おはようございます!
台風接近中、すでに暴風雨、な湘南地方です。
皆様、気を付けて一日をお過ごしください。
さて、金曜日の続き。
関連する条文を再掲。
商標法の条文上、「芸名」の語は2つの条項で出てきます。
(1)一つ目は、登録要件を定める条文です。
第4条 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
八 他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)
➡著名な芸名は登録しないよ、但し本人がOKと言っていれば(手続上は「承諾書」を提出すれば)よいけどね。ということです。
(2)もう一つは、商標権の効力の制限を定める条文です。
第26条 商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。
一 自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標
2 前項第一号の規定は、商標権の設定の登録があつた後、不正競争の目的で、自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を用いた場合は、適用しない。
➡自分の有名な芸名は、自分が商標権者でないとしても使用することができる、ということです。
さて、モデルケース。
[ケース2]
・タレントBは、芸名「XYZ」で芸能活動をしていた
・旧所属事務所は、芸名「XYZ」を第41類で商標登録していた
・その後Bは独立、同じ芸名「XYZ」で芸能活動を継続した
→旧所属事務所が商標登録できた経緯にもよりますが、仮に出願-登録時に芸名が著名になっていなくとも
その後の芸能活動継続時に「XYZ」が著名になっていれば第26条第1項1号が適用可能になります。
したがって、「XYZ」が著名であれば、[ケース1]と同様、他の特約がない限りは使用可能、ということになります。
しかし、「XYZ」が著名でない場合、旧事務所が商標権を保有し、かつ26条の適用はないことになりますから、
タレントBが同じ芸名を継続して使用したら侵害、ということになります。
[ケース3]
・芸能グループ「PQR」は、芸能事務所Cに所属し活動をしていた。
・芸能事務所Cは、グループ名「PQR」を第41類で商標登録していた
・その後「PQR」は解散、メンバーは事務所を移籍し、「元PQRの○○」として活動をしている。
グループ名が各条項にいう「芸名」にあたるかが問題となります。
逐条解説によれば4条1項8号は「人格権保護」の規定とされています。
他人の氏名を勝手に登録できるとすることは経済的不利益を超えた人格権の侵害が生じる、という意味合いです。
26条が不登録事由の補完的役割を果たす点に鑑みれば同条も同じく人格権保護の色合いを帯びていると捉えるのが妥当でしょう。
なお芸名が「著名な」ものに限られているのは、“ある程度恣意的なものだからすべてを保護するのは行き過ぎなので”とされています。
つまり、芸名の保護も経済的利益の大小の問題ではなく、人格権保護の観点から規定されているものです。
(だからこそ、故人には適用がありません。この点「アナアスラン事件」(H17(行ケ)10336号)参照)
ところで、「グループ」は「人」ではないのですから「人格権は観念できない」、という解釈で良いのでしょうか?
この点、「国際自由学園」事件(H16(行ヒ)343)において8号の趣旨について
「人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像,氏名,名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。すなわち,人は,自らの承諾なしにその氏名,名称等を商標に使われることがない利益を保護されているのである。略称についても,一般に氏名,名称と同様に本人を指し示すものとして受け入れられている場合には,本人の氏名,名称と同様に保護に値すると考えられる。」
との解釈が示されています。
「法人等」の「等」がクセモノですね。
通常「法人等」という場合、「権利能力無き社団」や「民法上の任意組合」を包含するものと考えますが、
これに「アイドルグループ」が含まれるのかというと、そうではないように思います。
しかし、審査実務上はどうなってるんだろう…?と思って調べてみると、
「SMAP」(第3047285号)も「ももいろクローバーZ」(第5593522号)も11-13号以外の4条拒絶が掛かって物件提出らしきことをやっているので、
8号の拒絶を受けているように見受けられます(ファイル閲覧すればはっきりするのですが…)。
一方で「AKB48」(第4960294号)や「乃木坂46」(第5487997号)ではこの条文の拒絶はかかっていません。
出願時に添付で出しているのかな??
(仮に「承諾書」提出しているとなると、メンバー全員の署名押印を得ているのかな?)
結局、「グループ名」に8号適用があるのかというと、どうもはっきりしません。
※ご経験ある先生、ご教授頂けると助かります。
ただ、仮に8号適用がある場合、その後事務所を移籍した元メンバーが「元PQR」と名乗ること、及び「普通に」表示すること自体は問題がない、ということになります。
逆に8号適用がない場合、人格権の保護の余地は無いことになりますから、元所属事務所が商標登録しているのであれば、元メンバーが「PQR」を商標的に使用すれば侵害、ということになりそうです。
台風接近中、すでに暴風雨、な湘南地方です。
皆様、気を付けて一日をお過ごしください。
さて、金曜日の続き。
関連する条文を再掲。
商標法の条文上、「芸名」の語は2つの条項で出てきます。
(1)一つ目は、登録要件を定める条文です。
第4条 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
八 他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)
➡著名な芸名は登録しないよ、但し本人がOKと言っていれば(手続上は「承諾書」を提出すれば)よいけどね。ということです。
(2)もう一つは、商標権の効力の制限を定める条文です。
第26条 商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。
一 自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標
2 前項第一号の規定は、商標権の設定の登録があつた後、不正競争の目的で、自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を用いた場合は、適用しない。
➡自分の有名な芸名は、自分が商標権者でないとしても使用することができる、ということです。
さて、モデルケース。
[ケース2]
・タレントBは、芸名「XYZ」で芸能活動をしていた
・旧所属事務所は、芸名「XYZ」を第41類で商標登録していた
・その後Bは独立、同じ芸名「XYZ」で芸能活動を継続した
→旧所属事務所が商標登録できた経緯にもよりますが、仮に出願-登録時に芸名が著名になっていなくとも
その後の芸能活動継続時に「XYZ」が著名になっていれば第26条第1項1号が適用可能になります。
したがって、「XYZ」が著名であれば、[ケース1]と同様、他の特約がない限りは使用可能、ということになります。
しかし、「XYZ」が著名でない場合、旧事務所が商標権を保有し、かつ26条の適用はないことになりますから、
タレントBが同じ芸名を継続して使用したら侵害、ということになります。
[ケース3]
・芸能グループ「PQR」は、芸能事務所Cに所属し活動をしていた。
・芸能事務所Cは、グループ名「PQR」を第41類で商標登録していた
・その後「PQR」は解散、メンバーは事務所を移籍し、「元PQRの○○」として活動をしている。
グループ名が各条項にいう「芸名」にあたるかが問題となります。
逐条解説によれば4条1項8号は「人格権保護」の規定とされています。
他人の氏名を勝手に登録できるとすることは経済的不利益を超えた人格権の侵害が生じる、という意味合いです。
26条が不登録事由の補完的役割を果たす点に鑑みれば同条も同じく人格権保護の色合いを帯びていると捉えるのが妥当でしょう。
なお芸名が「著名な」ものに限られているのは、“ある程度恣意的なものだからすべてを保護するのは行き過ぎなので”とされています。
つまり、芸名の保護も経済的利益の大小の問題ではなく、人格権保護の観点から規定されているものです。
(だからこそ、故人には適用がありません。この点「アナアスラン事件」(H17(行ケ)10336号)参照)
ところで、「グループ」は「人」ではないのですから「人格権は観念できない」、という解釈で良いのでしょうか?
この点、「国際自由学園」事件(H16(行ヒ)343)において8号の趣旨について
「人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像,氏名,名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。すなわち,人は,自らの承諾なしにその氏名,名称等を商標に使われることがない利益を保護されているのである。略称についても,一般に氏名,名称と同様に本人を指し示すものとして受け入れられている場合には,本人の氏名,名称と同様に保護に値すると考えられる。」
との解釈が示されています。
「法人等」の「等」がクセモノですね。
通常「法人等」という場合、「権利能力無き社団」や「民法上の任意組合」を包含するものと考えますが、
これに「アイドルグループ」が含まれるのかというと、そうではないように思います。
しかし、審査実務上はどうなってるんだろう…?と思って調べてみると、
「SMAP」(第3047285号)も「ももいろクローバーZ」(第5593522号)も11-13号以外の4条拒絶が掛かって物件提出らしきことをやっているので、
8号の拒絶を受けているように見受けられます(ファイル閲覧すればはっきりするのですが…)。
一方で「AKB48」(第4960294号)や「乃木坂46」(第5487997号)ではこの条文の拒絶はかかっていません。
出願時に添付で出しているのかな??
(仮に「承諾書」提出しているとなると、メンバー全員の署名押印を得ているのかな?)
結局、「グループ名」に8号適用があるのかというと、どうもはっきりしません。
※ご経験ある先生、ご教授頂けると助かります。
ただ、仮に8号適用がある場合、その後事務所を移籍した元メンバーが「元PQR」と名乗ること、及び「普通に」表示すること自体は問題がない、ということになります。
逆に8号適用がない場合、人格権の保護の余地は無いことになりますから、元所属事務所が商標登録しているのであれば、元メンバーが「PQR」を商標的に使用すれば侵害、ということになりそうです。