おはようございます。
今日は空がどんよりと暗い湘南地方です。
さて、標記の件=サントリーvsアサヒビールのノンアルコールビールの件、
ようやく読むことができました。
事案をざっくり説明すると以下の通り。
① サントリーが発明の名称「pHを調整した低エキス分のビールテイスト飲料」とする特許権に基づき、
アサヒの製品(=ドライゼロ)を特許権侵害として差止め、廃棄を請求。
★サントリーの特許の請求項1(訂正後)は
「エキス分の総量が0.5重量%以上2.0重量%以下であるノンアルコールのビールテイスト飲料であって、
pHが3.0以上4.5以下であり、
糖質の含量が0.5g/100ml以下である、
前記飲料」
というもの。
② アサヒは、ドライゼロが上記特許発明の技術的範囲に属することは争っておらず、
本件特許には無効理由があると主張。無効理由として8つの点について挙げられているが、
裁判所の判断が示されたのは、本件特許の優先日前に販売されていた両社の製品である
「オールフリー」及び「ダブルゼロ」に基づく進歩性欠如。
※このように優先日前に販売されていたことを「公然実施」といい、
これらに係る発明=「公然実施発明」という言葉を使います。
③ 裁判所は、本件特許はそれぞれの公然実施発明から容易に想到できた、として
本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものだから本件特許権は行使することができない
と結論付けた。
※なんかもって回った言いまわしに感じるかと思います。
特許の有効/無効を判断するのは本来的に特許庁における無効審判によります。
しかし「侵害か否か」の争いと「有効か無効か」の争いが、場を違えて行われてしまうことは
紛争の解決に著しく障害となることから、裁判所において
「この特許は無効にされるべきものだからその権利行使は認められない」
という判断が可能になっています(特許法104条の3第1項)。
ちなみに、現時点で本件特許に対する無効審判は請求されていないようです。
原告の主張のポイントはいくつかあるのですが、
「本件発明はエキス分の総量、pH及び糖質の含量の各数値範囲と飲み応え感及び適度な酸味付与という
効果の関連性を見いだしたことを技術思想とするものであり、公然実施発明1(=オールフリー)は
このような技術思想を開示するものではないから、オールフリーの多数の分析項目の中から
エキス分の総量、pH及び糖質の含量のみを抜き出して公然実施発明1を特定することは許されず、
エキス分の総量、pH及び糖質の含量をひとまとまりの構成として相違点を認定すべき」
という主張が敗着のように見受けられます。結局この主張は斥けられています。
確かに裁判所が指摘する通り、
明細書全文をみても、「エキス分の総量」「pH」「糖質の含量」各要素の相互の相関関係については
規定されていません。
規定すれば権利範囲としては狭く解釈される懸念が生まれるところですし
(それでも記載していないと減縮のしようもないですが)
そもそも出願時にその知見が得られていたかも疑問です。
サントリーは控訴するとのことですから、
今後更に攻防が繰り広げられるものと思われます。
引き続き、動向を注視したいと思います。
今日は空がどんよりと暗い湘南地方です。
さて、標記の件=サントリーvsアサヒビールのノンアルコールビールの件、
ようやく読むことができました。
事案をざっくり説明すると以下の通り。
① サントリーが発明の名称「pHを調整した低エキス分のビールテイスト飲料」とする特許権に基づき、
アサヒの製品(=ドライゼロ)を特許権侵害として差止め、廃棄を請求。
★サントリーの特許の請求項1(訂正後)は
「エキス分の総量が0.5重量%以上2.0重量%以下であるノンアルコールのビールテイスト飲料であって、
pHが3.0以上4.5以下であり、
糖質の含量が0.5g/100ml以下である、
前記飲料」
というもの。
② アサヒは、ドライゼロが上記特許発明の技術的範囲に属することは争っておらず、
本件特許には無効理由があると主張。無効理由として8つの点について挙げられているが、
裁判所の判断が示されたのは、本件特許の優先日前に販売されていた両社の製品である
「オールフリー」及び「ダブルゼロ」に基づく進歩性欠如。
※このように優先日前に販売されていたことを「公然実施」といい、
これらに係る発明=「公然実施発明」という言葉を使います。
③ 裁判所は、本件特許はそれぞれの公然実施発明から容易に想到できた、として
本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものだから本件特許権は行使することができない
と結論付けた。
※なんかもって回った言いまわしに感じるかと思います。
特許の有効/無効を判断するのは本来的に特許庁における無効審判によります。
しかし「侵害か否か」の争いと「有効か無効か」の争いが、場を違えて行われてしまうことは
紛争の解決に著しく障害となることから、裁判所において
「この特許は無効にされるべきものだからその権利行使は認められない」
という判断が可能になっています(特許法104条の3第1項)。
ちなみに、現時点で本件特許に対する無効審判は請求されていないようです。
原告の主張のポイントはいくつかあるのですが、
「本件発明はエキス分の総量、pH及び糖質の含量の各数値範囲と飲み応え感及び適度な酸味付与という
効果の関連性を見いだしたことを技術思想とするものであり、公然実施発明1(=オールフリー)は
このような技術思想を開示するものではないから、オールフリーの多数の分析項目の中から
エキス分の総量、pH及び糖質の含量のみを抜き出して公然実施発明1を特定することは許されず、
エキス分の総量、pH及び糖質の含量をひとまとまりの構成として相違点を認定すべき」
という主張が敗着のように見受けられます。結局この主張は斥けられています。
確かに裁判所が指摘する通り、
明細書全文をみても、「エキス分の総量」「pH」「糖質の含量」各要素の相互の相関関係については
規定されていません。
規定すれば権利範囲としては狭く解釈される懸念が生まれるところですし
(それでも記載していないと減縮のしようもないですが)
そもそも出願時にその知見が得られていたかも疑問です。
サントリーは控訴するとのことですから、
今後更に攻防が繰り広げられるものと思われます。
引き続き、動向を注視したいと思います。