2023年7月のブログです
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藤原伊織さんの『テロリストのパラソル』(1998・講談社文庫)を久しぶりに読む。
1995年江戸川乱歩賞受賞作で、1996年の直木賞受賞作。
東大全共闘で学生運動を闘った主人公が、今はアル中の中年バーテンダー。
真昼の公園でウィスキーを楽しんでいたところ、偶然、爆弾事件に巻き込まれ、その直前に知り合った小さな女の子のために(?)、真相解明に走りまくる。
いろんな登場人物が出てくるが、じーじには、主人公がただ小さな女の子のために走るまくる小説と読める。
この小説については、特に、あらすじを書くのは「犯罪行為」(?)だと思うので、いつも以上に気をつけたい。
描かれるのは、学生運動と個人、学生運動と恋愛、学生運動と暴力、暴力と警察・国家権力、やくざと警察、組織と個人、お金の魔力、人間の弱さ、などなど。
それらが、主人公の飾らない生き方とともに、対比的にあぶりだされる。
決してスマートではなく失敗だらけの中年男子。
ただ、一本筋が通っているというか、頑固なところが魅力的だ。
じーじの大好きな男性像。
いい小説だ。
途中から仲間になる、警察をくびになったやくざ屋さんの中年男子とともに、真相解明に走りまくる姿はまったくのハードボイルド小説だ。
ハラハラ、ドキドキの連続で、小心者のじーじには少し心臓に悪い。
しかし、とても良質で、後味のよい小説を楽しませてもらった。 (2023.7 記)