


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