弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【意匠/商標】産業競争力とデザイン

2017年07月06日 08時29分46秒 | 実務関係(特・実・意)
おはようございます!
気温は上昇中も風があるので昨日よりはマシな感じの湘南地方です。

さて、今日はこんな記事

(日経新聞より引用)
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ブランドデザイン保護 経産省、意匠法改正を検討

経済産業省はデザインで産業競争力を高める総合対策を打ち出す。デザイン振興を進める国家戦略を制定するほか、ブランドの象徴となるデザインを一括で保護するような意匠法の改正などを検討する。米アップルや英ダイソンなど、デザインで製品の魅力を高める企業が日本には少ないとみて、日本企業のブランド向上を後押しする。

5日に「産業競争力とデザインを考える研究会」の初会合を開く。2018年3月までに具体策を盛り込んだ報告書をまとめ、戦略制定や19年の法改正を視野に入れる。

(中略)

具体策として製品デザインに込められたコンセプトまで保護し、企業ブランドを守ることを検討する。例えばiPhone(アイフォーン)シリーズのように企業の同一シリーズの製品デザインを一括して保護対象にすることを想定する。現行の意匠法では製品一つずつの出願が原則必要となる。

意匠法改正とは別に、店舗のデザインも保護対象にできないか議論する。例えばアップルやスターバックスの店舗のつくりは特徴的でブランド力の一端を担う。米国では一部の店構えなども知的財産として保護される。

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(引用終わり)

以下所感。

1.「デザインで製品の魅力を高める企業が日本には少ない」:本当だろうか?
 確かに、“良いものを作れば売れる”信奉が相対的に高い気はしている。
 しかし、デザインによるコンセプト訴求は、相当取り組まれていると思うけどなぁ。
 (「伊右衛門」とか「MAZDA」とか、あと多くの大手小売業など)

 ただまあ、コロコロ流転してしまってうまく伝わらないケースが多いだけで。
 例に出されているアップルもダイソンも、自社のドメインはぶれてないもの。
 そこの差なのではないかな。

2.制度面での手当てが企業のブランドデザイン力の向上に寄与するのか?
 上記「産業競争力とデザインを考える研究会」についてのMETIのニュースリリースがこちら
 そのなかで
 “我が国企業の多くは、その経営層も含め、デザインに対する自信と意識がいまだ低いとの報告もあり”とある。
 この「報告」のソースをご存知な方がいたらお教えいただきたいが、
 どちらかというと「経営層」の意識が現場よりも低いケースの方が多いのでは?と想像する。

3.「意匠法改正とは別に、店舗のデザインも保護対象にできないか議論する。」:ここ、結構大きい。
 いわゆる“トレードドレス”と呼ばれるもの。
 アメリカやヨーロッパでは商標制度の枠組みの中で保護されている。
 日本でもかつて「ユニクロ事件」や「まいどおおきに食堂事件」、最近だと「コメダ珈琲事件」など、
 店舗の内外装の特徴が類似することに基づく係争が生じている。
 これらはいずれも不正競争防止法に基づくものであり、要は事がおきてからの立証負担が原告側に大きかった。
 もし店舗デザインについても登録制度が導入されるならば、いざ事案が発生した時の初動は速やかになる。
 トレードドレスについては、2年前の「新しいタイプの商標」導入の際にも議論されていたところ。
 客体特定の要件など課題はあるとは思うものの、前向きな検討を期待したいところ。



なんか、久しぶりにちょっと真面目に書いてみた。
 
コメント
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